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【“危険な犬種”は存在するか? vol.1】犬による咬傷事故のケース

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今年5月上旬、静岡県東伊豆町で警察官が犬にかまれ全治8日の怪我を負った。当時は外出自粛期間中だったが、海岸沿いの広場で約30名がバーベキューを行っていたため周辺住民からの苦情により駆け付けたという。

産経新聞(5月12日)などの報道によると、警察官をかんだのは「4歳のピットブル」とされ、リードなどで繋がれず「放し飼い」状態だったそうだ。このシリーズでは、こうした犬の事故に関して考えたい。

犬による事故は年間4000件

環境省のデータによると、2016年度に発生した犬による咬傷(こうしょう = 動物にかまれた傷)事故は約4300件にのぼる。そのうち、野犬などによるものは少なく、9割以上が飼い犬によるもの。同年には5名が亡くなり、「人以外」(犬などの動物であると思われる)の死亡は32と記録されている。

昭和49年度分から公表されているデータによると、ピークは昭和56~57(1981~1982)年度で1万4000件以上にのぼる。その後は減少に転じ、2008年度には年間5000件を割っている。ただし、データが公表されている2016年までを見ると、最近でも年間4000件以上の咬傷事故が発生していた。

同時期に発生したピットブルの事故

同じ5月には千葉県でも、「アメリカン・ピット・ブル・テリアの雄1匹(体長約1メートル)」(千葉日報7月6日)が近所に住む女性に全治約40日の怪我を負わせた。また、女性が抱いていたトイプードルは亡くなったそうだ。このケースもピットブルはリードで繋がれておらず、飼い主が玄関ドアを開けた際に外に出たとのことである。

痛ましい死亡事故も発生

2014年には、当時59歳の女性が海岸を散歩中にノーリードの土佐犬に襲われて転倒。それが原因で溺死するという痛ましい事件が発生している。このほか、今年3月には富山県で生後11か月の男の子が飼い犬のグレートデーン2頭にかまれて死亡したほか、2017年にも八王子市の祖父母宅にいた生後10か月の女の子が「ゴールデンレトリーバー(4歳オス、体重約37キロ)」(朝日新聞2017年3月10日)にかまれて亡くなった。

危険な犬種?

こうした事故が報道されると、様々な意見が出てくる。今年7月に掲載されたネット上のニュースでは、千葉の事件を受けて「ヤバい犬」や「凶暴な犬種」としてアメリカン・ピット・ブル・テリア(ピットブル)、土佐犬、チャウチャウやアラスカン・マラミュートなどが紹介された。人が作り出した犬種の中には凶暴性があるものもおり、飼い主は体格や体力なども含めて犬の特性を理解し、丁寧に世話をすることが必要かつ「リードは常識」と訴えている。

確かに状況の違いはあるが、例として挙げた事故は全てノーリードのケースだ。土佐犬の例でも分かるように、大型犬の場合はかまれなくても怪我や死亡につながるリスクがある。一方で、「凶暴でヤバい犬種」という表現については疑問を感じる。

大型犬種であるグレートデーンは、オスの体高が80センチ以上で最大の犬とされるが、「友好的で、優しく、飼い主とりわけ子供に対して献身的」とも言われている(ジャパンケネルクラブ監修・インターズー刊『最新犬種図鑑』2017)。また八王子のケースでは、一般的には温厚な性格として知られるゴールデンレトリーバーが事故に関わっている。

次回は、ピットブルが人気のアメリカにおける法規制について紹介したい。

■「“危険な犬種”は存在するか?」記事一覧はこちら

《石川徹》

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