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【“命の商品化”を考える vol.11】動物福祉の観点から修正が加えられたポイントと課題…新・動物愛護法

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  • 運動スペース分離型の基準
  • 運動スペース一体型の基準
  • 飼育スペースのイメージ図

13日に報じたように、8月12日に環境省が「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」(第7回、以下“検討会”)を都内で開催した。

昨年改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、改正動物愛護法)に関連し、ペット取り扱い事業者に遵守義務が課せられる具体的な基準(通称、「数値基準」)を定める省令が現在、環境省で作成されている。

7月10日に行われた前回の検討会で、省令案が示され様々な議論が行われた。今回の第7回検討会では、そうした意見を踏まえて加えられた修正に関する説明があった。ここでは、焦点となっている飼育スペース、従業員数と繁殖に関するポイントについて改正案の要点を紹介する。

ケージなどのサイズ

基本的には前回の案と同様だが、「運動スペース一体型の基準」に条件が追加された。1つのスペースで複数の個体を飼育する場合、「他の個体等との社会性を養う重要性を考慮することとし、闘争等が起こる組み合わせでの飼養は認めない」とされ、犬と猫の社会性および安全に配慮している。また、子犬を育てている場合には、親子以外の個体を同居させることは認めないとされた。

さらに、委員から前回指摘のあったケージ等の高さについても、清掃や日常の維持管理が容易な構造を検討し、別途「解説書」に定めるとしている。この解説書にはまた、ケージの不安定な積み重ねや糞尿の漏洩などが生じないよう、構造や材質に関する具体的な説明も加えられるそうだ。

これに対し委員からは、「闘争」について遊びの一環なのか本当に危険が及ぶケンカなのかの見極めが難しいケースが多いため、分かりやすい定義が必要との意見が出された。

従業員数と犬猫の数

これに関しても前回同様、1人あたり繁殖犬15頭、販売犬等は20頭、繁殖猫25匹、販売猫等は30匹までだが、犬猫を合わせて飼育・管理するケースに関する注記が加えられた。例えば犬猫の両方を販売する場合、犬10頭と猫15匹が従業員1人あたりの上限となる。それぞれの頭数は状況によって様々だが、いずれの場合も上記の上限に合わせて頭数に制限がかけられる。

犬や猫が充分な世話を受けられるよう最低限の基準として設定された数値であり、多くの動物を飼育・管理する場合にはそれだけの人手が必要という判断であり、考え方自体には問題はないだろう。愛護団体などからは不十分との意見も多いようだが、無制限な飼育が可能な現状からは前進と言えるのではないだろうか。

繁殖回数と年齢に関する議論

繁殖に関しては出産年齢の上限を設けるのか、それとも回数で制限するのかが大きな議論となっている。この点も、前回提案された犬・猫ともにメスの交配は6歳までという基準案に変更はなかった。「悪質な事業者」の場合、正確な出産回数を確認することが困難なケースが考えられるため、より正確な情報把握が可能と思われる年齢で規定したいというのが環境省のスタンスである。

今回の変更点としては、一般家庭等への譲渡をしやすくするために「できる限り早い段階で譲渡されるための効果的な施策を推進するための新たな議論の場を設置する」旨が追記された。また、年齢の正確な把握に必要となるマイクロチップの犬への装着義務化が始まる2022年6月までは、出産回数を6回までと「規定することを検討し、今月中に結論を得る」とされた。

前回案から少し前進した印象はあるが、いずれも「議論」や「検討」という段階であり、今後の進捗を注視したい。また、7歳の誕生日を迎えた時点で出産回数が犬は6回未満、猫は10回未満の場合は7歳まで延長できるという措置も前回同様に含まれている。また年齢での規制は、改正動物愛護法・第21条第2項にある「繁殖の用に供することができる回数」に則していないとの指摘もある。

今回の環境省令策定の議論においては、繁殖用の犬・猫の飼育環境改善と同時に引退後の生活についても大きな関心が集まっている。そうした意味で、「第2の生活」に重要な要素となる繁殖回数・年齢に関しては適切な規定の成立が望まれる。

次回は、繁殖に関するその他の議論と今後の予定について紹介する。

《石川徹》

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