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目標は野生復帰、野生動物の保全や希少種の飼育に取り組む那須どうぶつ王国

ホッキョクオオカミ
  • ホッキョクオオカミ
  • スナネコ
  • スナネコ
  • スナネコ
  • ホッキョクオオカミ
  • 北アメリカゾーンに今年新設された「オオカミの丘 Wolf hills」
  • オグロプレーリードッグ(北アメリカゾーン)
  • シマスカンク(北アメリカゾーン)

動物園の役割は、生き物を展示することだけではない。野生動物や環境の保護・保全、希少種の繁殖や研究もその一つだ。那須どうぶつ王国(栃木県)も、そういった活動に力を入れている。

近縁種の知見を日本固有種の保全につなげる

同園は、東京ドーム約10個分の広大な敷地で、約150種600頭の動物を飼育している。「王国タウン」エリアにある「保全の森」では、ツシマヤマネコやライチョウなどの日本固有種を保護する目的で、近縁種のアムールヤマネコやスナネコ、スバールバルライチョウを展示。飼育・繁殖などのデータを取り、他の動物園と情報交換を行いながら、ツシマヤマネコやライチョウの保護に役立つ飼育技術の確立を目指しているそうだ。

2017年からは環境省の保護増殖事業によるニホンライチョウの保全・飼育も開始した。今年度は野生復帰を目的とした親鳥による自然繁殖に初めて成功。現在、2羽の雛が順調に成育している。また、人工繁殖でも4羽が成育しており、9月3日より一般公開をスタートした。広報戦略室の林 健さんは、「数年かけて取り組んできましたが、これまで孵化して雛を見てもらうということができなかったので、やっと…という思いです。こういった取り組みは時間がかかるものですし、資料はあっても実際やってみるとこんな難しいのかという試練もある。孵化しても最初の2週間は、担当飼育員が注意深く様子を見ていました。野生復帰にはまだまだ試練がありますが順調に育っているので嬉しい」と話す。

ニホンライチョウニホンライチョウ

ホッキョクオオカミが見られるのはここだけ

この他にも、マヌルネコやホッキョクオオカミなど貴重な動物たちを飼育している。北アメリカゾーンに今年新設された「オオカミの丘 Wolf hills」には、約500平米の敷地にヒマラヤスギやモミなどの針葉樹の森や、擬岩で岩場を再現し滝や池などの水場も用意。本来の行動が見られるよう、生息環境にこだわった。2頭のホッキョクオオカミが暮らしているが、現在日本で見られるのは唯一同園のみだ。那須高原は冬になると多い時で50~60cm、吹き溜まれば2mほど雪が積もるという。雪景色の中で駆け回るホッキョクオオカミの姿も見ものだろう。

北アメリカゾーンに今年新設された「オオカミの丘 Wolf hills」北アメリカゾーンに今年新設された「オオカミの丘 Wolf hills」

林さんは、大自然の中で行われる「バードパフォーマンスショー ~ブロード~」(スカイスタジアムにて)もぜひ見てほしいという。「タカやミミズク、インコなどが、頭の上や眼の前を飛んでいきます。もちろん鳥に紐は付けていません。屋外でこの規模で行っているところはなかなかないでしょう。山の中や真後ろから来ることもあるので、どこから現れるか探すのも面白い。鳥ってこんな風に飛行して、こんな大きさなんだ、という新しい発見をしてもらえると思います」

バードパフォーマンスショー ~ブロード~バードパフォーマンスショー ~ブロード~

クラウドファンディングは11月6日まで

同園は現在、ニホンライチョウを始めとした希少種保全の取り組みや、プラスチックの利用削減など独自の持続可能な開発目標(SDG’s)への取り組み、より良い動物たちの生活環境を整えることを目的としたクラウドファンディング「自然にいざなう“野生への扉”プロジェクト」を行っている。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため一時休園を余儀なくされたこともあり、来場者、売上共に約6割減の影響を受けたという。「保全などの活動は動物園としてやっていかなければならないと考えていますが、このままだと継続が難しいということで、皆様の力をお借りしたいと思っています。おかげさまで10月7日には3000万円を達成しました。また、皆様からの声は、本当にスタッフ・飼育員の励みになっています」(林さん)

支援を受け、ニホンライチョウの野生復帰順化施設、コツメカワウソ家族の屋内展示場、マヌルネコの新展示場、レッサーパンダ親子の展示場整備は設計・計画に入ったという。プロジェクト期間は11月6日まで。希少種の保全事業・独自の「SDG's」活動の継続、ジェンツーペンギンの新展示場建設を目指し、ネクストゴールの5000万円に挑戦中だ。

那須どうぶつ王国那須どうぶつ王国

林さんは、「保全や動物福祉の取り組みにはこれからも注力していきますが、皆様に動物を知ってもらう入り口としては『カッコイイ』でも『カワイイ』でも良いと思っています。その上で、彼らがどういった環境に住んでいて、どんな状況に置かれているのかを、少しでも気にしたり調べてもらえるようになれば嬉しい。環境問題についても、一人ひとりができることはそんなに多くないと思います。でも、ゴミの分別をきちんとするとかポイ捨てをしないとか…当然のことなのですが、そういったことを意識してもらえたら少しずつでも変わっていくはず。あとは、動物たちの姿を見て癒やされてください(笑)」と語っていた。

《REANIMAL編集部》

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