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【犬の避妊・去勢手術はどうすべきか vol.1】メリットとリスクを考える

 
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当家の愛犬、「耳よりドライブ情報」レポーターの「ひめりんご」はもう5歳。ときが経つのは早いものです。できれば子犬を産んで欲しいと思い、避妊手術はしていません。

3歳のトイプードル「平蔵」も、去勢手術は受けていません。女の子の方は、人間でいえば中年に差し掛かってきたこともあり、避妊・去勢手術について改めて考えてみました。基本的には、人間や犬に限らず健康な身体にメスを入れるのは反対です。

でも、そうした飼い主の主義主張ではなく、「このコにとって、本当に最善の選択」を彼女の立場から考えたいと思います。メリットと言われていることが本当にそうなのか? 逆にリスクはないのか、取材で分かったことを5回にわたってご紹介します。

避妊・去勢手術のメリット:性ホルモンに関連した病気の予防

天使のような子犬を家庭に迎え、体調を崩すことなく過ごせた場合、最初に獣医さんのお世話になるのはワクチンの注射。そこでお話を聞くのが、避妊・去勢手術のことだと思います。

早いうちに済ませることで、性ホルモンに関係する病気の予防、またはリスクを下げることが可能とされています。(なお、無計画な交配による飼育崩壊や悪質繁殖業者に起因する保護犬や殺処分などの問題は、別途、議論したいと思います。)

関係する病気としては、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、卵巣腫瘍が挙げられています。男の子の場合は、前立腺肥大症、会陰(えいん)ヘルニア、肛門周囲腺腫への罹患リスクが下げられると聞きます。また、精巣自体が無くなるので、当然、精巣腫瘍にはかかりませんね。

避妊手術で避けられる、またはリスクが下げられる病気:女の子の場合

子宮蓄膿症はその名の通り子宮内に膿がたまる病気です。細菌感染を主な原因として、6歳ごろからリスクが上がる傾向にあるそうです。10歳までに未避妊の25%がかかるという報告もあります。

犬の場合、発情周期の特性によって、この病気にかかりやすいと考えられています。発情期に分泌される黄体ホルモンがその後の「発情休止期」にも出されるため、約2か月続にわたり子宮内膜は肥厚したままになります。この状態の子宮内は、防御能力が弱く細菌感染のリスクが高いと言われます。

初期にほぼ無症状だそうですが、進行すると多飲・多尿、嘔吐、脱水や、外陰部からのおりものなどの症状が見られ、治療が遅れると多臓器不全に進行します。重症化した場合、海外のある論文では10%の致死率が報告されています。

卵巣には、「発生頻度は低いものの各種の腫瘍が発生する。一般的には良性のものが多いが、ときに悪性の場合もある*」とのことです。卵巣腫瘍の多くは成長速度が遅く、大きくなってから発見される傾向にあるそうです。

乳腺腫瘍は、犬にできる腫瘍の中で皮膚に次いで多いそうです。「統計によると、全乳腺腫瘍例の50%以上は良性と言われる*」とされています。2~3ヶ月で急激に大きくなる場合もあれば、数年かかって大きくなるケースもあるとされています。

いずれも悪性腫瘍、つまり癌の場合は命にかかわる病気です。また、子宮蓄膿症も症状が重くなるまで飼い主が気付かないケースがあるそうで、非常に怖い病気と言えます。

去勢手術で避けられる、もしくはリスクが下げられる病気:男の子の場合

6歳以上に多く見られる傾向がある精巣腫瘍は、一般的には良性と言われていますが悪性の場合は他の癌と同様に転移もあり得ます。

前立腺肥大症は人間の男性と同様、加齢によるホルモンバランスの崩れで発症するものです。犬の場合、一般的には5歳以上でかかる傾向にあるようです。また、9歳までにほとんどの未去勢犬に見られるという説もありました。

会陰(えいん)ヘルニアは、会陰部(肛門と生殖器の間あたり)を囲む筋肉の萎縮により、腸や膀胱など周辺臓器の一部がはみ出てしまう病気です。肛門の脇が膨れ、排便障害などを引き起こします。

肛門周囲腺腫は、肛門の周囲や尾の付け根にあり、主に皮脂を分泌する肛門周囲腺にできる良性の腫瘍です。

複雑な女の子と単純な(?)男の子

こうしてみると、女の子の場合は命にかかわる病気の予防につながり、避妊手術のメリットは多そうです。一方、男の子の場合はリスクを下げることが可能と言われている病気に致命的なものは少ない印象です。

もちろん病気にはかからない方が良いですし、若くて体力のあるうちに手術をして予防に努める意義はあります。

避妊手術も去勢手術も、まったくデメリットがなければ決めるのは難しくありません。ただ、手術には当然リスクも伴います。

次回からは、比較的よく知られていること、そうでないことを含め、避妊・去勢手術のリスクをご紹介します。

* 参考:『イラストでみる犬の病気(第23刷)』(講談社;2015)

《石川徹》

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