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シロワニの赤ちゃん一般公開、他のサメと同じ水槽へ…アクアワールド茨城県大洗水族館

元気に泳ぎ回るシロワニの赤ちゃん
  • 元気に泳ぎ回るシロワニの赤ちゃん
  • 元気に泳ぎ回るシロワニの赤ちゃん
  • 引っ越し先の水にならしながら放流
  • 大人のサメ用の水槽
  • 大人のシロワニ
  • 大人のシロワニ
  • シロワニの標本
  • アクアワールド茨城県大洗水族館

10月12日、アクアワールド茨城県大洗水族館で、サメの仲間「シロワニ」の赤ちゃん(メス)の一般公開が始まった。飼育下のシロワニの繁殖は世界でも例が少なく、国内では初めての成功例となる。

万が一に備えダイバーが付き添い

同館で6月17日に生まれたシロワニの赤ちゃんは、順調に育ち、この日晴れて水族館の展示水槽へ引っ越し。飼育員に見守られながら「世界の海ゾーン」の水槽に移された。バックヤードでは、12時の一般公開前に飼育水槽から担架式のソフト水槽に移され、身長測定などを行った。その後、ダイバー(飼育員)が待機した水槽の上部からゆっくりと展示水槽に入れられた。

引っ越し先の水槽は、幼体や若いサメ用の水槽。若いシュモクザメなどと同居することになる。最初はダイバーが付き添いシロワニの赤ちゃんが慣れるまで様子を見ていた。他のサメが攻撃してくる可能性も考えられる。ダイバーの付き添いは万が一のためでもあるのだ。幸い、他のサメたちが騒ぐこともなくシロワニの赤ちゃんも次第に泳ぐ範囲を広げていった。なお、親のシロワニはとなりの大人たち用の水槽にいるそうだ。

順調に成長、手探りの繁殖

生後約4か月のシロワニの赤ちゃんの体長は114cm。体重は数日前の計測で9.6kgに。生まれた直後は約92cm、4.3kgほどだった。1週間ほど餌を食べないときがあったが、今では半身のアジを食べるようになり成長も順調のようだ。水族館のサメを担当する徳永幸太郎氏によれば、シロワニの繁殖に成功した水族館は世界でも4か所ほど。今回が5例目となり、日本国内では初の繁殖成功例だ。

事例が少ないため、マニュアルもなく文献もわずかだ。餌や温度管理など手探りでの繁殖だったが、無事成長してくれてほっとしているという。アクアワールドでは、1999年の設立当初(当時の名称は「大洗水族館」)からシロワニを飼育していた。シロワニは野生化の寿命が18年前後といわれているが、ここには設立当初からの個体も元気に生きているという。一般的に飼育下は野生よりも寿命が伸びる傾向がある。

絶滅危惧種の保全に向けて

シロワニ飼育の目的は、当初から繁殖にあった(徳永氏)といい、マニュアルや参考文献が限られる中、水温管理や観察記録などデータの積み重ねが今回の繁殖成功につながったようだ。それでも飼育開始から20年以上たっているわけで、シロワニの繁殖はそれだけ難しいということだろう。

シロワニは子宮を持ち、卵は親サメの胎内で孵化する。1回の出産は1、2匹と、繁殖力は高くない。海の食物連鎖の中では頂点に含まれるサメだが、乱獲などで減った数を戻すのは容易ではない。絶滅危惧IB類に指定されており保護が急務だが、今回の繁殖データはシロワニ保全にも貴重なものになるだろう。

《中尾真二》

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