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トラってどんな動物? 種類や生息地など…寅年特集 vol.1

トラ © Narayanan Iyer (Naresh) / WWF-International
  • トラ © Narayanan Iyer (Naresh) / WWF-International
  • トラ
  • トラ © Ajay Varma / WWF-International
  • トラ © Suyash Keshari / WWF-International
  • トラ © Suyash Keshari / WWF-International
  • アムールトラ(シベリアトラ) © Shutterstock / Ondrej Prosicky / WWF-International
  • ベンガルトラ © WWF-Sweden / Ola Jennersten
  • スマトラトラ © WWF-Indonesia

ここ数年、世界は新型コロナウイルス感染症の影響で大変な経験をしましたね。まだまだ油断はできませんが、対策が進み日常を取り戻す希望が見えてきた気もします。2022年は寅年。十二支の中でも一際力強さを感じます。

そこで、寅年特集として動物のトラについてシリーズでご紹介します。体の大きさ、生態や習性、生息域から人気のホワイトタイガーまで、色々な側面からスポットライトを当てていきます。堂々として無敵なイメージを持つ人も多いかもしれませんが、「絶滅危惧種」に指定されているはかない存在でもあります。種類によっては、既にいなくなってしまったトラもいます。

第1回は、「トラってどんな動物?」というところから始めます。

一番大きいネコ

トラは人間よりもはるかに大きい動物です。種類によって違いますが、体長は1.7~3m、体重も300kgを超える場合があるそうです。ヘビー級の格闘家や力士でもかないませんね。

「百獣の王」と呼ばれるライオンは、体長1.7~2.5m、体重150~240kg(オスの場合)だそうです。個体差はありますが、ほぼ同じサイズと考えて良いでしょう。ライオンは主にアフリカ大陸に暮らしています。したがって、トラはアジア大陸にいるネコ科最大の動物です。

生まれた時の体重は1kg、大人は単独行動

子どものトラはお母さんのお腹の中で約100日を過ごし、体重が1kgほどに成長して生まれます。1歳半くらいまでは、お母さんやきょうだいと一緒に暮らして狩りの方法など生きる手段を学びます。独り立ちすると、3~4年で大人になり、寿命は15年前後と言われています。

トラトラ

お母さんから離れて独立すると、縄張りをもって単独で暮らします。広さは獲物がたくさんいるかどうかで変わるそうですが、オスの場合は1000平方kmほどだそうです。1~3頭のメスとは生活圏がある程度重なっていて、繁殖の機会が生まれます。なお、オス同士の縄張りが重なることはありません。

獲物は大型の哺乳類から昆虫まで

大きな体を維持するために、たくさんの食料が必要です。トラは年間で50~60頭の大型動物を捕食していると見られています。主な獲物はイノシシやシカですが、時にはゾウやサイなども襲うと言われています。そのほか、小型の哺乳類、鳥、魚、昆虫や爬虫類まで食べるそうです。

熱帯雨林からシベリアまで広く分布

トラが暮らすのは主に森や林です。熱帯雨林やマングローブ林など熱帯アジアの森林地域に多く生息しています。そのほか、WWF(世界自然保護基金)*の専門家によれば「ウスリータイガ」と呼ばれる、広葉樹林と針葉樹林が混じるシベリアの森林にも暮らしているそうです。現在、インドで最も多くの個体が確認されており、東南アジアを中心に13か国**にいるとされています。

最大のネコ「アムールトラ」

熱帯アジアからシベリアまで、さまざまな場所に生息するトラは、住んでいる地域の環境によって体の大きさや毛の長さなどが異なります。一番大きいのが「アムールトラ(シベリアトラ)」です。オスは体重180kgくらいから300kgを超える場合もあるそうです。暮らしているのはロシアで、唯一、寒い環境に適応したトラです。中国の東北部と国境を接するあたりにアムール川が流れています。その流域の針葉樹林のほか、北朝鮮の北部にもいると言われています。現在は400頭ほどが確認されているそうです。

アムールトラ(シベリアトラ) © Shutterstock / Ondrej Prosicky / WWF-Internationalアムールトラ(シベリアトラ) © Shutterstock / Ondrej Prosicky / WWF-International

頭数が一番多い「ベンガルトラ」

最も数が多いのは「ベンガルトラ」です。インドやバングラディッシュに囲まれた海をベンガル湾と呼ぶため、主な生息域であるこの地方の名前がつけられています。マングローブの木が茂った、ガンジス川の河口に広がる湿地に住んでいます。そのほか、ネパールやブータン、ミャンマーでも確認されており、推定個体数は2500頭とされています。アムールトラよりも少し小柄ですが、それでもオスの体重は180~258kg、メスでも110~160kgあるそうです。

ベンガルトラ © WWF-Sweden / Ola Jennerstenベンガルトラ © WWF-Sweden / Ola Jennersten

東南アジアのトラは小柄

ベンガルトラよりも小柄なトラが東南アジアに住んでいます。インドシナ半島のミャンマーからベトナムにかけての熱帯林に「インドシナトラ」がいます。そこから陸続きのマレー半島には「マレートラ」が、インドネシアのスマトラ島には「スマトラトラ」が生息しています。

スマトラトラ © WWF-Indonesiaスマトラトラ © WWF-Indonesia

絶滅してしまった地域も

昔の東南アジアには、あと2種類のトラが住んでいました。インドネシアのバリ島には「バリトラ」が、同じくジャワ島には「ジャワトラ」がいました。最も小型のバリトラは、1940年代に絶滅したとされています。ジャワトラは比較的最近まで生き残っていたようですが、1980年代に絶滅したと考えられています。そのほか、ヨーロッパ寄りの中央アジアやカスピ海沿岸にいた「カスピトラ」も、1970年代を最後に目撃されていません。

また、かつては中国南部の温かい森林に生息していた「アモイトラ」も、「野生では絶滅した可能性が高い」とされています。現在ではこのアモイトラとシベリアのアムールトラ、インドのベンガルトラ、東南アジアのインドシナトラ、マレートラ、スマトラトラが生き残っています。逆に言えば、3つの生息地ではもうトラの姿を見ることができないのです。自然界には多くても4000頭ほどしか残っていないと推定され、「絶滅危惧種」に指定されています。

無敵に見えるトラが、どうしてここまで減ってしまったのでしょうか? 原因は、環境破壊と狩猟とされています。すべて人間の行いによるものなのです。次回は、そうした歴史についてご紹介します。

* 長年トラの保護に取り組んでいるWWF(世界自然保護基金)では、トラを守るためのキャンペーンを行っている
** 未確認の北朝鮮を加えると14か国

参考:IUCN Red List of Threatened Species、「これを読めばトラ博士?!絶滅危惧種トラの生態や亜種数は?」(WWFジャパン)
《石川徹》

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