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ヨーロッパの動物愛護事情 vol.1…オランダで鼻の低すぎる犬の繁殖を禁止する法律が施行

フレブルは世界各国で大人気
  • フレブルは世界各国で大人気
  • イングリッシュ・ブルドッグにもファンが多数
  • アメリカではボクサーも根付い人気
  • オランダのカローラ・スハウテン大臣
  • パグ(イメージ)

REANIMALでは、欧米で加熱する「フレンチ・ブルドッグ」(フレブル)の人気を以前紹介した(参考記事
)。イギリスやアメリカでは「ジャーマン・シェパード」やレトリーバー系(ラブラドールおよびゴールデン)などの中・大型犬が好まれる傾向にあるが、同時に短頭種(いわゆる「鼻ぺちゃ」犬種)の人気も高い。

欧米で人気の短頭犬種

原産国であるイギリスでは、「イングリッシュ・ブルドッグ」(ブルドッグ)が昨年・おととしと、ラブラドール、フレブル、「コッカー・スパニエル」に次ぐ4番人気を博している。また、小型犬の「パグ」も、2018年までは常にトップの10上位に入っていた。

イングリッシュ・ブルドッグにもファンが多数イングリッシュ・ブルドッグにもファンが多数

アメリカでもブルドッグは常に人気犬種の1つで、2017年にフレブルに抜かれて5位に落ちるまではラブラドール、シェパード、ゴールデンというアメリカ不動の3犬種に次ぐ登録頭数を誇っていた。また、日本ではほとんど見かけないが、中型犬の「ボクサー」もしばしばトップ10に顔を出す人気がある。

短頭種の健康を守るオランダの政策

こうした短頭犬種に関して、オランダ政府が画期的な判断を下した。動物福祉に反する繁殖を禁じた法律の厳密な運用を始めた。2014年に成立した「Animal Keepers Decree (直訳:動物飼育令)」の第3条4項にある条文だが、政府は運用についてこれまで慎重な姿勢で臨んでいだ。

充分に時間をかけて獣医学的な検証を行い、昨年、6項目の基準を発表した。「オランダ・ケンネル・クラブ」からの妥協案も吟味したうえで、農業・自然・食品安全省のカローラ・スハウテン(Carola Schouten)大臣が、5月18日に正式な基準を公表。マズルの短さ、目や鼻孔および呼吸の状態などに関して獣医師が確認し、基準を満たした犬だけが繁殖に使用されることが求められる。同国のケンネルクラブは現在、こうした基準を満たした交配によって生まれた犬だけに血統書を発行している。(オランダ国内での繁殖に限定され、輸入は含まれない。)

ブリーディングによる弊害

日本でも人気のパグやフレブル。これらの犬種は、その愛嬌ある姿からイギリスやアメリカだけでなくオランダを含むヨーロッパ諸国でも多くの愛犬家から愛されている。しかしながら、その愛らしい顔かたちは自然に生まれてきたものではなく、人間が意図的に作り出したものだ。

「純血種」の場合、特に「ショードッグ」ではそれぞれの犬種の特徴をことさら強調するブリーディングが行われることが多いと言われている。イギリスBBCが2008年と2012年に放送したドキュメンタリー「Pedigree Dogs Exposed(直訳:血統書付きの犬を暴く)」と同「Three Years On(その3年後)」では、極端なブリーディングによる深刻な遺伝的疾患が報じられて大きな議論が起こった。その後、状況は少しずつ改善してはいるが、ブリーダー業界は大きな変化を好まず、依然として課題は多いとのことである。

この番組は、オランダでも放送され当時大きな反響を巻き起こしたという。特に短頭犬種の場合は、鼻が極端に短く顔の横幅が広い形状によって、様々な疾患を発症する傾向がある。BBCの番組では、ドイツの動物病院で鼻孔と鼻・喉の外科手術を受けるパグの様子が細かく紹介された。

パグ(イメージ)パグ(イメージ)

オランダ政府は今回の法律施行にあたり、国内のユトレヒト大学に科学的・獣医学的検討を依頼した。報告書は、短頭犬種の呼吸器と目に関する2つの問題に警鐘を鳴らしている。次回は、その疾患の概要と、それをふまえて作成された6項目について紹介する。

(※当該法律の基準について誤りがありましたので記事を修正しました。訂正してお詫び申し上げます。)

《石川徹》

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