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【動物に会える映画 vol.3】素晴らしい演技をした犬に贈られる「パルム・ドッグ」受賞作品 3選

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『カールじいさんの空飛ぶ家』
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映画界には、素晴らしい演技を披露してる犬たちを讃えるための賞があります。フランス南部の、避暑地として名高いコート・ダジュール沿いにある街で毎年5月に開催されているカンヌ国際映画祭。そこで授与される賞のひとつ「パルム・ドッグ」です。

コンペティション部門の最高賞「パルム・ドール」に由来する名前で、ユーモアセンス抜群ですよね。単なるおふざけかと勘違いする人もいるかもしれませんが、みな真剣。映画祭自体は1946年にスタートし、ベルリン、ヴェネツィアのフィルムフェスティバルとともに、世界三大映画祭と称される由緒正しいイベントです。権威ある映画祭のなかで2001年に設立された最も新しい賞ですが、映画ファンや動物好きにはすっかりお馴染みとなりました。今回は、受賞犬の出演した作品をご紹介します。

『カールじいさんの空飛ぶ家』

『カールじいさんの空飛ぶ家』

2020 Disney/Pixar

カンヌ国際映画祭「パルム・ドッグ」の本拠地フランスといえば、愛犬家が多いことでも知られる国。旅行で訪れた際には、街中にはもちろん、カフェや高級レストラン、公共の交通機関にまで、当たり前のように犬が人に寄り添っていました。犬はきちんと訓練されていてお行儀がすこぶる良い。それも人と犬との幸せな共存のため。そんな国ですから、犬にも称賛をという動きがあったのも不思議ではありませんよね。

確かに、映画には犬が当たり前のように登場しますが、驚くべきは、「パルム・ドッグ」のノミニーとして実在の犬だけでなく、アニメーションの犬も審査対象となっていること。実際に2009年には、ピクサー社のアニメーション映画『カールじいさんの空飛ぶ家』に登場した人間の言葉をしゃべる犬「ダグ」が見事受賞を果たしました。

最愛の妻エリーを亡くしたカールが、いつか二人で行こうと約束していた伝説の地、南アメリカの“パラダイスの滝”へと向かう冒険心と夫婦愛に溢れた物語。動物園で風船売りをしていたカールは、妻と過ごした大切な家に風船をつけて飛んでいくのですが、押しつけがましいボーイスカウトの少年ラッセルもうっかり道連れに。そんな二人を目的地で迎えたのが「ダグ」でした。「ダグ」は伝説の冒険家でこの地に住むマンツ率いる犬集団のうちの一匹。大勢の犬とともに人語への翻訳機がついた首輪をはめられています。多くの犬がご主人様に言われるがまま、カール&ラッセルと敵対関係になってしまう中で、「ダグ」だけは、心のままにカールとラッセルを応援。犬らしいひたむきさと無邪気さを称賛したくなるのです。“演技”という意味では、ほかの犬たちもお見事です。「話す」という人間っぽさと、思わずリスやボールを追いかけたくなる犬らしい野性とが、混在していて笑いを誘います。彼らの演技にもご注目を。

また、彼がカールじいさんやラッセルと出会う直前の物語は『ダグの特別な一日』という5分の短編作品にまとめられています。こちらもディズニープラスで配信されていますので、ぜひ。本編終了後に観てみてください。

『アーティスト』

『アーティスト』

(c)La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Américaine - JD Prod - France 3 Cinéma - Jouror Productions - uFilm

アート色、作家性が強い作品を多く招待するカンヌ国際映画祭。商業性よりも芸術性を重んじるフランスらしいセレクションは、世界中の映画ファンからも毎年注目されています。そんな映画祭だけに独創的な作品が好まれるのですが、2011年の受賞犬を送り出したのもとても個性的な一作でした。モノクロサイレント映画『アーティスト』です。

最近の作品なのにモノクロでサイレントなのですから、大いに話題となりました。映画の歴史に敬意を表し、大転換期当時の空気を映し出しつつ、切なくも美しいドラマを完成させています。舞台は、映画がモノクロ&サイレントからトーキーへと移行する1927年のエンタテインメント界。時代に取り残されスターの座から転落した男ジョージと、トップスターへと昇り詰める女ペピーの恋が描かれていきます。そんな中、誰にも見向きもされなくなるサイレント俳優に寄り添い続けたのが、愛犬ジャック。演じたのはジャックラッセルの「アギー」です。犬は決して裏切らない。犬が愛され続けるそんな理由を体現したかのような姿に、観客たちは涙したのでした。去る5月22日には、歴代の受賞犬の中でトップとなる「パルム・ドッグの中のパルム・ドッグ賞」にアギーが選ばれたとの発表が。すでに他界したアギーに代わり、友達犬が名誉の首輪を受け取っています。

ジャックラッセルといえば、映画『マスク』で有名になりましたが、としても賢いことでも知られていて、映画界でもひっぱりだこ。彼らの愛らしい姿が見られる作品は、改めてご紹介したいと思います。

『パターソン』

『パターソン』

(c)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

最後は、米国ニュージャージー州のパターソンという街に住む、パターソンという名の男の日常を描いた私的かつ誌的な物語『パターソン』です。

バスの運転手をしている彼の日常は、同じ時間に起き、妻にキスをし、朝食を食べ、仕事に向かい、乗務をこなし、帰宅し、夕食を食べ、愛犬と散歩し、途中でバーに寄って1杯だけ飲んで帰宅する、その繰り返し。特に何も起きない物語のように思えますが、詩人でもある彼は、退屈とも思える日々の中の、ちょっとした変化に美や面白みを見出し、静かにそれらを堪能するのです。そんな彼の愛犬役を演じているのが、2016年「パルム・ドッグ」受賞の元救助犬のイングリッシュ・ブルドッグ「ネリー」(愛らしい表情はぜひ本編で!)。

犬との暮らし、とりわけ犬との散歩は、まさにルーティーンの象徴といえるでしょう。読者の中にも、散歩の途中で季節や世の移り変わりを感じている方がいるはず。変わりない習慣こそが、小さくても愛おしい変化を見出すきっかけとなり、平凡だけれどかけがえのない幸せを感じる指標となるのかもしれません。実のところ、ここ数か月にわたり、私たちは「平凡」の豊かさを痛感しています。日常の中にある極上の幸せを知った者にとって、本作は「何も起きない物語」以上の特別な意味を持つ作品となることでしょう。

今年はどんな犬が受賞するのか?

実は、自分の作品に出演した犬の「パルム・ドッグ」受賞を目論む監督もいるようで、「ブランディ」という名のピットブルが昨年受賞した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のクエンティン・タランティーノ監督は、堂々と「狙っていた」と語っています。熾烈な賞レースの中の、楽しいお祭り騒ぎ「パルム・ドッグ」。今年の映画祭開催は新型コロナウイルスの影響で延期を余儀なくされ、「6月末から7月の初旬に実施」とのアナウンスがありました。今年は、どんな犬が名誉の首輪を授与されるのか、今から発表が楽しみです。

■『カールじいさんの空飛ぶ家』
ディズニープラスで配信中
2020 Disney/Pixar

■『アーティスト』
発売中
ブルーレイ:2,000円(税込)
DVD:1,143円(税込)
発売・販売元:ギャガ

■『パターソン』
Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray:4,800円+税
DVD:3,800円+税
提供:バップ、ロングライド
発売元・販売元:バップ
(c)2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

《牧口じゅん》

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