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【猫がなりやすい病気】腎臓病編…シニアになったら定期検診を

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どんな病気?

腎臓は血液を濾過して老廃物を尿として排泄する大切な働きをする臓器だ。その腎臓のなかで血液を濾過して尿を作るネフロンという部分が徐々に壊れていき、腎臓の機能が低下するのが慢性腎臓病である。

高齢の猫でよくみられ、10歳以上では約30~40% が罹患、5歳以上の猫の死因第1位と報告されている。急激にネフロンが壊されるのは急性腎臓病というが、これは腎毒性のある物質を誤食したり尿道や尿管に結石が詰まったりすることで尿が出なくなり急性に腎臓に負担がかかることで起こる。猫では急性もあるが高齢の猫では特に慢性の方が起こりやすい。

症状としては慢性腎臓病の4つのステージのどの段階かによる。ステージ1は無症状で特殊な血液検査でないと検出できない。ステージ2に入ると腎機能の低下により血液中の老廃物を尿として出せなくなるのだが、それでも老廃物を出そうと体が働くことで薄い水のような尿がたくさん出たり、その分だけ水をたくさん飲んだりする。それでも体は追いつかなくなるとステージ3に入り、脱水したり腎臓からでる造血ホルモンであるエリスロポエチンが減少することで貧血になったり、元気食欲が低下したりする。末期症状になるとステージ4になり腎臓の機能は10%以下しか残っていない状態になる。ここまできてしまうとかなり危ない状態になる。

かかってしまったら…

腎臓は一度障害を受けると元には戻らない不可逆的な臓器。なので、できるだけ早期に発見して治療を始めることが良好にコントロールするポイントだ。

腎機能の低下が見られたら飲水量を増やすことが大切になる。しかし猫は元々砂漠に生息する生き物なので水をあまり飲んでくれない。飲水量を無理なく増やすにはウェットフードを与えるのがよい。ウェットフードは80%ほどが水分でできているのでご飯を食べることで給水ができるというメリットがある。

また、フードの種類を腎臓病用のものに変更する。これは低タンパクになっているので腎臓への負担を最小限にすることができるのだ。そう言った食事療法から始めていき、これだけでコントロールができなくなってきたら水分を補ってあげる治療を加える。口からの飲水だけでは不十分なので皮下点滴による補液を行う。腎数値にもよるが2日に1回から1日2回など脱水の状況に応じて量を決めていく。これを通院で行うのは飼い主の費用や時間の面で大きな負担になるので、病院でやり方を指導してもらって自宅で飼い主自身にやってもらうことが多い。はじめは自分の猫に針を刺すことに抵抗がある方が多いが徐々に慣れてきて上手にできる様になる人がほとんどである。

その他の治療として腎臓病による蛋白尿を防止することで腎臓病の悪化を抑えるARB製剤という薬の服用や同じ蛋白尿の防止に効果があるが、血管を拡張させ、全身の血圧および糸球体内圧を低下させることで残存ネフロンの負担を軽減させ、蛋白尿を防止し、腎臓保護作用を示すACE阻害薬もある。また別の作用機序で、尿細管間質の血流減少、線維化、炎症を抑えることで腎機能の低下抑制や腎臓病の進行抑制が期待できるプロスタサイクリン製剤の服用がある。以上の治療は全て、あくまで対症療法だが、早期の治療で進行を遅らせていく治療法しかないのが現状だ。

予防法は?

予防するのはなかなか難しい病気であるので、早期発見と早期治療が1番の予防に繋がる。通常の血液検査で腎数値の異常が出てくるのは腎機能の75%以上が失われた時。つまり、通常の検査項目では腎臓病の早期発見はできない。先に異常が出てくるのは尿で、前述した様に薄い尿がたくさん出てくるため尿の比重を測定すると低下が見られる。ただ尿比重の低下は一時的に飲水量が増加しても見られるので一回の異常値だけでは腎機能の低下とは判断し難い。

そこで1番有用になってくるのがSDMAという検査項目である。血液検査で測定することができ、この数値が上昇していると初期の腎機能低下があると判断して良い。シニアになってきたら定期検診でこの検査を受けてみることをお勧めする。

《M.M》

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