今年2月、小学館集英社プロダクションより刊行されたノンフィクション書籍『その犬の名を誰も知らない』の5刷重版が決定した。
同書は、1957年の第一次南極越冬隊に「犬係」として参加し、帰国1年後の第三次越冬隊でタロジロと再会を果たした唯一の隊員である北村泰一氏の証言をもとに書き下ろされたノンフィクション。
1957年から1958年にかけて、国家プロジェクトとして実施された第一次南極観測越冬。11人の越冬隊員とともに、19頭のカラフト犬が、犬ゾリを引くために海を渡り、南極・昭和基地で1年を過ごした。しかし、帰国の日、予期せぬトラブルにより、15頭の犬たちは鎖に繋がれたまま、極寒の南極に置き去りにされてしまう。
誰もが犬たちの生存を絶望視したが、1年後、タロ、ジロという2匹の兄弟犬が生きて隊員と再会を果たした。この出来事は「タロジロの奇跡」として、『南極物語』という映画にもなっている。
タロジロと感動の再会を果たした北村氏は、それから23年後、驚愕の事実を知らされる。それは、タロジロの再会から9年後に、昭和基地で1頭のカラフト犬が発見されていた、という事実。この“第三の犬”の存在を知った北村氏は、元新聞記者の著者の協力を得て、犬の正体の解明に挑む。
解明を進めていくことで、長年謎とされていたタロジロの奇跡の生還も、謎を解く鍵は“第三の犬”の存在にあることがわかっていく。
60年の時を超えて謎が解き明かされた時、誇り高き犬たちの生き様に涙せずにはいられない感動の1冊となっているという。