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アニコム、防ぐべき遺伝病の撲滅・管理を宣言

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ペット保険のアニコム損害保険を子会社に持つアニコム ホールディングスは、グループをあげて2017年よりペットの遺伝病撲滅に取り組んでおり、この度、遺伝病の「撲滅」あるいは「管理」に至ったと判断できる状況になったと発表した。

犬種や猫種といったペットの品種は、その遺伝的特徴をより際立たせるべく、人間が交配(ブリーディング)を繰り返すことで生み出したもの。そのためペットの場合、他の生き物と比べて非常に血が濃くなっていると同時に、病気の遺伝子(=遺伝病)も色濃く受け継いでしまっている。従って、遺伝病を減らすことは、ペットを生み出した私たち人間の責任であると、同社では考えているという。

遺伝病には、「致死的な病気」と「QOLを低下させるものの生存可能な病気」がある。同社では、前者を「撲滅」すべき遺伝病、後者を「管理」すべき遺伝病と位置づけ、協力してくれる取引先とともに取り組みを進めてきたそう。全てを「撲滅」すべきとしていないのは、特定遺伝病の撲滅のみを考えて交配を繰り返してしまうことで、逆に遺伝的多様性が低下し、近親交配のリスクが高まることを避けるためだという。

具体的に「撲滅」すべき遺伝病とは何かというと、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークやジャーマン・シェパード・ドッグに多いことで知られる「変性性脊髄症(Degenerative Myelopathy:DM)」、柴犬に多い「GM1ガングリオシド―シス」が挙げられる。いずれも神経症状を呈し、最終的には死に至る病気である。

これに対し同社は、これらの3犬種・2疾患については、アニコムグループが提供する遺伝子検査を実施しているブリーダー・ペットショップにおいて、「撲滅」に向けた取り組みの成果を確認することができているという。現状の検査体制を継続していくことで、今後飼い主に引き渡される上記3犬種については当該遺伝病が発症しない、すなわち「撲滅」可能な状況に至ったと判断したとしている。

また、「QOLを低下させるものの生存可能な病気」としては、トイ・プードルで発症が多い遺伝病である、「進行性網膜萎縮症(Progressive Retinal Atrophy:PRA)」を挙げている。視力が低下し最終的には失明に至る病気のため、ペットにとっても飼い主にとっても辛い病気だが、犬は人間ほど視力に頼らず生きていると言われているため、適切な住環境等を整えるなどで病気と付き合っていくことができる。

同社は、このPRAに関する遺伝子検査が広がるとともに、遺伝的多様性を保持した状態でできる限り発症リスクの減少を実現しつつ、一方でリスクを保有している個体については飼い主に対して事前に十分にそのリスクを伝えた上で引き渡しを行っている状況が認められたとしている。

そのため、現状の検査体制を継続していくことで、今後飼い主に引き渡されるトイ・プードルに関しては、ペット業界として適切に「管理」可能な状況に至ったと判断したという。

保険会社である同社は、ケガ・病気に関するデータが保険金請求などを通じて大量に集まってくるとし、こうしたデータを活用して、ケガや病気を未然に防ぐこと、つまり“予防”こそが、保険会社グループであるアニコムの真の役割であると考えているという。今回の遺伝病撲滅・管理についても、そうした思いから取り組みを進めているのだそう。

しかし実際にはまだ多くの遺伝病が存在し、苦しんでいるペットが存在していることも事実。そのため今後も同社では、遺伝病の「撲滅」あるいは「管理」を一歩ずつ実現することで、ペットとその飼い主のQOL向上に資するべく、ペット業界全体と協力して引き続き尽力していくとしている。

なお、本記事内での「撲滅」とは、アニコムグループが提供する遺伝子検査を利用しているブリーダーまたはペットショップから飼い主のもとへ、当該遺伝子検査で確認できる遺伝病の遺伝子を保有した犬猫を3ヶ月以上連続して引き渡ししていないことを指す。

また、本記事内での「管理」とは、当該遺伝子検査で確認できる遺伝病の遺伝子を持つ個体が誕生しているものの、その遺伝病は致死的なものでなく、アニコムグループが提供する遺伝子検査を利用しているブリーダーまたはペットショップから飼い主に対して事前にそのリスク等が説明され、飼い主もそのリスク等を理解した上での引き渡しが3ヶ月以上連続して行われていることを指す。

《鈴木まゆこ》

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