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【動物に会える映画 vol.16】彼女たちが愛する動物たち…ドキュメンタリー3選

『オードリー・ヘプバーン』©️2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.
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動物が好きだとわかるだけで、遠い存在の誰かにも親近感を抱くということがあります。スクリーンで観ている伝説のあの人も、TVで観るあのロイヤルな方も、美しいピアノを奏でるこの人も、かなりの動物好きだと知ったなら、きっと印象が変わるはず。

今回は、3人の素敵な女性たちのドキュメンタリーを通して、彼女たち、そして彼女たちの人生に欠かすことのできない動物たちの日常を垣間見てみましょう。

『オードリー・ヘプバーン』

『オードリー・ヘプバーン』©️2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.『オードリー・ヘプバーン』©️2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

1作目は、映画界のみならず20世紀を代表する伝説的人物の、その知られざる素顔を描いた『オードリー・ヘプバーン』です。『ローマの休日』で鮮烈な印象を残し、『麗しのサブリナ』『ティファニーで朝食を』『マイ・フェア・レディ』など数々の代表作を持つヘプバーンは、没後30年が経とうとする今も尚、清楚な魅力とファッション・アイコンとしての輝きを放ち続けています。

俳優としての功績もさることながら、晩年にはユニセフ親善大使として恵まれない子供たちを援助する活動を精力的に行ったことでも知られていて、まさに妖精さながらに、愛にあふれた存在と言えるでしょう。

ところが、そんな彼女が実は愛に恵まれていなかったという真実を紹介しているのが本作です。大スターとして華やかで満たされた人生だったという印象を抱きがちですが、子供の頃には父親に裏切られ、第二次大戦下では過酷な任務を負わされ、スターになってからも離婚を繰り返す。名声よりも愛を求めながらも、それが得られなかったことが、痛々しい事実として明かされていくのです。それでも彼女が、亡くなる直前までチャリティ活動を通して世界に愛を振りまき続けたのは、愛の尊さを誰よりも知っていたからかもしれません。だからこそ、自分が与えようと。そんな一面を知ってから改めて彼女の作品に触れると、その微笑みは一層輝いて見えるのです。

真実の愛を求め続けたものの、なかなか良きパートナーに恵まれなかった彼女ですが、劇中いつも傍らにいるのは犬たちでした。“有名”な愛犬ヨークシャーテリアのフェイマスとのショット、自宅で犬たちと寛ぐ姿など、多くのプライベート写真や秘蔵映像も登場。その様子からは、犬と一緒に旅している様子も伺えます。忙しく各地を移動することも多かった人気者の彼女。きっとひとときも離れたくなかったのでしょう。愛犬家としても有名なオードリーですが、どこか満たされない生活を支えてくれたのは、犬たちだったのかもしれません。

『エリザベス 女王陛下の微笑み』

『エリザベス 女王陛下の微笑み』©️ Elizabeth Productions Limited 2021『エリザベス 女王陛下の微笑み』©️ Elizabeth Productions Limited 2021

2作目も、時代を代表する女性を描いた異色のドキュメンタリー『エリザベス 女王陛下の微笑み』です。今年2月で在位70年を迎えた、英国が誇るクイーンです。作品では、インタビュー映像を含め、日頃はあまり目や耳にしない女王陛下の笑顔やジョークなども紹介。君主としてのクールなイメージから一変、朗らかで柔らかいチャーミングな女性像を見せてくれています。

多くの映像や写真を見ていて、やはり気になったのは女王陛下の周囲にいる動物たち。ウェルシュ・コーギー好き、馬好きは有名ですが、それを証明するプライベートな場面が多く紹介されています。特に馬が大好きなご様子は、ドラマ『ザ・クラウン』でも描かれている通りでした。

女王陛下の執務室に自らの馬の写真がびっしりと飾られている、そんな場面もありました。自らの馬が出るレースに熱が入る様子は、どこにでもいるおばあちゃまで、とっても親しみが湧いてしまいます。噂では嫌なことがあると乗馬をなさるとか。常に重い責務を負い、人にかしずかれ、多くの賞賛や批判にさらされる人生は想像すらできません。動物たちをそばに置くのは、彼らが女王陛下をクラウンなしの、ひとりの人間として見てくれるからでしょうか。動物たちと過す時間は、立場を忘れて素顔に戻れる、数少ないひとときなのかもしれません。

『フジコ・ヘミングの時間』

『フジコ・ヘミングの時間』(「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ)『フジコ・ヘミングの時間』(「フジコ・ヘミングの時間」フィルムパートナーズ)

最後は、世界を舞台に活躍するアピアニストの日常に迫った『フジコ・ヘミングの時間』(Netflixで配信中)です。母親の故郷であり、自らも暮らした日本で、コンサートを開催することも多いので、彼女を知る人は少なくないでしょう。才能に恵まれながらも、戦争や病で活躍の機会を逸し、60代で見出された遅咲きの音楽家です。数ヶ月にもわたる演奏旅行に出かけることが彼女の日常ですが、生活の拠点はパリ。とにかく動物が大好きで、1889年築のアパルトマンで、アンティークの素敵な家具に囲まれ、猫3匹、犬3匹と暮らしています。猫が家具で爪をといでしまうと嘆きながらも、気にしていない大らかさは、まさに彼女の演奏に通じるものがありました。(もし彼女の演奏を聴いたことがなくてもご心配なく。劇中、たっぷり堪能できますので。)

どこの国にいても、犬に出会えば、素通りはできない彼女。使役犬のために、定期的にチャリティコンサートも開いているのです。支えてくれる友人は各国にいますが、基本的には一人暮らし。子供が欲しかったという彼女ですが、その望みが叶わず、縁あって動物を飼い始めたといいます。動物は家族。しかも、子供のように反抗期もないしね、とつぶやきます。大好きな猫ちょんちょんが、調子を崩していると、練習どころではないのです。

パリ、ベルリン、サンタモニカ、東京、京都と、各地にお気に入りの家を持つ彼女ですが、やはり犬猫と1年の半分を過ごすパリでの暮らしが、しっくり来ているよう。動物たちは、根無し草のようになってしまいそうな忙しい彼女の心の拠り所、「home」となっているのでしょう。待っている存在がいるから、帰ってきたとほっとできる。動物たちは、心のアンカー=錨のような存在なのかもしれません。


三者三様の生き様を垣間見られる3作品。これらの作品を観ていると、生き様やライフスタイルは違っても、動物を愛する気持ちという糸で私たちは繋がっている、そんな気がしてくるのです。

■『オードリー・ヘプバーン』
5月6日(金)TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国公開中
配給:STAR CHANNEL MOVIES 
©️2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED.

■『エリザベス 女王陛下の微笑み』
6月17日(金)、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国公開
©️ Elizabeth Productions Limited 2021

■『フジコ・ヘミングの時間』
Netflixで配信中

《牧口じゅん》

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