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【動物に会える映画 vol.4】海を感じる物語、おすすめ3選

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『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』
  • 『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』
  • 『ディープ・ブルー』
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夏本番! 海に出かけたくてうずうずしている方も多いのではないでしょうか? とはいえ、今年の夏は積極的に出かける気分になれないという方もいらっしゃるはず。そんな自粛ムードを引きずりがちな夏休みでも、安心して存分に海気分を味わえるのが映画です。そこで今回は、「海を感じる動物映画」を3本ご紹介します。

私にとって、海、動物、映画とくればすぐに思い浮かべるのが『グラン・ブルー』です。伝説的作品ですからREANIMAL読者のなかにもファンが多いことでしょう。そこでこちらは不動の定番中の定番に据えるとして、まだまだある海を舞台にした名作の中からお勧め作品を3本選んでみました。

『ディープ・ブルー』

『ディープ・ブルー』

(c)BBC Worldwide 2003

1作目は、英独合作ドキュメンタリーの『ディープ・ブルー』。記録映像に定評のあるBBC(英国放送協会)が、7年もの製作期間をかけ、世界200か所にも及ぶ場所でロケを行い、4年半の歳月をかけて収録した計7000時間にも及ぶ貴重な映像を選りすぐり、1本の映画にまとめた海洋ドキュメントの定番です。もともとは「ブルー・プラネット」というTV番組のために撮影されたもの。海が持つ美しさや不気味さ、優雅さや雄大さ、深海の神秘、海洋生物が見せる凛々しさや愛らしさ、そして生死にまつわる緊張感や衝撃を、過剰な演出なしにリアルなドラマとして紡いでいきます。唯一、華やかな演出があるとすれば、音楽。担当しているのは、クラシック界最高峰の管弦楽団とも称されるベルリン・フィルハーモニー。動物そして、クラシック音楽好きの私にはたまらない組み合わせです。

2003年の制作なので、本作以降も最新の撮影機器を駆使した遥かに高画質のドキュメンタリーが多く登場していますが、私はこれが一番好き。竜巻のようなイワシの大群が渦巻き、そこへイルカやクジラ、サメなどが食らいつき、空からはカツオドリが弾丸のように海に斬りこみ漁をする。そんな迫力の場面に代表されるシーンの数々は、まるでそこに居るかのような臨場感にあふれ、今なお圧倒的な美を誇っています。本作を知っていると、後続の海洋ドキュメンタリーが二番煎じにしか見えないほど。当時は斬新な映像の連続に驚かされました。もちろん、その輝きは今も感じることができます。

思わず微笑んでしまうコミカルな生き物、心の癒しとなるような浮遊感あるクラゲ、目を見張るような不思議な魚の映像もあり年齢を問わず楽しめる作品ではありますが、海の捕食者たちによる壮絶なハンティング場面も登場するので、小さなお子様とご覧になる際はご留意を。とはいえ、優雅さの中にある厳しい弱肉強食の節理も、善悪という短絡的な視点では語らず、政治的な思想も交えずあくまでもフラットに、目に見える事実によってのみ、観る者に環境保全の大切さを訴えかける背筋の伸びた作風は、やはり紳士淑女の国らしい品格をうかがわせます。海だけでなく、地球の神秘に触れることができる作品です。

『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』

『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』

(c)2007「ドルフィンブルー」製作委員会

海と言えば「碧」ということで、「ブルー」がタイトルについた作品をもう1本。実話を基にした邦画『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』です。原因不明の病により尾びれ切断を余儀なくされたバンドウイルカのフジと、人間との物語。致命的ともいえる障害を負ったフジを「もう一度泳がせたい」と、水族館に勤める新米獣医師の植村が、その熱い思いによって世界的企業ブリジストンを動かし、周囲の協力によって世界初の人工尾びれの開発に漕ぎつけるのです。この斬新な試みは、メディアでも取り上げられ話題となりました。本編に登場するイルカは話題の主である本物のフジ。フジが実際に暮らす沖縄美ら海水族館でロケを行うなど、どこまでもリアリティにこだわっています。フジの身体だけでなく、イルカとしての自由な精神をも懸命に守ろうとする人々の心意気に胸を打たれる一作です。

動物と暮らしたことがある人なら経験があると思いますが、人間がその動物にとってベストだと感じることが、野性を秘めた者たちにとって必ずしもベストではないのではないかという疑問は常に頭の片隅にあるもの。どこまでが人間のエゴで、どこまでが動物のためなのか。事情によって正解は異なりますし、正解はひとつではないはず。だからこそ真剣に考えるほど答えは霧の中にかすんでしまいます。ただ、本作を観ていると、懸命に愛情をかける人々の姿、そして生き生きと泳ぐフジの姿に、ひとつの答えが見えてくる気がしました。

残念ながら、フジは2014年にこの世を去っていますが、その雄姿によって、私たちと動物たちとの関わり方を見つめる機会を与えてくれたと思います。

『海底2万マイル』

『海底2万マイル』

(c)2020 Disney

最後にご紹介するのは、ジュール・ヴェルヌのSF冒険小説『海底二万里』を映画化した海洋アドベンチャーの傑作『海底2万マイル』。ディズニー・シーのアトラクションのモチーフとしても知られる物語です。1868年、南太平洋では船の沈没事故が相次ぎ船乗りたちを恐怖に震え上がらせていました。さらには、怪物の仕業だという噂が流れ、米国海軍が調査に乗り出すことに。パリ博物館のアロナクス教授とその助手コンセイユ、そして銛打ち名人ネッドは調査に同行しますが、数か月ののちに出された怪物はいないとする結果にがっかり。ところがその矢先に怪物が現れ、3人は船から放り出されてしまいます。漂流中に海で見たのは怪しい浮遊物。近づいてみると、それこそ怪物と恐れられていたものの正体、潜水艦ノーチラス号だったのです。中に入った3人は、ネモ艦長ほか乗組員と遭遇。やがて、艦長の過去と潜水艦で暮らす目的を知るのです。

まず本作ではじめにワクワクさせられるのが、「UMA=未確認動物」探し。ネス湖のネッシーのように、まだ見ぬ噂の生物存在の可能性に、人は長年ワクワクしてきました。そう、永遠のロマンなのです。また、噂のモンスターを探しに出かけた海で見かけるイルカの群れや、ノーチラス号を襲う巨大イカも登場し、楽しさもスリルも満点。ですが、私が気に入っているのが艦のマスコットである海獣(すみません、アシカなのかオタリアなのか何なのか見分けがつかず。お分かりの方がいらっしゃればご一報を!)。ネモ艦長のペットにもかかわらず、荒くれ者のネッドに懐いている様子がとってもキュート。ネッド役の名優カーク・ダグラスとの息の合った演技も微笑ましいです。

CG技術の発達した今からすると、かなり手作り感のある作品ですが、日本の怪獣映画的な懐かしさも本作の魅力。その一方で、水を使ったシーンの迫力はとてもリアル。俳優たちが気の毒になるほどでした(笑)。

いつもよりも少し不自由さを感じているなら、夏の爽快感を味わえる3本でぜひ海を満喫してください!

■『ディープ・ブルー』
DVD&Blue-ray発売中
スタンダード・エディション: 2,500円+税
スペシャル・エディション: 4,700円+税
ブルーレイ・エディション: 3,790円+税
発売元・販売元:株式会社 東北新社
(c)BBC Worldwide 2003

■『ドルフィンブルー フジ、もういちど空へ』
発売元:講談社/ホリプロ
販売元:アミューズソフトエンタテインメント株式会社
税抜価格:3800円
(c)2007「ドルフィンブルー」製作委員会

■『海底2万マイル』
ディズニープラスで配信中
(c)2020 Disney

(※作品情報は全て2020年7月時点のものです)

《牧口じゅん》

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