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“エアコンつければ大丈夫”は誤解…真夏の車内にペットを残す危険性と対策

真夏の車内にペットを残す危険と対策(イメージ)《画像 iStock》
  • 真夏の車内にペットを残す危険と対策(イメージ)《画像 iStock》
  • ドライブ中はペットの水分補給を忘れずに(イメージ)《写真 PhotoAC》
  • ペットの熱中症に関する注意喚起チラシ《出典 環境省ホームページ(http://www.env.go.jp/press/109590.html)》

梅雨明けの便りも聞かれるようになった。本格的な夏がやってくると同時に、熱中症への備えも欠かせなくなる。それは人間に限ったことではなく、犬や猫といったペットも同様。特に注意したいのは車の中だ。

環境省は今年5月、自動車内にペットを残すことによる熱中症の危険性について訴えるチラシを作成し公開した。炎天下の車内温度の高さや暑さに弱い動物の特性を伝え、注意喚起を行っている。

実際にどのようなケースや問題があるのか。日本自動車連盟(JAF)に話を聞いた。

エアコンがあるからと安心するのはNG

やってはいけないのはペットを残して車を離れること。エンジンをかけてエアコンを効かせれば問題ないというのは誤りだ。そもそも、エンジンかけたままドライバーが車から離れること自体が違法である。道路交通法では、車を止めて離れるときの処理が規定されている。車を離れるときは、エンジンを止め、パーキングブレーキをかけて「停止状態を保つための措置」を講じなければならない。

つまり、「ちょっとした買い物で15分もかからないしエンジンを切るとエアコンも切れるのでかけっぱなしでもいいだろう」と、コンビニの駐車場などでこれを行うと道路交通法違反となる。当然、店内に連れていけないからとペットや子どもをエンジン(エアコン)をかけたままの車に残すのも違法だ。

ちなみに、無駄なアイドリングは騒音や排気ガスの元でありマナー違反でもある。トラックなどが荷待ち、時間調整、荷物の集配で路肩や駐車場でアイドリング状態のままにすることは社会問題にもなっている。トラックとしては夏冬、エアコンを効かせず車内で仮眠または待機するのはつらいという事情はあるが、騒音、排気ガス、あるいは盗難(宅配トラックの集配中の盗難事件は少なくない)といった問題も発生。運送トラックの場合、騒音や排気ガス対策のためエンジンとは別系統の空調装置の設置に補助金を出しているくらいだ。

真夏の車内温度は50度以上にも

話をペットに戻そう。実際にあった救援依頼についてJAF広報部に聞いてみたところ、短い買い物だからと車内に鍵とペットを残し、ペットが集中ドアロックボタンを押してしまうというトラブルが起きているという。2019年8月1日~8月31日の期間でJAFが出動した「キー閉じこみ」の救援のうち、ペットが車内に残されたままのケースは全国で29件発生していた。同様のトラブルは乳幼児を車内に残した場合も発生している。緊急性が高いと判断された場合は、通常の開錠作業ではなくドアガラスを割るなどして救出を行うそうだ。

エアコンを作動させていたとしてもエアコンのスイッチをOFFにしてしまう可能性もある。この場合、エンジンがかかったまま閉じ込められてしまうことになり、夏場としては最悪のパターンになる。JAFのテストによれば、真夏の日中、外気温35度のとき車内温度は最高で55度まで上昇したという。ダッシュボードやハンドルなど場所によっては60度以上にもなる。フロントガラスにサンシェードをしていても、直射日光をさえぎるだけで温度上昇を抑える効果はほとんど期待できないそうだ。

たとえ短時間でも車内に残さない

JAFに報告される車内へのペットの閉じ込めや熱中症のトラブルは、犬がほとんどだという。全身を体毛で覆われた犬(他の動物もそうだが)は、汗腺がほとんどなく足の裏など一部でしか汗をかけない。もっぱら呼吸で体内の温度を下げるしかないので、高温に対する体温調整が苦手だ。熱中症は動物にとっても侮れないリスクなのだ。

車の中での熱中症や高温に対して、ペットは自分で対策を講じることはできない。飼い主が責任をもって対処する必要がある。それは、エアコンを効かせるのではなく「たとえ短時間でも車内に残さない」ことに尽きるだろう。日陰ならOK、エアコンを入れればOKという誤解と安心(油断)が事故につながるという認識を持つことが重要だ。

なお、街中で閉じ込めと思われる状況に遭遇したらどうすればいいだろうか。JAFによれば、「危険な状況と判断した場合は、すみやかに119番に通報し、必要ならJAFにも救援を要請してほしい」とのことだ。

《中尾真二》

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