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日本盲導犬協会、2020年度盲導犬ユーザー受け入れ拒否の実態を報告…事業者向けオンラインセミナー開催中

日本盲導犬協会、2020年度盲導犬ユーザー受け入れ拒否の実態を報告
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障害者差別解消法施行(2016年)から5年がたった今、視覚障害者に対する社会の理解は進んだのか、その実態を把握するため、日本盲導犬協会は、盲導犬ユーザーから相談が寄せられた盲導犬同伴による受け入れ拒否への対応事例を毎年集計し、公開している。

2020年度の集計では、コロナ禍で外出機会が減るなか、解決が難しく同協会が対応した事例が34件あった。さらに盲導犬ユーザーへの聞き取り調査からは、コロナ感染を理由とする拒否が発生していることもわかってきた。

同協会では、盲導犬同伴で受け入れ拒否に遭い、ユーザー自身の説明では理解が得られなかった場合、ユーザーの要請に応じて協会が問題解決へ向け対応する「アドボカシー活動」を2005年2月より展開している。2020年度はコロナ禍で外出を控える人もいたなか、34件の対応依頼が協会に寄せられたという。同協会は、その集計結果と特徴的だった事例を抜粋し、現状と傾向を報告している。

2020年度に対応した34件のうち、受け入れ拒否が起きた場所としては、飲食店が16件(47%)で最多、次に医療機関の8件(24%)、小売店の3件(9%)と続いている。この3年間の対応件数を合計した数字でも、飲食店47%、医療機関17%、小売店7%の順で変わっていない。

2020年度に飲食店で起きた拒否のうち、複数店舗を経営するチェーン店と個人店舗と比較したところ同数となり、店の業態によって拒否の割合に変化はみられなかった。チェーン店では、多数いる従業員全てに教育を行き届かせることが難しく、拒否が発生。個人店舗では、責任者が受け入れの義務自体を知らないことも多くあったという。

受け入れ拒否の原因は大きく3つあり、事業者が「受け入れの義務を従業員に徹底できていなかった」など教育不足が17件(50%)、事業者が「受け入れ義務を知らなかった」が12件(35%)、事業者が「受け入れについて誤解をしていた」が4件(12%)となっている。

このデータから、障害者差別解消法や身体障害者補助犬法の周知が進んでいないことが明らかであると言える。たとえ企業が法律を理解していても、従業員への教育が不足し、現場へ浸透していないことがわかる。同じ店でも、対応者によって受け入れの可否が変わるケースもあったそう。

受け入れに対する具体的な懸念の声としては、シートを汚すのではなど犬の衛生面への懸念が6件(18%)、アレルギーの客がいるかもしれないという懸念が6件(18%)、犬が嚙みついたり床を傷つけたりするのではなどの犬行動面への懸念が4件(12%)。その他、設備が整っていない、人手不足などもあった。

2016年に施行された障害者差別解消法では、誰もが等しく店やサービスを利用できるよう、事業者側は求めに応じて配慮しなければならない、としている。盲導犬同伴を理由に視覚障害者の入店を拒むことは「障害を理由とした差別」にあたるが、差別解消法の周知は未だ進んでいないことが数字からも明らかだ。

また、コロナ禍において、外出時や社会参加での「困りごと」聞き取り調査の結果も公開している。設問は選択肢8つの複数回答で、抜きんでて多かったのが「ソーシャルディスタンスが分かりづらい」で41%。「周囲に手引きなどのサポートを頼みづらい」(22%)、「商品などを触るため周囲の目が気になる」(21%)など、周りに気兼ねしながら外出するユーザーの姿が浮かぶ結果となった。

「犬の感染を理由に拒否に遭うのでは」という回答は12%だったが、「コロナ感染を理由に店や施設でサポートを断られたり、入店を拒否されたりしたことがあるか」という質問には、14人(6%)が「ある」と回答している。盲導犬と単身で自由に外出できるはずが、出先で人のサポートを得られるか心配で断念せざるを得ず、以前にも増して、コロナ禍で視覚障害の方が不自由を強いられている現状が浮かび上がってきた。

盲導犬同伴を理由にした「受け入れ拒否」については、93人(41%)が「ある」と回答。ここ数年は60%前後で推移してきたが、今回は大きく減っている。同協会はこの結果を、コロナによる外出自粛要請により、ユーザーの外出頻度が減ったのが要因と推察している。

ユーザーからは、「コロナ禍なので断られそうなところに行かない」「病院への付きそいでは犬を置いていくことにした」など、受け入れ拒否を避けるための行動を余儀なくされていたことが伺えるコメントが寄せられている。

同協会では、これらの調査結果を受け、誰もが自由に社会参加できる共生社会の実現には、事業者およびその従業員への教育が急務であると考え、「オンライン盲導犬ユーザー受け入れ・接客セミナー」を4月から定期開催している。セミナーは事業者別に開催されており、同協会公式ホームページより申し込み可能。

ホームページでは「盲導犬受け入れ拒否対応事例集」を、協会公式YouTubeチャンネルでは盲導犬ユーザーによる入店拒否の経験談や盲導犬との生活についても公開している。

■調査概要
●受け入れ拒否対応事例
・集計対象:受け入れ拒否に遭ったユーザーの要請により、問題解決に向け協会が対応した事例34件
・集計期間:2020年4月1日~2021年3月31日

●コロナ禍での外出時や社会参加での「困りごと」聞き取り調査
・調査対象:日本盲導犬協会所属のユーザー(盲導犬使用者)230人 
      回答数227人(男性104人 女性123人)
・調査対象期間:2020年1月1日~12月31日
・調査方法:職員による電話とメールを使っての聞き取り

《鈴木まゆこ》

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