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マダニが媒介する致死率の高い感染症が拡大…ペットの犬・猫にも用心

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人間が感染した場合、致死率が高いマダニによる感染症が、今年6月に千葉県で確認されたことが分かった。国立感染症研究所(以下、感染研)によると、関東地方では初めての報告となる。これまで宮崎県や山口県など西日本を中心に感染例が確認されていたが、今年の3月には静岡県でも発見されており感染地域が拡大している。

マダニを介して感染する重症熱性血小板減少症候群

「重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)」と呼ばれるこの感染症は、草むらなどに生息しているマダニにかまれて「SFTSウイルス」に感染することで発症する。厚生労働省(以下、厚労省)によれば、ヒトが感染した場合、発熱、全身倦怠感や消化器系の不調(食欲不振、腹痛、嘔吐下痢)などの初期症状が出る。感染研の研究によると、これまで分かっている日本での感染例では致死率も高く約30%とされている(厚労省のデータでは、中国での致死率が6~30%とある)。

ワクチンや治療薬がなく予防が最重要

ワクチンや発症した場合の治療薬は存在しないため、マダニにかまれない予防策が最も重要である。草むらなどに入る場合、長袖・長ズボンや手袋などを着用し、できるだけ肌の露出を避けたい。刺された場合には、医療機関でマダニの除去や洗浄など適切な処置が必要である。無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚内に残ったり体液が逆流したりしてウイルスに感染する恐れが高くなる。

感染研のデータでは、2013年3月から今年の4月までに合計588件の感染報告があり、そのうち72名が死亡している。感染は春から夏に集中しており、これから郊外に避暑やキャンプに出掛ける場合には十分に注意が必要だ。

特に猫の感染例が多い

マダニから感染した猫や犬などの動物を介して人間が感染するケースもあると言われている。感染研は、「SFTSの発生のうち、数%が動物から人への感染である可能性がある」とコメント。感染研や日本医療研究開発機構の研究では、2017年以来、ペットから飼い主や獣医師などへの感染が12件(猫11件、犬1件)確認されており、うち1人が死亡していると共同通信が報じている。

猫の致死率は70%にのぼる

動物がSFTSに感染した場合も、人間同様の症状が見られる。厚労省のデータによれば、2019年には109匹の猫に発症が報告され、そのうち70%が死亡した。犬の場合も致死率は50%ほどと言われている。愛犬や愛猫がダニにかまれないよう、予防薬を確実に投与したい。また、散歩中に不用意に草むらに立ち入ることを避けることも大切だ。猫の感染例が多いのは、屋外飼育によりマダニにかまれるリスクが高いのが原因の1つと考えられる。熱中症や交通事故などその他の危険を避けるためにも、猫の室内飼いを徹底したい。

唾液やふんを介した感染に注意

動物からは唾液やふんなどを介して感染すると考えられている。ペットとは過剰な触れ合い(口移しでエサを与えるなど)は控えることが安心だと言える。もしペットにマダニが付着した場合、無理に取ろうとせず、獣医師に処置を依頼することが重要だ。

家の中にいる小さいダニは大丈夫

なお、SFTSを媒介するマダニは家庭内に発生するダニ(食品につく「コナダニ」や衣類などに発生する「ヒョウヒダニ」)や植物につく「ハダニ」とは異なる。家の中でダニを見つけたからといって、過剰に心配する必要はない。厚労省の資料によれば、マダニは「固い外皮に覆われた比較的大型(種類にもよりますが、成ダニでは、吸血前で3~8mm、吸血後は10~20mm程度)のダニで、主に森林や草地に生息していますが、市郊外、市街地でも生息しています」とされている。

《石川徹》

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