前回は、犬の特性は犬種ではなく「血筋」で大きく違うという話を、犬のブリーディングやトレーニングなどに長年携わっている「TERRIER'S(テリアス)」のオーナー、早河清五氏に聞いた。私たち一般の飼い主は、家族として新たに犬を迎えるにあたってどのようなポイントを意識しておくと良いのだろうか。
自分に向いている犬を考えて選び、適切なトレーニングを
----:前回「血筋」による犬の特性についてうかがいました。ただ、そういった血筋の見極めが素人には難しいように思うのですが、一般の飼い主が子犬を迎える際、何に注意したらよいでしょうか。
早河清五氏(以下敬称略):誰から迎えるか、が大事です。前回お話ししたように、血筋が分かれば将来どんな犬に成長するか大体予測できます。自分に向いている犬を考えて選び、適切なトレーニングをすれば飼い主の思い描く生活と大きなギャップは生じないはずです。
----:ギャップと言えば、愛犬との付き合いに悩む飼い主さんの話をよく聞きます。私も愛犬の「チワプー」(チワワとトイプードルのMIX)の噛み癖には悩んだ経験があります。他には、特に柴犬の飼い主さんに多い印象があります。「犬らしい」可愛さで子犬をお迎えしたのに、大きくなったら気難しく、トレーニングをしてもうまくいかない場合も多そうですが…。
早河:(日本犬は)猟犬や番犬として飼われていた犬ですから、ボス以外には吠えたり威嚇したりというのは代々受け継がれた血筋ですね。ただ、現在飼われている柴犬はほとんどが愛玩犬(目的)でしょう。柴犬を迎える場合も、ペットとしての適性を十分に考えて生まれた柴犬かどうかを確認できれば、大きな苦労はしなくて済むと思います。実際アメリカでは、番犬としてではなくパートナーとしての血筋をブリーディングしているので、穏やかな柴犬ばかりなんです。
どんな質問にも答えてくれる人から迎える
----:そうした犬に出会うためには、やはりブリーダーさんからお迎えするべきでしょうか?
早河:繰り返しになりますが、「誰から迎えるか」をよく理解することが大切です。どんな犬をつくるためにどんな血筋で繁殖させてきたのか、ということをきちんと説明してくれる専門家から迎えるのが安心です。成長した後も、問題が起きた時に答えを導いてくれるかどうかも重要なポイントですね。
お父さんになっても穏やかで甘えん坊のアイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリア「すすき」
(例えば)自分が生ませた犬の性質と対処法を十分に分かっている方からであれば、(一般の)ご近所さん宅で生まれた子犬でも大丈夫かも知れません。また、そういったことを理解して適切なアドバイスができる店員さんがもしいれば、ペットショップでも良いと思います。ブリーダーの考え方も様々なので、どこで買えばよいのかは一概には言えないですね。大事なのは「誰から迎えるか」でしょう。
日本ではあまり重要視されていませんが、自分が飼いたいと思っている犬について、どんな質問にも答えてくれる人から迎えることが一番の鍵だと思います。
----:素人やペットショップから迎えるのはダメでブリーダーならOK、といった単純なことではないのですね。その犬が、どんな考えを持ったブリーダー、もしくは飼い主のもとで生まれてきたのかを理解するのが重要ですね。また、そういったことをきちんと説明できる所から迎えれば、しつけなどもスムーズにできるというのは飼い主にはありがたいと思います。
気立ての良いジャックラッセルテリア「ナッツ」の子どもたち。今はそれぞれのご家族のもとで幸せな毎日を送る
ところで、もともと猟犬としてつくられたテリアは、エネルギーに溢れていて飼うのが大変というイメージが一般的にはあると思います。早河さんの所ではテリアを専門に扱っていますが、その辺りはいかがですか?
早河:テリアスの血筋の子たちは、物覚えが良く、無駄吠えはせず、室内での多頭飼いや人と暮らすのに適した性格の犬たちです。「とっても良い子ですが、泥棒が来たら吠えますよね?」と聞かれることがありますが、うち(出身)の子は「吠えません!」。この子たちは、誰が来ても尻尾を振って近寄っていきます(笑)。飼い主さんはもちろん、犬たち自身や飼い主さんの友だちも含め、みんながハッピーになるような性格のテリアです。
----:もし猟犬や番犬を探すなら別のところをご紹介いただくのが良さそうすね(笑)。 「自分との相性が良い血筋の子犬を探す」というのは、話を聞けば確かにその通りだと思いますが、今まで意識したことはありませんでした。どうもありがとうございました。
たくさんの「家族」を送り出してきたTERRIER'S(テリアス)の目黒店
元気過ぎて飼いづらい、といったテリアのイメージを変えたくて、あえてチャレンジし、今では家庭犬にふさわしい色々な種類のテリアを育てる早河氏。豊富な経験に基づいた私たち一般の飼い主へのアドバイスは、子犬を迎える場合、その犬を育てたブリーダーや飼い主の方針と血筋を理解することが重要とのことだ。
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