迷子や輸血が必要な犬に関する情報拡散のサポートを行い、“愛犬家同士の助け合い”によって解決につなげる活動に取り組んでいる「迷子犬の掲示板」。インスタグラム、ツイッターとフェイスブック、3種類のデジタルプラットフォームを駆使し、合計のフォロワー数は全国で11万人を超える。この迷子犬の掲示板が、新しい取り組みを始めた。
距離を置きたい愛犬のための黄色いリボン
「すべてのワンちゃんと飼い主さんが、平和に楽しくお散歩できる社会になりますように」という願いで始まったのが、「YELLOW RIBBON DOG(イエローリボンドッグ)」。一般的に人懐っこい印象がある犬たちだが、人間同様にその性格は様々だ。知らない人や犬に対しては警戒心が強く、怖がったり興奮したりしてしまう犬も少なくない。病気療養中やトレーニング中の場合は、交流が望ましくない場合もある。
「そっとしておいてね」の理由が分かりやすく説明されているカード
とは言え、初対面の相手に事情を説明するのは難しい場合が多い。そこで、黄色のリボンをリードや愛犬に付けておくことで、「そっとしておいてほしい」というメッセージを伝える試みを始めた。同様の活動は、黄色いリボンやバンダナを犬につける「YELLOW DOG PROJECT(以下、イエロードッグ)」としてヨーロッパで始まったと言われている。
日本でも一部では知られているが、認知度は高くない。逆に、「かわいいおリボンね」と声を掛けられる悩みもあると言う。「やっぱり、みんなに知ってもらわなきゃ」と、イエロードッグを参考に今年の6月から本格的な活動が始まった。
ボランティアスタッフによる認知向上への取り組み
メンバーの有志が迷子犬の掲示板のネットワークを活用して、「黄色いリボンのわんちゃん」を広く知ってもらうための活動に取り組んでいる。リボンのほか、インパクトのある「はなれていてね!」のメッセージつき缶バッジやカード、ポップなどを作成しドッグカフェや動物病院などに配布している。
こうしたアイテムの制作費や活動経費などは、寄付やウェブショップで販売するTシャツやステッカー、トートバッグなどのグッズの売り上げでまかなっており、その他はすべてスタッフの「持ちだし」だそうだ。
きっかけはお友だちの悩み
代表を務める木崎亜紀さんは、イエローリボンドッグを始めたきっかけを以下の様に語る。
「お友だちの黒プー(黒のトイプードル)が“イエローリボンドッグ”なんです。他の犬を見ると、飼い主さんの肩によじ登って逃げてしまいます。その様子は可愛いのですが、(そのコが)かわいそうで…。黄色いリボンをつけても、まったく理解されないということでした。この活動を始めると、苦労している方が大勢いらして驚きました」
目立つ缶バッジと誰にも分かりやすいカード
愛犬が「イエローリボンドッグ」で悩む飼い主は少なくないだろう。解決には認知度の向上が鍵を握る。鮮やかな黄色の缶バッジはかなり目立つ。現状では、他の飼い主から声を掛けられる場合もあると思われるが、木崎さんは「現段階では、聞いてもらえばしめたものです」と言う。そんな時のために、名刺サイズのカードを用意し、誰でも簡単に分かりやすく説明できる工夫もしている。
「マタニティーマーク」くらい認知されるように
地道な口コミもこうした活動には重要だろう。SNSだけでなく、飼い主同士の直接的な触れ合いにも注目するところに、愛犬家ならではの視点が感じられる。イエローリボンの黄色い缶バッジが、「おなかに赤ちゃんがいます」のマークと同じくらい社会に知られることを、迷子犬の掲示板は目標にしている。
愛犬家の思いから始まった活動が大きな動きに
2015年10月に一人の愛犬家として木崎さんが始めた迷子犬の掲示板だが、思いが思いを呼んで急成長。今年2月には特定非営利活動法人(NPO)に認可された。現在のフォロワー数は全プラットフォーム合計で11万人を超え、ボランティアスタッフも44名が全国で活躍している。
エネルギーの源は、純粋に犬たちの幸せを願うスタッフ全員の思いのようだ。だからこそ、「あったらいいな」というアイディアが次々と形になっているのだろう。