前回までリチャードソンジリスについてお話しさせていただきました。
【リチャードソンジリス日記 vol.1】キュートな2匹との出会い…飼い方や特徴を紹介![動画]
今回からは新連載です。主人公は我が家の愛犬「キュウ」。この鼻の上を掻いてもらって気持ち良さげにしている、なんだか情けない格好の柴犬がキュウです。
実はキュウは、この半年ほど前まで山野を彷徨う野良犬でした。当時のキュウは、触るもの皆傷つけるギザギザハート....だったどうかはわかりませんが、出会った時の姿を考えると過酷な流浪の旅をしていたことは想像に難くありません。
第1回はキュウとの運命的な出会いから家族の一員になるまでのお話です。
運命の日、キュウとの遭遇
運命の日は2018年11月4日。夕刻、街から訪ねてきた知人を見送るため玄関先に出た私は1匹の四足動物が敷地内に入ってくるのを目にしました。我が家は入り口から玄関先まで少し距離があります。遠目にこちらをうかがうその茶色く細い体の動物を、始めはキツネだと思いました。
しかし近寄ってよく見ると、キツネと見間違えたその動物は骨が浮かんで見えるほどに痩せ細った柴犬だったのです。一見して野良犬だとわかる風貌の雌犬。体はところどころ黒く汚れ毛並みはひどく荒れていました。その犬こそがキュウだったのです。
久しぶりの食事にありついた野良犬
私の住んでいる山間部では野犬を見ることはありません。きっと誰かが捨てた犬です。警戒している様子はありましたが人に慣れている感じがしました。あまりに痩せこけた姿を見兼ねて、小動物用の餌をあげるとあっと言う間に平らげました。余程お腹を空かせていたのでしょう。結局その餌を全て食べてしまいました。
その犬はお腹が膨れ一息ついてから、我が家の敷地内を徘徊し始めました。近くまで来て匂いを嗅いだりしますが、こちらから手を出すと後ずさり。まだ気を許してくれてはいないようです。暗くなり始めたので私は家族と共に自宅に入りました。しかし夜になっても気掛かりで何度も外を覗きました。
「あのワンちゃんまだいるかな」
陽が落ちると外は真っ暗で何も見えません。
我が家に居心地の良さを感じてくれた?
朝になって外に出てみるとあの柴犬はまだそこにいました。昨夜は玄関前にある花壇で休んだようです。夜露で毛が濡れていました。私が顔を出すと、丸くしていた体を起こしこちらをうかがいます。ドッグフードを買ってきて食べさせてあげました。立ち去らずにいてくれたことが嬉しくて、その後も自然と世話をするようになりました。
我が家に居心地の良さを感じてくれたのでしょうか。柴犬の方も庭を走り回ったり周辺の畑や田んぼに行ったりしますが、いつも私達の目の届く範囲にいてくれました。初めは触られるのを怖がっていましたが日を重ねるごとに子供達にも慣れていきました。
そのうちに私や子供達が名前を呼ぶと、走って傍に来るようになりました。その時はまだ名前もなくガリガリの体にちなんで「ガリ」と呼んでいました。今考えると少し可哀想…。それから数日が経ちましたが、ガリが我が家を立ち去る様子はありません。
すでに愛着が湧いていた私達は、もし飼い主が見つからなかったらガリを引き取ろうと決心しました。世話をしている人がいると分かるように首輪も付けてあげました。
野良犬からガリに、そして行政手続き
まずはガリを連れて警察署に行きました。犬の保護を届け出るためです。そこで警察の方に、飼い主が現れなかった場合は引き取る意思があることを伝えました。そして今後の手続きについて説明を受けました。その日から3か月間の間、飼い主が現れなければガリを引き取ることができます。
同じ様に保健所にも連絡。保健所は「飼い主を待つ間は保健所が犬を保護する」と連れていこうとしました。私達はガリの受け渡しを拒否。もちろん、本当の飼い主が現れればガリを返すつもりでした。ですが、それまでは我が家で世話をしてあげたかったのです。
それに私にはなんとなく「飼い主は現れないだろう」という確信めいたものがありました。
ガリがキュウになった日
それから私達はインターネットや近所の犬仲間を頼りに、犬の飼い方を勉強しました。まずは動物病院。獣医の先生にこれまでの事情を説明し、必要な措置をしてもらいました。幸い健康状態、寄生虫の検査などに問題はありませんでした。シャンプーと歯磨きをしてもらい見違えるほどさっぱりしたガリ。意外と凛々しい顔をしています。
期待と不安に胸を膨らませながらの3ヶ月でした。思った通り飼い主は現れませんでした。私達はガリに新しい名前を付けることにし、「キュウ」と名付けました。保護の届け出をした日からちょうど3ヶ月目の朝、私は改めてキュウを連れて警察署を訪れました。今度はキュウを飼い犬として登録するためです。これでキュウは晴れて私達の家族の一員となったのです。
キュウはもう家族の一員
我が家には小さい子供がいます。なので最初は野良だった犬を飼うことに躊躇う気持ちもありました。ですがキュウは子供たちにいたずらされても怒ったりしません。とても優しい家族向けの犬です。獣医の先生の見立てではキュウの年齢は4~5歳。遊びたがりで実際にはもっと幼く感じます。いまでは昼間は外で番犬として、夜は家の中で家族と団欒して過ごしています。
もしキュウが庭に入って来た時に私が外に出ていなければ、キュウは今も流浪の旅を続けていたかもしれません。キュウが来たのは初冬の時期。あのまま彷徨い続けていては冬を越せなかったでしょう。きっとこの出会いは運命だったのです。
もう二度とキュウが野良犬に戻ることはありません。長い旅の末に辿り着いたここを安住の地と感じてくれているはずです。
柴犬キュウの物語の連載第二回が公開されました。
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