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小鳥が種を認知する基準は環境によって変わる…国立科学博物館が実証

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国立科学博物館、小鳥が種を認知する基準は環境によって変わることを実証
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国立科学博物館の濱尾章二氏(動物研究部脊椎動物研究グループ長)は、シジュウカラがいる地域のヤマガラはどのような音声を自種のものと認知するかの基準が厳しいこと、一方シジュウカラがいない地域のヤマガラはその基準が緩やかであることを明らかにした。この研究は、同じ種であっても環境によって種認知の基準が変わることを明快に示したもの。

生物は他種との交雑を避けるため種を認知している。種内の雄同士がなわばりを持つ多くの鳥類の雄も、自種のさえずりを正しく認知する必要がある。似たさえずりを持つ近縁の種が同じ地域に住んでいる場合、他種のさえずりを自種のものと誤ってとらえてしまうと、不必要な追い払い行動に出かけたりなわばりの巡視を行ったりして、雌の獲得や子育てに使うべき時間やエネルギーを浪費してしまう。したがってこのような場合、どのような音声を自種のさえずりと認知するかの基準は厳しい方が適応的なはずである。

逆に、さえずりの似た種が同じ地域に住んでいない場合は、似かよったさえずりは自種のものととらえるように、自種のさえずりを認知する基準は緩やかな方がよいはずだ。自種のさえずりをそれと認知しなければ、自種のライバル雄になわばりを奪われるリスクが生じてしまう。

このように、さえずりが似た他種の生息の有無は、種認知の基準に影響することが考えられる。しかし、今までは十分に研究がされておらず、さえずりの似た種が生息している地域と生息していない地域を1ヶ所ずつ、それぞれで10個体程度を調べた事例しかなかった。また、結果もまちまちなものだった。

似かよったさえずりを持つヤマガラとシジュウカラは、日本の本土では両種がともに生息しているが、南西諸島では島によっては一方が生息していない。本研究では、両種が生息する奄美大島、徳之島、沖縄島、そして九州本土(鹿児島県)と、シジュウカラがおらずヤマガラのみが生息する屋久島、種子島、トカラ列島(中之島)の合計7つの地域を調査地として利用した。そして、355個体という多くの雄の行動を調べ、シジュウカラの存在が種認知の基準に影響するかという問題に取り組んだ。

実験では、ヤマガラ雄のなわばり内でヤマガラとシジュウカラのさえずりをそれぞれ3分間ずつ再生し反応を比較。両種のさえずりの順はランダムに決め、1つ目の再生の影響が及ばないよう2つ目の再生まで10分以上間を空けた。ヤマガラの雄が再生したさえずりを自種のものととらえると、ライバルを排除しようとスピーカーに近づいてくる。その反応の強さを調べるために、スピーカーから10m以内にいた時間と最もスピーカーに近づいた時の距離を測定。そして、この2つの値から統計的に算出した指数によって反応の強度を表した。

結果を見ると、例えばシジュウカラが住んでいる沖縄島のヤマガラは、地元のヤマガラのさえずりには強く反応する一方、シジュウカラのさえずりにはほとんど反応しなかった。それに対して、シジュウカラがいないトカラ列島のヤマガラは、地元のヤマガラのさえずりにも、沖縄島のシジュウカラのさえずりにも同じ程度強く反応した。シジュウカラが住んでいる地域のヤマガラはシジュウカラを区別しているが、シジュウカラが住んでいない地域のヤマガラはシジュウカラのさえずりを区別できないことがわかった。

全ての地域の実験結果からも、シジュウカラが住んでいない島のヤマガラはシジュウカラのさえずりにも反応する傾向が見られた。シジュウカラの生息の有無の影響は統計上有意なもので、ヤマガラの種認知の基準は、さえずりの似たシジュウカラの生息の有無によって変化していることが示された。

同研究は、同じ種であっても住んでいる地域の環境によって種認知の基準が異なることを明らかにした。このことは、異なる環境の間である種の移出入が起きた場合、なわばり防衛や繁殖活動を効果的に行うことができない可能性があることを示している。

南西諸島で近年新たにモズやウグイスが住むようになった島が知られているように、鳥類では地球温暖化や迷行によって分布の変化がしばしば起こる。シジュウカラのいない島のヤマガラが、シジュウカラのいる島に移入したり、シジュウカラが今まで生息していなかった(ヤマガラの住む)島に分布を広げたりした場合、種認知を正しく行えないことが集団の今後に影響する可能性がる。

今後、このような移入が起きた場合に時宜をとらえた調査を行うことや数学モデルを使った予測によって、これらの課題が解明されることが期待されるという。
《鈴木まゆこ》

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