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【犬がなりやすい病気 】脾臓腫瘍編…腫瘤の良悪見極めには様々な検査が必要

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どんな病気?

脾臓とは、胃の大弯(だいわん、大きく外側に膨らんで湾曲した部分)に対してほぼ平行に位置する臓器であり、あまり聞き慣れない臓器かもしれない。働きとしては、免疫応答、血液貯蔵、造血、老化した血球の破壊が主に挙げられる。

その脾臓に腫瘍ができることは犬では多いが、発生率においての「2/3ルール」というものがある。犬に発生した脾臓腫瘍の2/3は悪性腫瘍で、そのうちの2/3は血管肉腫である。つまり脾臓の腫瘤性病変の4割以上は血管肉腫とされている。特に血管肉腫は中~老齢の大型犬で多く、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバーが好発犬種である。

原因は不明で、腫瘤の良悪は画像検査だけでは判断が難しいので様々な検査を行い総合的に判断される。行われる検査としては以下の通り。

まず、レントゲン検査では、脾臓は扁平な臓器なので腫瘤を形成すれば、比較的簡単に見つかる。大きいからといって悪性腫瘍とは限らず、血腫や良性腫瘍の可能性も大いにあると言われている。悪性腫瘍は自壊や出血を起こしやすいので、良性腫瘍の方が優位に大きいとの報告もある。
超音波検査は、腫瘤が脾臓由来かを確かめるのに非常に有用である。肝臓に転移がある場合は、小結節が見られることもあるので、一緒に確認することが望ましい。
CT検査は、全身麻酔の上、コストをかけて行うのに見合った結果は得づらいが、転移病変の検出能力は高い。専門の施設でないと行えないので実際に行われるケースは限られている。
細胞診は、脾臓に針を刺して行われる検査だ。感度が低く、血腫や血管肉腫の鑑別に有用な細胞が取れないことが多いうえ、出血のリスクもあるので術前診断としては不十分である。ただし、脾臓全体が腫れているときは実施されることもある。
病理組織検査は、確定診断として行われる検査であるが、外科手術によって組織を取る必要があるので、手術を行った場合は必須の検査である。腫瘍は血管内皮細胞由来なので、診断時には既に微小転移が存在すると言われるほどの転移能を有している。脾臓原発の血管肉腫は大網や肝臓にしばしば転移病変を形成するため、術前の超音波やCT検査でこれらの臓器に転移がないか精査しておく必要がある。

肺転移は多くないが、肺全域に微小な結節を形成することが特徴でこのような場合は突然喀血して死亡することもある。10%ほどは心臓の右心房にも病変が存在すると言われるので、不整脈や心陰影の拡大が見られれば心臓の超音波検査を行うことをおすすめする。

かかってしまったら?

手術をしない場合は、3ヶ月毎に腹部超音波検査で腫瘤の大きさをモニタリングする。ただ、いつ腫瘍からの出血が起こるか分からない状態なので、経過観察をする場合はそのリスクを承知して行うようにしてほしい。

手術を行う場合は、脾臓全摘出術になる。脾臓の機能は他の臓器が代償できるため、外科的に全摘出しても問題ない。そのため基本的に部分切除は行われない。仮に良性腫瘍であった場合でも、腫瘤が破裂して腹腔内出血のリスクがあるので、全摘出が推奨される。

麻酔中のリスクとして、心室期外収縮や脾臓腫瘤に含まれる血液の喪失による貧血に注意が必要。手術時に血小板減少や貧血が見られた場合は、術前に輸血を行うこともある。血管肉腫の場合は、術後の化学療法として抗がん剤のドキソルビシンが使われることもある。ただ、化学療法を行っても予後はかなり厳しく5-7ヶ月の生存が中央値で、脾臓摘出術のみでは2ヶ月生存率が31%、1年生存率がわずか7%とされている。血腫や結節性過形成などの良性病変に関しては長期予後は良好。また、明らかな腹腔内出血があれば、なるべく速やかに手術を行うべき。体腔内で出血が認められたときは、元気食欲低下、可視粘膜蒼白、ふらつき、震えが認められることがあり、腹腔内で急激に出血したときはショックに陥ることもある。

予防法は?

予防法はないが、良性であっても腫瘍からの出血で亡くなることもある病気なので、早期発見し腫瘍が小さいうちに手術を行うことを推奨する。

《M.M》

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