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国内初のツシマヤマネコの人工授精に遺伝子検査で協力…アニコム

アニコムグループ、国内初のツシマヤマネコの人工授精に遺伝子検査で協力
  • アニコムグループ、国内初のツシマヤマネコの人工授精に遺伝子検査で協力
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アニコム ホールディングスのグループ会社であるアニコム損害保険およびアニコム先進医療は、2021年3月に国内初となるツシマヤマネコの人工授精に成功した横浜市立よこはま動物園(神奈川県横浜市、愛称:ズーラシア)の研究に、グループが保有する遺伝子検査技術を用いて協力。この度、その研究をまとめた論文が学術誌「Animals」に掲載された。

長崎県対馬に生息する希少野生動物種ツシマヤマネコの人工授精は、環境省が実施する「ツシマヤマネコ保護増殖事業」に基づき、よこはま動物園がアニコムグループ各社のほか環境省やツシマヤマネコを飼育する動物園・北海道大学獣医学研究院繁殖学教室・岐阜大学応用生物科学部動物繁殖学研究室の協力を得て研究を進めており、2021年3月18日に国内で初めて同種の赤ちゃんが誕生した。

同園では、ホルモン剤で卵巣の状態を受精に適した状態にコントロールした上で、腹腔鏡を使って精子を卵管内に直接注入する「腹腔鏡下卵管内人工授精」という方法で人工授精を実施。ネコ科動物の多くは、その生理学的、解剖学的特徴等から動物園で飼育されている動物の中でも人工繁殖が最も難しい部類といえるが、今回の成功により、この手法がツシマヤマネコの人工繁殖に有用である可能性を示すとともに、他の小型ネコ科動物にも応用できる可能性を示した。

今回成功したツシマヤマネコの人工授精においては、2頭のオスのツシマヤマネコの精子が使用されたが、ツシマヤマネコの遺伝的多様性の低さによって、一般的に使用される遺伝子配列を対象とした検査では父親の特定ができなかった。そこで同社が保有する先端的な遺伝子分析設備・技術を用いてゲノム全域を詳細に解析。それにより、精子を使用した2頭のオスのうちどちらが父親かを特定することが可能となった。

ツシマヤマネコの野生下の生息数は現在、100頭弱とされており、絶滅危惧種に指定されている。種の絶滅を回避するためには、繁殖において近交弱勢(近親交配による遺伝的劣化)を防ぎ、遺伝的多様性を保全することが重要とされている。そのため同研究においても、新たに生まれたツシマヤマネコの赤ちゃんの父親を特定し、個体の血縁関係を記録することが必要とされていた。

アニコムグループは、「この度の研究成果を大変喜ばしく思うとともに、今後も同様の事例に際して今回の成果を活用し、本種の国内の保護事業にも貢献していきたい」とコメントしている。

原論文情報:「A, Azumano. M, Ueda. M, Nomura. M, Usui. M, Ichinose. Y, Yanagawa. S, Kusuda. Y, Matsumoto. K, Murata. (2022). Successful laparoscopic oviductal artificial insemination in the endangered Tsushima leopard cat (Prionailurus bengalensis euptilurus). Animals 2022, 12, 777.」
《鈴木まゆこ》

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