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【猫がなりやすい病気】尿管閉塞編…近年発症が増加、結石ができないように注意を

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どんな病気?

尿管閉塞とは、尿管に主に石などの塞栓物がつまることにより、急性腎不全を起こすこと。尿管結石を主因とする尿管閉塞の猫は2000年代から増え始め、現在では下部尿路疾患と同程度に問題になっている。増加の原因として、純血種猫の増加やストラバイト結石に配慮したフードの増加の可能性があげられるが、はっきりとした原因は不明である。

発症の原因は様々だが、結石、炎症などによる尿管狭窄、先天性奇形がある。しかし、80-90%が尿管結石で大部分を占める。尿管結石の種類はシュウサンカルシウムが90%以上と言われている。発生は中高齢で多く、中央値は7歳であるが1歳未満の若齢で起こることも。雌雄差はなく、好発猫種として、アメリカンショートヘアやスコティッシュホールドがあげられる。

臨床徴候は、閉塞の程度と併発疾患や潜在疾患の有無により多様だが、多い順に、食欲不振、下部尿路関連の症状(血尿、頻尿)、嘔吐、体重減少があげられる。その他、攻撃的になるなどの性格の変化が見られることもある。また、8%では無症状である。高齢での発症が多いので、慢性腎臓病の併発に注意が必要で、そのような猫に完全尿管閉塞が起きると片側性であっても重篤な腎不全に移行することもある。

病態は、尿管閉塞により尿管圧が上昇する。尿管圧は閉塞してから5時間後にピークを迎え、その後12-24時間は高い状態が続く。腎血流量は閉塞後24時間で40%程度減少し、その後2週間程度は20%減少した状態が続く。尿管閉塞による尿管圧および腎盂圧の上昇と腎血流量の減少が糸球体濾過量(GFR)の低下に関連していると考えられる。また、尿管閉塞後に放出されるサイトカインにより糸球体硬化や腎臓の線維化につながると考えられる。

診断としては、腹部X線検査、腹部超音波検査で比較的容易に結石の存在を確認できるが、結石が小さい場合や、結腸に糞塊が多い場合、結石がX線に写らない場合は発見できないことがあるため、両方の検査をあわせて行うと診断の精度が上がる。重要なのは尿管結石があるかということより、尿管閉塞に関連しているかどうかを明らかにすること。尿管閉塞の程度や両側性か片側性か、潜在的な慢性腎臓病の有無、閉塞してからの時間経過を把握する。また、全身の評価として血液検査や尿検査、場合によっては尿培養も必要になる。検査所見として、片側性尿管閉塞で腎機能が維持できている場合は、特異的な異常所見を示さないこともある。血液検査では高窒素血症、高リン血症、高カルシウム血症がみられることが多い。重度になると高カリウム血症を認めることもある。尿検査では、尿比重の低下、血尿、細菌尿、腹部レントゲン検査では、対側の腎臓の萎縮、超音波検査では、尿管閉塞部近位の尿管拡張と腎盂拡張所見があれば尿管閉塞と診断するのに十分である。短軸で腎盂径が13ミリ以上あれば尿管閉塞に関連している。腎盂や尿管拡張が軽度あるいは無くても尿管閉塞の可能性が考慮される場合は、完全に除外できない。尿管狭窄の場合は、超音波検査では原因が特定できないので、尿管狭窄を疑う場合は、順向性腎盂尿管造影を実施する。

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かかってしまったら?

治療は内科と外科で大きく分かれるが、内科的治療では10-25%の症例で輸液などの治療で尿管結石が膀胱に移動したという報告がある。また、薬ではプラゾシンやアミトリプチリンで改善があったとの報告はあるが症例数が少なく、有効である確証はない。基本的に内科治療は効果がないと考えた方が良いだろう。外科的治療では、尿管切開により結石を摘出する、尿管を切除後に膀胱に吻合する、尿管ステントにより尿管を広げる、SUBデバイス設置により尿管の状態に関わらず閉塞部位を完全にバイパスし腎臓から膀胱への尿の流れを維持する方法がある。いずれの方法も高度な技術が必要になる。

予防法は?

結石ができにくいように、飲水量を増やしたり尿石用の療法食を食べること以外の予防法はない。

《M.M》

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