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【犬がなりやすい病気】角膜潰瘍編…対処が遅れると角膜に穴が開く可能性も

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どんな病気?

角膜とは、眼球内への光の通り道の最も外側にある、血管の走行していない透明な膜。人で言うとコンタクトが乗っている膜にあたる。角膜には眼内の構造を支持して保護する働きや、透明性を維持して外から入ってきた光を屈折させる働きがある。この角膜の最表層にあたる角膜上皮が欠失した状態が角膜潰瘍だ。

原因として逆さまつ毛、外傷、異物、化学物質、細菌やウイルスの感染、乾性角結膜炎や顔面神経麻痺などに付随した角膜の乾燥、免疫異常などが挙げられる。欠損した部分の深さによって重症度が違ってくる病気で、対処が遅れて深部角膜潰瘍になるとデスメ膜というより深部の膜にまでに欠損が波及し、最悪の場合角膜穿孔(角膜に穴が開いてしまう)に至る恐ろしい病気であるので、早期に治療を開始することが重要である。

症状としては目ヤニ、眼痛、羞明、流涙、充血が見られる。角膜潰瘍罹患眼は痛みにより十分に眼を開けられないことが多い。そのような症状が見られたらすぐに動物病院を受診することをおすすめする。

診断は特殊な染色液で角膜を染めて角膜に欠損があるかを見る。角膜潰瘍があれば黄色っぽい色に染色され、デスメ膜までの深い傷になると染色されない。デスメ膜にまで達した潰瘍や角膜穿孔に至った場合は内科的に治療できないので外科療法が適用になる。

かかってしまったら…

角膜潰瘍は、重症度によって治療法が内科か外科かで大きく変わってくる疾患である。表層性角膜潰瘍と角膜の深部30%未満までの深部角膜潰瘍では点眼薬物療法で治療することができる。点眼を行う前に角膜潰瘍で多く存在する接着不良障害のある不良角膜上皮の有無を確認すべきである。この異常な上皮があるとなかなか治癒しないので、点眼麻酔後に接着不良を呈する角膜上皮を剥離する必要がある。この刺激によって正常な角膜上皮が剥がれるようなことはないのでご安心いただきたい。その後セフメノキシムやオフロキサシンといった広域の抗菌点眼液とヒアルロン酸を含む保湿点眼液を頻回に点眼する。場合によっては自分の血液成分から血清を分離して頻回に点眼する自家血清点眼法もある。

また、重度の場合は眼痛軽減や抗炎症作用、眼房水中の蛋白上昇抑制を期待してアトロピン点眼を追加したりもする。角膜潰瘍は細菌感染を伴っていたりすると悪化が早いので翌日に必ず再評価し、急激な悪化がないかは確認するべきである。それでも2、3日で劇的には良くならない場合は角膜切開を行うこともある。これは猫では角膜分離症を誘発するので禁忌であるが犬ではよく行われる。それでも改善が乏しい時は治療用ソフトコンタクトレンズの装着も検討される。重度でなければ、2、3日で改善が見られてくるはずだ。デスメ膜留や角膜穿孔に至った場合は出来るだけ早く外科手術をする必要があるが、専門の病院でないと行えない手術なのでそれまでの応急処置としてヒアルロン酸点眼を1、2時間に一回の高頻度で点眼を行う。

予防法は?

角膜に傷が付く恐れのある毛やまつ毛は、定期的にトリミングに行ったりしてカットし、抜くことで、気付かないうちにできる角膜潰瘍の対策になる。また、シャンプー時にシャンプー液が目に入ってしまって角膜潰瘍を引き起こすこともあるのでシャンプー液が目に入らないように気を付け、できれば自宅でのシャンプーではなくトリミングサロンにお願いするのが確実だろう。

ウイルスや細菌感染は体の免疫力が低下したときに起こりやすいので普段からストレスを溜めないような生活をするのがベストである。また、角膜潰瘍になってしまった際のエリザベスカラーの着用も大切だ。どうしても眼を気にしてしまって自分の手で掻いたり、床に擦り付ける犬が多いのでエリザベスカラーがないとせっかく治りかけた傷がさらに深くなったり再発することが多い。可哀想に思うかもしれないが、エリザベスカラーも治療の一つと考えて常時つけてあげてほしい。

《M.M》

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