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日本の両生類ペット取引に関する調査、81%がワシントン条約の規制対象外と判明…WWFジャパン

『Illuminating Amphibians: the amphibian trade in Japan(タイトル和訳:日本の両生類取引)』
  • 『Illuminating Amphibians: the amphibian trade in Japan(タイトル和訳:日本の両生類取引)』
  • 日本の両生類ペット取引に関する調査により、81%がワシントン条約の規制対象外と判明
  • 日本の両生類ペット取引に関する調査により、81%がワシントン条約の規制対象外と判明
  • シリケンイモリ/©Yuma Kanamori 、ベルツノガエル/© David Lawson_ WWF-UK、ファイアサラマンダー/© Maurizio Biancarelli_WWF、アカメアマガエル/© John Vess、グラスフロッグの一種(アマガエルモドキ科)/© André Bärtschi_WWF(左から)

野生生物のペット利用が生物多様性の脅威になっていることへの懸念が強まる中、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)とその野生生物取引監視部門であるTRAFFICは、特に絶滅のリスクが高いグループである両生類の取引について調査を実施し、結果を公開した。

近年、「ペット」として取引される動物種の、ワシントン条約附属書への追加や規制内容の強化が増えているが、両生類や爬虫類については規制が追い付いていないのが実状である。とりわけ両生類は、世界で存在が知られるおよそ8000種の40%がすでに絶滅のおそれがあるとされるが、ワシントン条約の規制対象となっているのは2%あまり。無規制に行われる国際取引の影響が強く懸念されている。

こうした懸念から、2019年の同条約第18回締約国会議(CoP18)では、両生類の国際取引や保全状況を把握するための取り組みを条約事務局や締約国が協力して実施することが、正式に決定された。この国際的な動きを踏まえ、WWFジャパンとTRAFFICでは、両生類のペット取引の実態を把握するため、2020年から2021年にかけて、最大の輸入国である米国と日本にフォーカスした2つの調査を実施。公式な統計が存在しない野生生物のペット利用について、オリジナル調査をもとに実態を明らかにした。

2021年11月に米国の輸入統計に基づく種のリスク評価報告書を発表、そして今回、日本市場と日本原産種の取引調査に関する報告書『Illuminating Amphibians: the amphibian trade in Japan(タイトル和訳:日本の両生類取引)』(英語版のみ)にまとめ、3月24日に公開した。

今回の調査報告書が明らかにしたのは、「日本への両生類の輸入」「日本での両生類の販売状況」「欧米サイトでの日本固有種の取引」の3点。

日本は2005年から2020年の間に12万9809頭、3億8400万円相当の生きた両生類を輸入。輸入量・金額ともに増加傾向にあり、輸入元地域は多様である。分析期間中の総量では米国が最大であったが、近年ヨーロッパの他、中南米、アフリカ、アジアからの輸入が拡大し、2018年から2020年はニカラグアやペルーなどが新たな輸出国として台頭していることなどから、野生個体や新たにペット取引される種を含む原産国から直接の輸入の増加が懸念される。TRAFFICが2021年11月に発表した米国の輸入統計分析では、ワシントン条約非掲載種の輸入個体数の29%が野生由来と申告されていることも明らかになっている。

販売状況については、日本の市場調査(対象期間2020年1月~2021年4月)から、少なくとも230種と25亜種(計255種・亜種)の両生類の販売を確認。うち85%(216種・亜種)が海外原産で、日本原産種は39種・亜種が確認された。(同調査は、2022年1月にサンショウウオ類26種が種の保存法で国内希少種に指定される前に実施されている)

230種のうちワシントン条約非掲載種が81%を占め、IUCNレッドリストの絶滅危機種(CR/EN/VU)は16%、近危急種(NT)もあわせると全体の4分の1に上り、無規制な取引の影響が懸念される結果となった。また、日本原産の両生類39種・亜種には、絶滅危機7種(EN/VU)、近危急種(NT)9種が含まれていた。

少なくとも1つの販売個体・広告で野生捕獲(WC)の表示が見つかった種は全体の27%(68種・亜種)。うち日本原産種が約3割(=22種。販売が確認された日本原産種の半数以上)。国内法で両生類は個体の出所についての表示義務がなく、実際の野生個体の利用はさらに多いことが予想される。

今回の調査対象29種のうち、シリケンイモリ、アカハライモリ、イボイモリの3種が欧米サイトで取引を示す投稿が確認された。この他、サンショウウオ属(Hynobius spp.)7種とツクバハコネサンショウウオ(Onychodactylus tsukubaensis)の所持を示す投稿も確認されている。今回の対象は、国内での捕獲・取引が禁止されている種も含むため、より詳細な海外の取引状況の調査が必要である。

報告書では、これらの調査結果を受けて次の3点を提言。
1.取引により影響を受けている可能性が高い種・分類群についてワシントン条約の取引規制や生息国での保全措置の導入を検討すること
2.「消費国」としての日本は、両生類を扱う事業者の法的管理の導入(動物愛護管理法)と、eコマースを含む事業者による自主的な調達の改善に取り組むこと
3.「原産国」としての日本は、シリケンイモリの附属書II掲載ほか、取引の影響を受けている恐れがある種の国内法での保護、および海外取引状況のモニタリングの実施を検討すること

WWFジャパンとTRAFFICは、今年11月にパナマで開催されるワシントン条約CoP19に向け、関係国・機関に対策や対応を求めるとともに、日本国内の対策を後押していくとしている。

《鈴木まゆこ》

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