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犬の避妊・去勢手術に関する最新の発表 vol.3…犬種ごとの傾向 シェパード、ラブラドール他

ラブラドールレトリーバー(イメージ)
  • ラブラドールレトリーバー(イメージ)
  • ドーベルマン・ピンシャー(イメージ)
  • ジャーマンシェパード(イメージ)
  • ゴールデンレトリーバー(イメージ)

前回は、カリフォルニア大学デービス校が発表した避妊去勢手術と(以下、手術)と関節疾患およびがんの発生リスクについて、日本で飼育頭数の多いプードルとチワワについて紹介した。

今回は、手術によって病気の発生リスクが目立って上がる可能性が指摘されているものの中で、日本でも比較的知られている犬種を紹介する。

ドーベルマンピンシャー

関節疾患やがんの発生リスクを考えると、オスの場合は去勢手術を行わないことが長期的な健康面では安心と言える。去勢手術を行う場合は、がんの発症リスクを避けるため1歳未満で行うのが安心と考えられる。メスについては、早期の避妊手術によって尿失禁と関節疾患発症のリスク増加が見られたため、2歳を超えるまで待つのが安心と言える。

ただし、ドーベルマンに関しては結果が複雑な傾向であったことに加え、サンプル数も限られていたと記されており、あくまで参考情報として考えるのが安心なようである。

詳細:サンプル数は358頭(未去勢のオス109、去勢済みのオス91、未避妊のメス55、避妊済みのメス108)。未去勢のオスの2%に1つ以上の関節疾患が見られた。未避妊のメスには関節疾患は報告されなかった。オスの場合、手術による関節疾患の明らかな増加は見られなかったが、1歳未満で手術を受けたメスの11%に関節疾患が見られた。

手術を受けなかったオスの中でがんを発症したのは2%にとどまったが、1歳で手術を受けたケースでは6%が、2歳から8歳では13%ががんを発症した。メスの場合、未避妊の2%、2歳から8歳で手術を受けた個体の4%が乳がんを発症したが、その他のがんについては大きな差は見られなかった。

未避妊のメスの7%が子宮蓄膿症を発症した。2歳までに手術を受けたメスの多くが尿失禁の診断を受けており、1歳以降2歳未満で手術を受けた場合は19%、生後6か月未満の場合では25%にのぼる。

ドーベルマン・ピンシャー(イメージ)ドーベルマン・ピンシャー(イメージ)

ジャーマンシェパード

関節疾患のリスクを避けるため、オス・メスともに2歳を超えるまで手術を待つことを検討するのが安心といえる。メスの場合、尿失禁のリスク低減にもつながると考えられる。

詳細:サンプル数は1257頭(未去勢のオス514、去勢済みのオス272、未避妊のメス173、避妊済みのメス298)。未去勢のオスの6%、未避妊のメスの5%が少なくとも1つの関節疾患を罹患。去勢済みのオスの場合、生後6か月未満で手術をした個体の19%、6か月以上1歳未満で18%、1歳以上2歳未満で9%に関節疾患が見られた。メスの場合はそれぞれ20%、15%、5%と言う結果だった。

がんは手術をしなかったオスの3%、メスの2%で発症したが、手術による明らかなリスクの増加は見られなかった。未避妊のメスの5%が、2歳以上8歳未満で手術を受けたメスの6%が乳がんを発症した。子宮蓄膿症の発症率は3%だった。1歳までに避妊手術を受けたメスの最大9%に尿失禁の症状が見られた

ゴールデンレトリーバー

関節疾患とがんのリスクを考慮して1歳以降での去勢手術を検討するのが安心と言える。メスの場合、タイミングを問わずがんの発生リスク増加が見られたため、手術を受けないことも選択肢に入る。手術を受ける場合、1歳まで待ったうえで、それ以降はがんの発症に十分注意することが必要と考える。

詳細:サンプル数は1247頭(未去勢のオス318、去勢済みのオス365、未避妊のメス190避妊済みのメス374)。未去勢のオスの5%、未避妊のメスの4%が少なくとも1つの関節疾患を罹患。去勢済みのオスの場合、生後6か月未満で手術をした個体の25%、6か月以上1歳未満で11%に関節疾患が見られた。メスの場合、それぞれ18%と11%だった。

がんの場合、未去勢のオスの15%、生後6か月未満で手術をした個体の19%、6か月以上1歳未満で16%に見られた。メスの場合は未避妊で5%、避妊手術を受けた個体ではそれぞれ11%と17%。1歳を超えて手術を受けたグループでは14%と言う結果だった。未避妊のメスの1%、2歳以上で手術を受けたグループの4%が乳がんを発症した。また、未避妊のメスの4%が子宮蓄膿症を発症した。尿失禁の報告はなかった。

ラブラドールレトリーバー

関節疾患の発症リスクを下げるため、オスの場合は生後6ヶ月以降、メスの場合は1歳以降の手術を検討するのが安心だといえる。

詳細:サンプル数は1933頭(未去勢のオス714、去勢済みのオス381、未避妊のメス400、避妊済みのメス438)。未去勢のオス、未避妊のメスのそれぞれ6%に関節疾患が報告された。生後6か月までに手術を受けたオスの13%、メスの11%に関節疾患が見られた。

未去勢のオスの8%、未避妊のメスの6%が発症したがんについては、手術によるリスクの明確な増加は見られなかった。乳がんの罹患率は未避妊の場合1%、2歳以上で手術を受けたグループでは2%だった。未避妊のメスの2%が子宮蓄膿症を発症した。尿失禁のケースは少なく、1歳までに手術を受けたグループで2~3%であった。

ゴールデンレトリーバー(イメージ)ゴールデンレトリーバー(イメージ)

この様に、ドーベルマンやシェパード、ゴールデン、ラブラドールでは、ある程度身体が成長するまで手術を待つのが安心であるとの提案がされている。また、長期的な健康面を考えた場合には、手術そのものを行わないことも検討することが提案がなされた。

次回は手術と関節疾患やがんの発生にあまり関連性が見られなかった小型犬種をいくつか紹介する。

《石川徹》

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