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「獣医師の視点で調べやすさにこだわった」犬猫のオンライン医療事典[インタビュー]

『うちの子おうちの医療事典』
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  • 長尾麻矢 獣医師
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  • 「うちの子HAPPY PROJECT」

犬猫の新規飼育頭数が増加傾向にある昨今*、ペットの健康に対する関心も高まっている。ペット保険のアイペット損害保険は、今春、ペットに関するオンライン医療事典『うちの子おうちの医療事典』を公開した。同事典は、獣医師が監修した250以上の代表的な傷病情報から、犬猫に関する「病名」や「症状」などを一括で検索することができる。特徴や開発の背景を、同社営業企画部 動物病院グループ マネージャーの長尾麻矢 獣医師に聞いた。

予防医療の普及を目指したプロジェクト

----:『うちの子おうちの医療事典』開発の経緯を教えてください。

長尾麻矢 獣医師(以下、敬称略):この事典は、予防医療の普及をテーマにした「うちの子HAPPY PROJECT」というプロジェクトが主体となって運用しています。同プロジェクトは、基本的には弊社保険の契約者の方に向けて発信していくもので、保険を使ってくださる方のペットはやはり病気をしている子が多いので、まず事故や病気を防ぐためにはどうしたら良いか、という部分を啓発する取り組みを行っています。立ち上げ当初より、自社メディアとして読み物のコンテンツ(記事)を拡充してきました。

その後、より多くの方にサイトを訪れていただきたい、獣医師が主体となってやっているプロジェクトなので“病気”をキーとして全てのペットオーナーの方と繋がれるようなサービスを作りたいという思いから、医療事典の制作に取りかかりました。

---:「うちの子HAPPY PROJECT」はいつ頃から始動したのでしょうか。

長尾:2017年頃です。当時はまだアイペット内で予防医療の取り組みが普及していなかったので、私が資料を作って社内の色々なメンバーに声をかけながら賛同者を集めました。最初は会社のミッションというわけではなく、放課後活動的に参加してくれるメンバーを募ってスタートしたんです。

今回の事典に関してもプロジェクトのメンバーの中で「作ろう」という話が出て、それに賛同してもらいたいデザイナーやエンジニアに直接声かけをして、本業とは別の時間を作ってもらいつつ進めてきました。皆が思いをぶつけ合った結果になっていると思います。

----:プロジェクト立ち上げのきっかけは?

長尾:犬の骨折をどうしても防ぎたいという思いがあったからです。骨折は、知識があれば防ぐことができます。生後10ヶ月以内に起こることが多いのですが、これは飼い主さんが愛犬がどういう行動をするか分からない時期であり、わんちゃんもどれくらいの高さから飛んだらどんなことが起こるか分かっていない時期、という問題があるんです。

骨折は治りづらく、手術に至る確率の高い怪我です。お迎え後間もない時期に手術で痛い思いをして、費用も割と高額で、わんちゃんも飼い主さんも負担が大きい。「どうして骨折させてしまったんだろう」という後悔も残ります。

私は約3年間の臨床経験がありますが、その頃は骨折してしまった状態の子にしか会えないので、「どうしてその前に対策方法や気をつけるべきことを伝えられないんだろう」といつも思っていました。飼い主さんが「この子はどういう行動をするかわからない」ということに注意しながら見てあげることが大切、ということを記事では伝えています。まずは、防げる怪我や病気について知っていただけたら嬉しいですね。

正しい知識と見やすさにこだわり

----:事典で検索をすると、アイペットで運営している別のメディアの記事もあわせて表示されますね。

長尾:この事典には自社メディアを横串でつなぐという目的もあります。保険に加入されていない方向けのもの、契約者の方に向けたものなどいくつかのメディアがありますが、これまではそれぞれが独立していました。でも、コンテンツは全て私達社内の獣医師が目を通しているものなので、関連する情報を表示させて、何か困ったり調べたいものがある時にはオールアイペットで全てを解決できるようにしたいと考え、このような機能を持たせています。

『うちの子おうちの医療事典』『うちの子おうちの医療事典』

----:強みや特徴はどういった部分でしょうか?

長尾:まずは、獣医師の病気に関する正しい知識を提供しているという部分です。また、見やすさは特にこだわった点ですね。事典というのは、シンプルで端的で、調べたいことがパッと出てくることが大事だけれども、まずいつでもそのページを訪れたいと思ってもらえる可愛らしさも必ず残したいと思いました。なので、デザイナーにも企画の段階から入ってもらって、イラストなども多く使いながら作り上げています。

『うちの子おうちの医療事典』『うちの子おうちの医療事典』

また、何となく病院で病気を聞いたけどよくわからないので、その病気のことだけをちゃんと調べたいという人もいれば、こんな症状が出たので検索してみようというケースでは柔らかい記事で知りたいという人もいる。対処方法などHow Toを知りたい場合には動画で見たいという人もいますよね。なので、人に合わせて端的な辞書、記事、動画など、どのような形でも調べられるようにコンテンツを用意しています。

----:「よく検索されているワード」や体の部位、症状に関するワードから調べることもできますね。

長尾:これもこだわりの1つです。「人にうつる」「生涯かかる医療費が高額」「生涯つきあっていく可能性あり」など、飼い主さんが気になるであろうキーワードで病気をカテゴライズして検索することができるようにしています。表現も「先天性の疾患」などではなく、より興味を持っていただけるような柔らかいものにしました。

検索をかけた時に出てくる病気の順番は、いわゆる多くの犬猫がかかりやすいもの、飼い主さんがよく調べたいのではないかという病気が上位がくるようになっています。臨床経験のある獣医師が優先順位をつけることによって、よりかかる可能性の高い病気を調べられるようにしました。

『うちの子おうちの医療事典』『うちの子おうちの医療事典』

様々な調べ方に対応

---:解説動画も今後増やしていくのでしょうか?

長尾:解説動画は、今後自社でも作る可能性がありますが、現在は全国に約5600件あるアイペット対応病院の獣医師が発信している動画を、我々が精査した上で掲載しています。関連が深いものをリスト化してアップすることによって、全国の飼い主さんが身近な獣医師の動画にたどり着けるという可能性もあると思います。まだYouTuberの先生はあまり多くないですが、徐々に増えてきているので、動画を紹介するプラットフォームとしても提供していきたいですね。

----:「よく見られている病気 TOP10」は検索数を反映しているのでしょうか。

長尾:こちらは完全リアルタイムなので、実際にこのサイト内で見られた件数に応じて随時変わっていきます。春先は子犬・子猫をお迎えする時期なのでそれに関するものが多くなったり、夏はやはり熱中症が上がってきますね。春から夏にかけて検索数が多かったのは、「アレルギー性皮膚炎」でした。季節の変わり目は温度や湿気の変化が大きいので、その影響で症状が出ている子が増えていると考えられます。

----:フリーワードではどういった検索が多いのでしょうか?

長尾:コロナ禍の影響もあり、常同行動やストレスサインについて調べる方が増えています。また、しつけについても調べる方が多いので、今後記事で切り込んでいきたいと考えています。

----:今後の展望は?

長尾:まずはいい形でリリースすることができましたが、どんな方が調べてもしっかりと検索できるような病気、情報の拡充を継続していきます。例えば、どんな症状かより明確にイメージできるように、わかりやすい画像を追加していくことも検討中です。また、飼い主さんがどれくらいの金額を払いどれくらいの頻度で通院しているかなど、保険会社として持っているデータも出していきたいですね。

私達獣医師は「ただの動物好きのプロ」です(笑) 何よりも動物が好きで獣医師になって、動物に関する知識を持っている。その知識を惜しみなく飼い主さんに提供していきたいですし、ペットと暮らす素晴らしさをより多くの方に伝えていきたいと思います。

長尾麻矢 獣医師長尾麻矢 獣医師*「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査」(ペットフード協会)
《REANIMAL編集部》

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