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【愛犬からの贈り物 vol.3】平蔵が教えてくれたこと…同じような子犬が少しでも減るように

愛犬からの「贈り物」
  • 愛犬からの「贈り物」
  • 変わりつつある命との向き合い方
  • もてはやされる「ティーカップ」
  • 商材としての子犬
  • ペットショップで出会った「ひめりんご」
  • 出会いの場としてのペットショップ
  • 愛犬には、できる限りの恩返しを
  • この出会いを意味のあるモノに

犬や猫を中心に、動物の生体販売や殺処分を禁止にすべきという声が社会的に高まり、「動物の愛護及び管理に関する法律(通称、動物愛護法)」も動物福祉の向上をめざして改正されています。

少しずつではありますが、「命」に対する向き合い方は、確実に変わりつつあります。

変わりつつある命との向き合い方

一方で、根本的な課題についての議論があまり交わされていない印象があります。そもそも、ペットショップで販売されたり、殺処分されたりする「生体」はどこから来るのか? 全てではありませんが、答えの一つは繁殖業界でしょう。そこでは、ブリーディングという名の「ビジネス」が続けられています。

人間がつくる「はやり」の犬種

前回ご紹介した競走馬とちがい、犬に走る速さを求めるケースは多くないでしょう。飼主さんによって様々ですが、家庭犬の場合は健康な身体、一緒に生活しやすい性格、顔かたちの可愛らしさなどが求められる要素ではないか思います。この中でも昨今の日本では、小型犬に身体の小ささが特に強調される印象を受けます。

ちなみにアメリカでは、その時々に人気がある特定の純血種がブランド化される傾向が強いようです。ニューヨーク在住のジャーナリスト、マイケル・ブランドー氏が書いた『純血種という病(原題:A Matter of Breeding、白揚社)』という本では、ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』の中で登場人物がキャバリアを飼い始めた時にキャバリア・キングチャールズ・スパニエルが急にもてはやされたエピソードが紹介されています。また、ディズニーがリメイク映画を発表した際は、「ニューヨーク中の歩道が(ダルメシアンの)黒い斑点で覆われた」そうです。

こうした流行に乗った犬の選択ついては、チワプーとトイプーの飼い主である私も否定できる立場にはありません。また、そのものを否定する必要もないと思います。しかし、その背後で行われていることを知るにつれ、深刻な課題を感じるようになりました。

高効率な繁殖ビジネス

お付き合いのある獣医さんやブリーダーに聞いた話ですが、日本の繁殖業界では、極小サイズのいわゆる「ティーカップ」をつくり出すために親子やきょうだい間などの極端な近親交配をすることも珍しくはないそうです。このような極近親交配の目的は、「とにかく小さい子犬」を生ませること。未熟児をあえて生ませるための交配です。当然、身体的な障害や発育不全の可能性も高まると想像します。

もてはやされる「ティーカップ」

前回ご紹介したように、競走馬の場合は血の濃さの限界が18.75%とされています。親子やきょうだい間での近親交配の場合、それは75%にもなります。そしてそれは、より小さな個体を手軽に創出するための手段です。少なくとも生後数か月の段階で明らかな障害が見つからなかった子犬たちは、高価な値段で取引されます。(第三者が知ることは難しいですが、「商品」とならない子犬が産まれる可能性も排除できません。)

商材としての子犬

また、近親交配でなくても、平蔵たちのように遺伝的疾患のリスクがあっても商業的に好ましい要素をもった親犬は交配に継続使用されるケースもあります。前述のブランド―氏によれば、純血種が好まれるアメリカの場合、「犬種の特徴が際立つようなブリーディングが、犬たちに様々な苦痛を与えていることは、数々の研究の結果から明らかだ。癌、四肢の奇形、肌の異常、目や耳の感染症…」という状況を生み出しているそうです。

プロフェッショナルなブリーダーを見極めることの大切さ

昨今の日本では、「ペットショップ(の生体販売)は悪、ブリーダーはOK」、といった少々短絡的なイメージが流布している印象を受けます。皮肉なことですが、健康優良児のひめりんごはペットショップ出身です。友人の中にも、ペットショップから迎えた愛犬は性格も健康状態も良好な一方、ブリーダーから迎えた愛犬は両ひざのパテラで手術とリハビリに苦労したケースが複数あります。

ペットショップで出会った「ひめりんご」

もちろん、適切な知識やプロとしてのプライドをもったブリーダーもいます。私もトレーニングなどでお世話になっていますが、1つ1つの「命」に丁寧に向き合い、お迎えする家族のことも考えたマネージメントをされています。その反面、ウェブサイトや接客スペースに投資の比重を置き、子犬の健康よりもサイズや見た目を優先した高効率なビジネスモデルを好む業者もいます。

また、ペットショップにおける生体の展示販売には多くの問題が指摘されているのは事実です。解決すべき課題も多いでしょう。一方で、ペットショップで出会った子犬に一目ぼれし、家族として終生大切に暮らす飼い主が多く存在するのも確かです。

出会いの場としてのペットショップ

いずれの場合も、法律の範囲内であればどんな優先順位でどのようにビジネスを行うかは事業者が判断することです。ただ、他の事業と大きく異なるのは「いのち」を商材としていること。繁殖業者は、命に対して最低限の敬意を払い、利益の積み増しだけでなく先天的な疾患の防止を含めた動物福祉に関する意識も高めて欲しいと思います。

一方の販売店舗は、動物の福祉を充分に意識した流通やバックヤード等を含む店舗での管理方法を徹底することで、社会からの理解を得られるチャンスも生まれるのではないでしょうか。

そして同時に私たち飼主に必要なのは、真にプロフェッショナルなブリーダーや正しい姿勢をもったペットショップを見抜く目を養う努力だと思います。需要のない所に売り上げは発生しません。時間はかかると思いますが、そうした流れをつくることも、不当な扱いを受ける子犬や不幸な病気で苦しむ犬と家族を減らしていく道ではないかと思います。

平蔵からの「贈り物」

肩の痛みで整形外科専門病院を受診した平蔵が、肩関節不安定症と同時に、突然死に至る危険性をはらんだ環軸椎の形成不全と診断された約2年前。「何でうちのコが?」という思いでした。

愛犬を家族の一員として暮らすみなさんにはご理解頂けると思いますが、犬たちは本当にたくさんのことを私たちに教えてくれます。素敵な縁も繋いでくれます。こうした「贈り物」に対して、この子たちの短い生涯の中でどれくらいのお返しができるのだろうとよく思います。

時間が経つにつれ、この病気もまた「贈り物」だと思うようになりました。1日1日を当然のものとして送るのではなく、毎日を大切に過ごす。そんなことを教えてくれるために来てくれた平蔵。この「贈り物」を無駄にしないために、同じような子犬が少しでも減る努力をしていくことでお返ししたいと思います。

愛犬には、できる限りの恩返しを

昔、アメリカ人の友人が何かあるごとに、「Everything has a reason. (= すべてには理由があるんだよ)」と言っていました。誰の言葉なのかは忘れましたが、生きていれば良いことも悪いことも、いろんなことが起こります。それをどう解釈して、どう生かすか(もしくは殺すか)は、自分次第ということでしょう。

この出会いを意味のあるモノに

《石川徹》

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