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フリスビードッグの魅力は「愛犬からの学び」…日本チャンピオンの福本選手

フリスビーをしっかりくわえて
  • フリスビーをしっかりくわえて
  • 福本選手の投げたフリスビーをジャンプしてキャッチ
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愛犬と一緒に行うスポーツ、「フリスビードッグ」。王者決定戦である「ジャパンファイナル」に6回連続で出場し、日本チャンピオンに輝いた経験もある福本義裕選手に、その魅力や始めたきっかけなどについて聞いた。

結果が出なくても感情を顔に出してはダメ

----:「フリスビードッグ」の競技を始めたきっかけを教えて下さい。

福本選手(以下、敬称略):自分の家を建てた時に、チューダー様式(中世イギリス風)のデザインにしました。その家に似合う犬として、スコットランドとイングランドのボーダー(境界)が発祥のボーダーコリーをペットショップから迎えたのが愛犬との最初の出会いですね。

毎日の散歩がなかなか大変だったのでショップのオーナーに相談したところ、フリスビードッグを勧められたのがきっかけです。非常に能力の高い「子(= 犬)」でした。私の投げ方が下手でもうまく取ってくれたので、妻と娘・息子を連れて家族4人で大会に出てみたのが初めてでした。それからは、「ドはまり」です(笑)

----:20年以上のキャリアと伺いました。これまで何頭くらいの犬とパートナーを組んだのですか?

福本:最初がラッキーで次がノア。ミニョン、フィーユ、アンジュ、ミディ、チェリンカ、ロキ、バッチ、スミ、ミーナ、リッツ、一番下の子がクロアチアから来たミニャルディーズですから13頭です。

----:とてもたくさんの犬と暮らしていらっしゃるわけですが、犬の魅力とは何でしょう?

福本:あの目を見たら「イチコロ」でしょう。

----:確かに、何かを語りかけてくる犬の目線にはやられますね(笑)。分かります。

福本:そうですよね。それから、本当に色んなことを教えてくれるのも魅力です。例えば、今日は「バッチ」が2投目で走るのをやめました。(私は)ものすごくショックなんですが、それを顔に出しちゃダメなんです。

この子にとっては、「私(=自分)が命」ですから、頑張りたいと思っているんです。それでも走らないというのは、身体に何か(異常が)あったということ。万全は期してしていますが、いつも全力で頑張る子なので背骨などを痛めやすいんです。

いずれにしても、全て私の責任です。朝起きてからのウォーミングアップが足りなかったのかも知れないし、スキンシップがもっと必要だったのかも知れない。そういった競技面のことも、それから日常における接し方なども全て、犬たちから教えてもらっています。

----:バッチにとって福本さんは「命」とおっしゃいましたが、福本さんにとってもバッチは命ですね。

福本:そうです。日本チャンピオンになったのは2006年でしたが、その後(バッチが来る前の)4~5年は結果が出なかった。ボーダーコリーといっても本当に様々で、当時の子は競技よりも家庭犬に向いている子だったので、とても悩みました。

その後に出会ったバッチは、まさに私にとっての救世主。私はこの子と一緒に復活できたんです。

強いメンタルと戦略がカギ

----:この競技で重要なことは何でしょうか?

福本:人間のメンタルですね。成績が良い時も悪い時も、(犬への接し方が)変わらないことが大切です。良かった時は褒めて悪かった時はつれなく接するという選手も多いですが、結果が悪かった時ほど(犬を)充分にケアするのが大切だと思います。

それから、競技では人間がプレッシャーを感じて本来の力が出せないことがあります。今日の決勝戦では10ポイント台が続きましたが、あのメンバーなら30ポイント台がポンポン出るはずです。だから、どこまで平静を保ってやれるかが大切。

どんなスポーツでも、また仕事も同じだろうと思いますが、どれだけメンタルをフラットに保つかが必要だと思います。

あとは戦略ですね。単純そうに見えるかも知れませんが、例えば風(の強さや向きなど)でも作戦は変わります。今の季節はあまり吹きませんが、10月頃には4メートルくらいの時があるので、季節に合わせた戦い方が必要です。年間を通して試合があるので、そうした変化を十分に検討するのも重要だと思います。

それから、例えば若い選手が(フリスビーを)遠くに投げて高得点を狙うのであれば、私は残り時間を見ながら投げる距離を考えて確実にポイント獲得を狙うなど、ライバルを1ポイントでも上回る様な戦い方も必要です。

----:なるほど。精神的な安定と戦略が鍵なのですね。そんなフリスビードッグですが、一番の魅力は何ですか?

福本:競技を通じて、お互いが「すべて」な存在であることが感じられるのが魅力ですね。

それから、1頭1頭がまったく違います。ですから、その子を成長させていくのは私の接し方やトレーニング次第。生まれついての得手不得手は必ずありますが、それを上手く生かす方法は必ずあるんです。ワンちゃんたちは(自分の)良い所、悪いことをたくさん教えてくれました。そうしたところも、この競技の魅力ですね。

----:最後に、愛犬家のみなさんに一言お願いします

福本:是非、色んなスタイルでフリスビードッグに挑戦してみて下さい。犬種は関係ないと思います。柴犬も出場しているように、飼い主さんが何を目指すかです。1位を目指すのか、その子と1日遊ぶのか、色んなスタイルがあっていいと思います。

---
福本義裕選手は今シーズン、ボーダーコリー「純」とのペアでランキング2位、「バッチ」とは6位につけている(7/26現在)。インタビュー中、これまでのパートナーの名前がすぐに出てくることと、その全てを「その子」と呼ぶのが印象的だった。

《石川徹》

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