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【アメリカの動物愛護事情】ライオンやトラなど、「ビッグキャット」の虐待防止法の成立を目指す

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アメリカでは現在、ライオンやトラなどネコ科の大型動物をペットとして飼育することなどを禁止する「ビッグ・キャット・パブリック・セーフティ法(Big Cat Public Safety Act)」の成立に向けて、動物愛護団体やセレブリティなどが積極的な活動を行っている。

ペットとしての飼育と動物園等での接触を禁じる法案

直訳すると「大型ネコ科動物に関する公共安全法」を意味するこの法律(現在は「法案」の段階)は、ライオン、トラ、ヒョウ、ユキヒョウ、ジャガー、ピューマおよびこれらの交雑種を個人がペットとして飼育することを禁止する。また、動物園や保護区など飼育許可を受けた施設でも、これらの動物が客と直接触れ合うことを禁じようとする内容である。

見学する場合も、15フィート(約4.5メートル)以上の距離を空けるか、フェンスを設けてこれらの動物と人間が接触しない対策が義務付けられる。法律が施行されると、違反者には2万ドル(約200万円)以下の罰金もしくは5年以下の懲役が科せられる。

生後間もない赤ちゃんの商業利用や安易な購入による飼育放棄

アメリカでは、生まれたばかりのライオンやトラを抱いて写真撮影できるというビジネスが行われている。

フロリダ州で保護施設を運営する団体「ビッグ・キャット・レスキュー」によれば、動物たちは生まれた直後に母親から引き離され、愛情だけでなく母乳からの免疫も得られない場合があるそうだ。充分な睡眠を与えられず、身体的な虐待も受けながら商業利用されているため、身体的・精神的な問題を抱えるケースが多いという。

生後数か月でこうしたビジネスの目的に適さないサイズに成長するため、劣悪な環境に終生閉じ込められたり、毛皮などのために処分されたりすることもあると言われている。また、未成熟の段階で繁殖させられる場合もあり、親子ともに健全な成長が阻まれることも少なくない。

そのほか、アメリカでは個人がペットとして購入したものの、成長後に飼いきれなくなる例もあるという。狭い檻の中に鎖でつながれ、充分な食事や健康管理が与えられないといった虐待を受けているライオンやトラなどがいるそうだ。こうした状況はまた、周辺住民の安全を脅かすことにもつながる。

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周辺住民に危険を及ぼす事故も発生

2011年10月にはオハイオ州で多くのエキゾチック動物を飼育していた飼い主が、ライオン、トラ、ヒョウ、熊、オオカミなどのケージを開放した後、自殺する事件が発生した。幸い周辺住民に被害はなかったが、48頭の大型動物が殺される痛ましい事件に発展した。「ナショナルジオグラフィック」が当時報じたところによると、そのうちの38頭がライオンやベンガルトラなど大型のネコ科動物だった。生きて捕獲されたのは、わずかにヒョウ3頭とハイイログマおよび2頭のサルのみだった。

ビッグ・キャット・レスキューによると、アメリカでは大型ネコ科動物に関連する事故が700件以上発生し、数百名の死傷者が出ている。多くの場合、動物はその場で殺されている。また、急行する警察官などは大型動物に対する専門知識は備えておらず、彼ら・彼女らにも大きな危険が伴う。

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法律の成立に向けてセレブリティも賛同

こうした状況を鑑み、動物の虐待防止と住民の安全を守るためにビッグ・キャット・パブリック・セーフティ法案が昨年の2月26日に下院に提出された。同法案は、定員が435のアメリカ議会・下院において、現在は230人の議員から賛同を得ている。今後、上院でも承認されれば連邦法として成立することになる。

この法案は、2017年にも審議が行われたが不成立に終わった。ビッグ・キャット・レスキューは、これを反対派のロビーイングによる結果だとしている。野生動物のペットとしての飼育やエンターテイメント利用の禁止に向けて、今回はミュージシャンやハリウッド俳優など多くの著名人も声をあげている。またWWF(世界自然保護基金)も署名活動を行っている。

WWFの署名サイトWWFの署名サイト

《石川徹》

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