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海が教えるSDGs、釣って食べて学ぶ「うみファーム」…八景島シーパラダイス

八景島シーパラダイス「うみファーム」
  • 八景島シーパラダイス「うみファーム」
  • 桟橋の上からいけすの魚を釣ることができる「フィッシャーマンズオアシス」
  • フィッシャーマンズオアシスで釣ったマダイ
  • 八景島シーパラダイス「うみファーム」
  • フィッシャーマンズオアシス
  • フィッシャーマンズオアシスで釣ったアジ
  • フィッシャーマンズオアシス
  • おさかなマルシェ

7月10日、八景島シーパラダイス(横浜市)の「うみファーム」がリニューアルオープンした。コンセプトは「海育」という聞きなれない言葉だが、海に面した水族館・レジャー施設という特性を生かしたSDGsの取り組みだ。

海洋汚染や海洋資源について考える

「うみファーム」は2013年にオープンした、海釣り体験や周辺の生き物を観察する体験型の施設。海に囲まれた島というロケーションを生かしたスポットだ。リニューアルのポイントは、体験型のアトラクションにSDGsにつながる要素を取り入れた点。「海育」とは、海で学び、海に教えてもらうということだ。

そのキーワードに「食」がある。水産庁によれば*、日本の魚介類の1人当たりの消費量は、2001年度の40.2kgをピークに年々減少しており、2017年度には24.4kgまで落ち込んでいる。また、年代別で見てみると、40代以下の年齢層の魚介類の消費量が低くなっている。若い世代ほど魚を食べない傾向があるといい、海洋国家であり海の幸が豊富なはずの日本で魚離れが進んでいるのだ。

その理由として、骨がある、生臭い、食べ方がわからない、捌き方がわからないといった点があげられる。さらに、今の子どもたちは釣りや自然の中で泳ぐなどの海や魚と触れる機会が減少している。テレビやネットで見る生きた魚と、回転寿司やスーパーの魚は別のもので、認識がつながっていない可能性があるのだ。

釣った魚をその場で食べるという意味

設備が改装された「フィッシャーマンズオアシス」は、桟橋の上からいけすの魚(アジ・マダイ・季節の魚)を自分で釣ることができる。釣り堀ではないので、釣った魚は現地で捌いて食べなければならない。捌いたり調理したりは、これもリニューアルされた「うみファームキッチン」でやってくれるので、来場者は釣って食べるだけだが、魚を捌く様子はガラス越しに見えるようになっている。

釣った魚がその場で解体される様子を見るわけだが、これは普段の食事では省略されている部分で、生き物を食べるという意味を考えるきっかけとなる。マダイが釣れると1匹まるごとグリルにしてくれる。一人で食べるにはちょっと多いが、釣りたて新鮮なので美味しく、自分で釣った魚だと思うと意外と完食できたりする。完食できなくても、資源保護やフードロスに意識が向くことも重要だ。

フィッシャーマンズオアシスで釣った魚はリリース禁止なので、「食べられる分だけ釣ってほしい」とのこと。新設された「おさかなマルシェ」では、大きさが不揃いだったり、漁獲量が安定しない、調理に手間がかかるといった理由で市場に出回らない魚を漁師から直接仕入れて販売しており、こちらもうみファームキッチンで食べられる。

リアルな東京湾の生態が学べるマリンビオトープ

「マリンビオトープ」も新設されたエリアだ。浅瀬を模したいけすに周辺の生き物が放流されている。タッチプールもあり、中に入って浅瀬の生き物と遊ぶことができる。荷物を置いたり休憩できる椅子もあるので、小さい子どものいる家族で楽しむのによい。

「オーシャンラボ」は東京湾の生き物や海洋問題に関する展示が見られる。桟橋上にくらげの水槽、漂流ゴミやマイクロプラスティック問題に関する展示が行われている。オーシャンラボ研究員によるガイドツアー「東京湾ワンダーウォッチャーズ」に参加すれば、これらの詳しい解説が聞けたり、質問に答えてもらうことができる。

ラボには魚を捕獲する罠も仕掛けられている。ツアーに参加して運がよければ、その日に捕まった周辺の生き物が見られるという。魚はアジ、フグ、たまにメバルなどが入っており、魚以外ではカニもよく入るそうだ。

取材した日は、たまたま赤潮が発生しており、うみファーム周辺の海は赤黒く濁っていた。赤潮はプランクトンの大量発生で海が赤くなる減少だ。生活排水や工業廃水によるリンや窒素など有機物がプランクトンの栄養となり増殖する。プランクトンは魚のえさだが、あまり大量になると海面と空気が遮断されたり、エラにプランクトンがつまったりして魚の死につながる。

当日の赤潮は魚が浮かぶほどではなかったが、リアルな自然や海洋問題に接した瞬間でもある。「うみファーム」の展示を見たり体験をすると、普段はなにげなく楽しんでいる水族館、湾岸エリアを違った目で見ることができるだろう。

*水産庁「水産白書」第1部 第2章 第4節 水産物消費の状況(2018)、第1章 特集2 子どもを通じて見える日本の食卓(2008)

《中尾真二》

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