京都大学大学院理学研究科 山下高廣講師、岡山大学学術研究院医歯薬学域 小島慧一助教、京都大学大学院理学研究科 七田芳則名誉教授（現・立命館大学総合科学技術研究機構 客員教授）らの研究グループは、夜行性のヤモリが暗がりで色を見分ける特殊な能力を持つメカニズムを明らかにした。
ヒトは、明るい所で色を見分けられる（三色型色覚）ものの、暗がりでは見分けることができない。これはヒトが、明るい所で働く光センサータンパク質（錐体視物質）を3種類持つものの、暗がりで働く光センサータンパク質（ロドプシン）を1種類しか持たないためである。この暗がりで色が識別できないことは多くの脊椎動物に共通している。
しかし、ヤモリは多くの種が夜行性で、暗がりで色を識別していると考えられている。ただし、ヤモリはロドプシンを持たないため、本来明るい所で働く3種類の錐体視物質を暗がりで利用する必要がある。
そこで同研究チームは、夜行性ヤモリの錐体視物質の性質を調査。その結果、錐体視物質の性質が数個のアミノ酸の置換によって「暗がりでの視覚」に適した形に変化していたという。つまり、ヤモリは光センサータンパク質の性質を独自に変えることで、「暗がりで色を識別できる能力」を獲得したと言えるそうだ。我々の身近に住むヤモリは、多くの脊椎動物が持たない特殊な色覚能力を駆使することで、闇夜に潜む害虫を正確に認識し、捕食していると考えられるという。
同成果は、10月1日（現地時間）に米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載された。
