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「宮崎 学 イマドキの野生動物」展、東京都写美術館にて開催中…10月31日まで

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《テン》〈新・アニマルアイズ〉より 2018-21年 作家蔵
  • 《テン》〈新・アニマルアイズ〉より 2018-21年 作家蔵
  • 《ツキノワグマのカメラマン、長野県、中央アルプス》〈イマドキの野生動物〉より 2006年 作家蔵
  • 《中央アルプスの稜線から下界を見下ろすニホンカモシカ》〈ニホンカモシカ〉より 1970-1973年 作家蔵
  • 《巣だちが近いヒナ》〈フクロウ〉より 1982-1988年 東京都写真美術館蔵
  • 《1月27日6時36分》〈死〉より 1994年 東京都写真美術館蔵
  • 《冬のリスはタヌキの死体から動物脂肪を求めていた》〈死を食べる〉より2012-2016 年 作家蔵
  • 《ニホンザル》〈君に見せたい空がある〉より 2020-21年 作家蔵
東京都写真美術館(東京都目黒区)では、10月31日まで「宮崎学 イマドキの野生動物」を開催している。

宮崎学氏は中央アルプスの麓、長野県上伊那郡南向村(現・中川村)に生まれ、伊那谷の自然豊かな環境を生かし、1972 年よりフリーの写真家として活動を開始した。「自然界の報道写真家」として、 現在も日本中の自然を観察している。

同氏は動物たちの通り道に自作の赤外線センサー付きのロボットカメラを設置し、撮影困難な野生の姿を撮影した「けもの道」のシリーズなど、哺乳類、猛禽類の撮影において独自の分野を開拓。また、 人間の生活空間近くに出没する野生動物や、外来動物の影響など、動物の生態を通して人間社会を浮き上がらせる社会性のあるテーマにも取り組んでいる。

シリーズ最新作となる「新・アニマルアイズ」「君に見せたい空がある」は、“動物たちの住む森を動物の目線で見る”をコンセプトに、動物たちの痕跡を注意深く読み解き、自作のロボットカメラで人間の目が及ばない世界を写し出している。

同展覧会は、半世紀近くに渡る、同氏の作家活動の軌跡をたどりながら、黙して語らぬ自然の姿を浮き彫りにしようとするもの。初期作品から撮り下ろしの最新作まで、全7シリーズ合計210点で概観する、同館初の大規模な個展であり、同氏が長年培った生態観察力と技法が盛り込まれた最新作「新・アニマルアイズ」「君にみせたい空がある」は、世界初公開となる。

近年、人間中心の視点で自然を語ることが、自然保護ではなく、自然保“誤”になって”いるのではないか、と疑問をもった同氏は、「文章で長々と語るより一枚の写真から何百字、何千字という言葉を紡ぎ出せるような撮影を心がけた」と語る。言語を越えた写真表現で伝える、「野生動物のイマ」が写し出されている。

また同展では、森の中で起こる、野生動物たちの死をめぐるドラマを克明に写し出したシリーズ、「死」(1994)、 「死を食べる」(2012-15)を時系列的に紹介。様々な生き物たちの「死」から「死のおわり」までをみつめ続けた同氏の眼差しに、大人から子供まで、それぞれの視点を重ねて自然界の摂理に向き合うことができる、貴重な機会となっている。

昼夜問わず、日本中の野生動物たちを追う過酷な撮影を続けた同氏は、人間の身体の限界を痛感し、約4年の歳月をかけて、赤外線感知装置に直結した「ロボットカメラ」を開発した。他に類を見ない、ロボットカメラによる無人撮影の実現化によって、人間の存在を意識しない、野生動物たちの素の表情や知られざる生態を視覚的にとらえることに成功する。

同展では、1976年から現在も続く「けもの道」をはじめ、動物の視点で森の中の日常を観察する最新作まで、同氏の相棒ともいえるロボットカメラの眼がとらえた、人間の身体・ 想像力をはるかに超えた野生動物たちの驚くべき世界に注目。会場では同氏が自作したロボットカ メラも展示される。作品に加え、豊富な資料から、同氏の探求心の源泉に触れることができる展覧会となっている。

展示構成と出品作品は次の通り。

第1章 「ニホンカモシカ」。同氏が本格的に野生動物の生態写真を撮影し始めた1965年前後、野生のニホンカモシカは「まぼろし」と形容されるほど、出会う機会が少なく、撮影は至難の業とさえ言われていた。同氏は1965年3月頃からニホンカモシカの綿密な生態観察を始め、中央アルプスの亜高山帯に生息する33頭のカモシカを個体識別し、四季を通じて生活を追い、同氏によって次々に地図の上に記されていく目撃情報と生態写真は、生物地理学上、あるいは進化史上での貴重な記録となった。

第2章「けもの道」。同氏は、登山道に無人撮影できるロボットカメラを設置し、四季を通じてそこに出現する様々な野生動物たちを撮影。それまでに類を見ない斬新な撮影方法と、無人撮影だからこそ撮影可能な野生動物たちの自然な表情は高く評価され、40年以上たった現在も「けもの道」をテーマにした撮影は続いている。 本章は「けもの道」(1976-1977)、「倒木のけもの道」(2012-2013)、「岩田の森のけもの道」(2012-13)の3シリーズで構成されている。

第3章「鷲と鷹」。同氏は国内に生息する猛禽類16種類全てをカメラに収めるため、北は北海道の知床半島から南は沖縄の西表島まで、鷲と鷹を追い求めた。鷲や鷹の生息域は、人里離れた山の中や、断崖、岩場、離島だったため、撮影にはカメラ機材一式とキャンプ道具を車に積み、野営につぐ野営で撮影が続いた。 約15年の歳月をかけて完成したこれら貴重な生態記録により、同氏は日本における猛禽類生態写真の第一人者となった。

第4章「フクロウ」、第5章「死」、第6章「アニマル黙示録/イマドキの野生動物」と続き、第6章では、1993年から2012年まで、長期にわたって、人間の生活空間近くに出没する野生動物を通して人間社会を描いたシリーズ「アニマル黙示録」に加え、現代社会にたくましく生きる野生動物を活写した「イマドキの野生動物」を紹介している。

第7章は「新・アニマルアイズ/君に見せたい空がある」。「新・アニマルアイズ」(2018-2021)は、動物の住む森を動物の目線から見ることをコンセプトに、動物たちの痕跡をもとに、その生活や行動を注意深く読み解きながら、森の中の屋外スタジオに自作のロボットカメラを設置し、人間の目が及ばない瞬間を写し出した最新作。圧倒的な臨場感をもった映像の数々は、まるで彼らの隣に居合わせたかのような迫力で、見るものを圧倒する。

「君に見せたい空がある」(2018-2021)は、レンズをなめられるほど、カメラの近くに来てもらうため、動物たちの行動を予測。画面に写し込んだ作品は、それまで同氏が培った技術の全てが盛り込まれた集大成となっている。動物たちが森の中でどのような暮らしをしているのか、彼らの目線から知ることができるシリーズである。

■開催概要
・会期:8月24日~10月31日
・会場:東京都写真美術館
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
・開館時間:10時~18時(入館は閉館30分前まで)
・休館日:毎週月曜日(ただし、9月20日は開館)9月21日
・観覧料:一般 700円、学生 560円、中高生・65歳以上 350円
・備考:オンラインによる日時指定予約を推奨

●関連イベント
アーティスト・トーク「自然から学ぶ4日」
(出品作家の宮崎学氏を講師に迎え、アーティスト・トークを開催)

第1回 テーマ「展覧会から考える イマドキの野生動物」
2021年9月11日(土) 14:30~16:00(申し込み受付は9日12:00まで)
第2回 テーマ「黙して語らない自然から学ぶ」
2021年9月12日(日) 14:30~16:00(申し込み受付は9日12:00まで)
第3回 テーマ「間違いだらけの環境問題」
2021年10月9日(土) 14:30~16:00(詳細は後日HPにて掲載)
テーマ「獣害ってなんだろう」
2021年10月10日(日) 14:30~16:00(詳細は後日HPにて掲載)

定員:95名 事前申込制(先着順)
参加費:無料
申込方法:申込専用フォームにて受付(東京都写真美術館HP内)
《鈴木まゆこ》

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