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国立科学博物館、南西諸島に進出したモズの行動特性を調査…リスク回避する傾向が明らかに

国立科学博物館、南西諸島に進出したモズの行動特性を調査
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国立科学博物館の濱尾章二氏が率いる研究グループは、近年南西諸島に進出したモズの集団を調査し、本来の分布域の個体よりもリスクを回避する傾向があることを明らかにした。

一般的には、新たな環境に進出する個体はリスク志向的で、新奇物を恐れないことが知られている。しかし、これとは逆の結果となった今回の個体は、新環境に進出する個体が臆病でリスクを回避する場合があることを示唆しているという。

同研究では、リスク回避傾向や大胆さの指標として一般的に使われている飛び立ち距離を測定し、モズのリスク回避傾向を調査。対象となったモズは、南西諸島の3つの島で合わせて56羽と、比較のため、本来の分布域である鹿児島県、茨城県、北海道を合わせた66羽。

結果は、本土の飛び立ち距離が平均26.1mであったのに対し、島では平均50.5mと、島のモズの飛び立ち距離は明らかに本土よりも長いものだった。

研究グループによると、南西諸島に進出したモズがリスク回避的傾向を持つのは、モズの卵・雛を捕食したり、モズの巣を改造して自分の巣として用いたりするクマネズミが生息していることが影響していると考えられるという。

なぜなら、クマネズミは本土では人家周辺にしか見られないが、亜熱帯の南西諸島ではモズが営巣する藪にも多く生息しているため、リスク回避的な個体の方が、すぐに巣を放棄したり作り直したりして捕食を免れ、子を残しやすいと考えられるからだそうだ。

これにより同研究では、臆病な者が新しい土地でパイオニアになるという意外な事実を示しただけではなく、捕食者との関係という生物間相互作用によって、行動特性が形作られる可能性があることを示す結果となった。

今後は、さらに実証的に研究を進めるため、クマネズミによるモズの巣の捕食頻度や、モズの営巣場所選択についても明らかにし、また、南西諸島に定着したモズがどこからやってきたのか、元の集団の行動特性はいかなるものかも、取り組むべき課題だとしている。

《鈴木まゆこ》

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