誠文堂新光社は、12月7日に『日本のサンショウウオ』を刊行する。
1年の半分以上をフィールドでの生物撮影に取り組む、著者・川添宣広氏は、日本のサンショウウオを全種撮影することに成功した。同書は、特別天然記念物のオオサンショウウオはもちろん、その他、目にすることの少ないサンショウウオを網羅した、唯一無二の書籍である。
日本は世界的に見るとサンショウウオの聖地とも言える国で、新たな分類や種類について各国の研究者や愛好家に注目されているという。サンショウウオは、日本独特の豊富かつきれいな水と険しい山々から滲み出す清水を象徴する生き物だが、彼らの姿はほとんど知られていない。
「山の中にある小さな宝石を探すのと同程度にサンショウウオを見つけるのは困難」と言われており、探しに行っても出会えるチャンスは多くない。生態や生活史が不明な点も多く、ベテラン愛好家や研究者でも難しいとされている。
同書では、日本のサンショウウオの全種写真だけでなく、観察・撮影してきたエピソードを博物誌も交えつつ紹介。一部の地域では現在も山深い集落の貴重なタンパク源としてハコネサンショウウオが食用にされていたり(福島県檜枝岐)、石鎚山(愛媛)の石鎚神社ではシコクハコネサンショウウオを配っていたという風習もあり、そんな人間と彼らとの関わりについても触れられている。
最新の分類に基づいた、日本に生息するサンショウウオ全種の写真を地域個体群やバリエーションと共に、可能なかぎり卵嚢や幼生・幼体・生息地写真も掲載した、資料的価値も高い1冊となっている。