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ニュージーランドから苦労の末に迎えた「ライリー」…“空気のような存在”のベストパートナー

アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアの「ライリー」
  • アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアの「ライリー」
  • 「インターナショナルビューティー」を受賞したライリーくん
  • のんびり過ごすことが多い穏やかなライリーくん
  • ライリーくん(向かって左)と奥さま、サラちゃん
  • 目で語るライリーくん
  • サラちゃんとの間に可愛いパピーが生まれる日が待ち遠しい
  • 苦労の末に巡り合った重廣さんとライリーくん

大切な家族の一員として、生活を共にする動物たち。このコーナーでは、一般家庭で暮らす犬や猫たちを紹介しています。今回は、日本にわずかしかいないアイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィートン・テリアの「ライリー」くん(6歳)です。飼い主の重廣剛さんに聞きました。

苦労したニュージーランドからのお迎え

----:珍しい犬種ですが、ライリーくんとの出会いは?

重廣剛さん(以下、敬称略):子犬の時に、ニュージーランドから迎えました。

----:海外からですか?!

重廣:日本にはいなかったので、海外で探しました。オーストラリアのブリーダーをインターネットで調べ、20件くらいにEメールなどで問い合わせました。1通だけ返ってきた返事は、「日本には出さない」…。

----:なぜでしょう?

重廣:英語の得意な知人に聞いてもらったところ、「日本人は犬を食べるからだめだ」と言われたそうです(笑)また、犬に対してのモラルも低いので、日本には輸出したくないとはっきり言われたそうです。

----:でも、何とかライリーくんにたどり着いたのですね。

重廣:犬の輸入代行業者を見つけて依頼したところ、ニュージーランドのブリーダーが見つかりました。

----:それからはスムーズでしたか?

重廣:いえいえ…。ライリーを含め8頭生まれたのですが、希望が20数件あったそうです。まず書類選考です。犬の飼育歴や迎えた後の散歩や運動のさせ方、家族構成やそれぞれの趣味など細かいアンケートに答えさせられました。また、犬の寝床は屋内に設け、専用ドッグランも用意するように言われて写真も送りました。オーストラリアから応募した方の中には、20年待っているという人もいました。

----:想像を超えるハードルの高さですね…。ただ、犬を大切にする飼い主を厳選するという姿勢は素晴らしいとも言えるかもしれないですね。

重廣:そう思います。もう少し簡単に迎えられるとは思っていましたが…。

ライリーくん(向かって左)と奥さま、サラちゃんライリーくん(向かって左)と奥さま、サラちゃん

目で語るウィートンの魅力

----:どうしてウィートンにこだわったのですか?

重廣:きっかけは、一番下の息子が「犬を飼いたい」と言ったことです。私はもともと犬が大好きでしたが、妻が犬に苦手意識をもっていたので結婚してからは飼っていませんでした。改めて理由を尋ねたところ、「狼のような口が怖い」と…。子どもの頃に咬(か)まれたことがあって、それがトラウマになっているようでした。

そこで、口元が毛で覆われていれば大丈夫だろうと、犬種図鑑を見てみました。シュナウザーやオーストラリアン・ラブラドゥードゥルなど幾つかの犬種の中から、「これがいい!」と息子が言ったのがウィートンでした。でも、調べたら国内にはブリーダーがいない…。「困ったな」とは思いましたが、ハードルの高い犬の輸入にチャレンジしてみたくなったのも理由です。

----:苦労してお迎えしたライリーくんですが、魅力は何でしょうか?

重廣:つぶらな瞳です。飼い主をじっと見て、目で気持ちを表現します。おびえている時も、嬉しい時も目で分かります。そこがチャームポイントだと思います。

手がかからず繊細で気遣いのできるライリー

----:苦労することはありませんか?

重廣:まったくないですね。あまりにもブリーダーが慎重だったので、「難しい犬なのかな」と少し心配していました。(元々は猟犬としてつくられた)テリアなので、気性が荒いのかもしれないと…。でも、全然違いました。本当に飼いやすい犬です。

----:簡単に言うと、付き合いやすい性格ですか?

重廣:そうですね。昼間はずっと自分の小屋に入っています。夜は、そーっと私を見て「上がっていい?」と言う顔をします。私が「いいよ」というと2階の寝室に上がって、私の足元で寝ています。そんな子です。

のんびり過ごすことが多い穏やかなライリーくんのんびり過ごすことが多い穏やかなライリーくん

----:知り合いの方のお宅にいるウィートンには社交的な部分も感じますが。

重廣:(楽しくて)テンションが上がり、“弾ける”時もあります。「う~」とうなって歯向かってきたことが、ないわけではありません。でも、私が「こら!」と言ったら終わる程度です。それ以外は本当におとなしいです。咬まないし吠えないし、付き合いやすいですね。

程よい距離感の「パートナー」

----:彼が好きなことは?

重廣:人と接するのが大好きです。べたっと体をくっ付けて、触ってもらうのが大好きですね。初対面の人でも大丈夫です。

----:ご家族にはべったり?

重廣:いえ、ちょうど良い距離感です。家に帰ると、横にチョンと座ります。でも数分経つと、自分の小屋に行っちゃうんです。いつまでもベタベタしない距離感がちょうどいいんです。寝る時はいつも一緒ですが、やっぱり、距離を取って寝ています。

----:なんだか人間みたいですね。

重廣:そうですね。「話に飽きたから、おれは自分の部屋に行くよ」と言うような犬ですね。だから、距離感を大切にしています。たとえば、ふざけて無理やり抱き寄せ、「離さないぞ」っていうのをたまにやるのは良いと思いますが、やり過ぎるとストレスになってしまうと思います。

----:お互いに依存し過ぎない関係性が良さそうでね。パートナーと言うイメージがぴったり来ます。

重廣:本当にそうだと思います。

ウィートンを通して学ぶ、適正飼養とコミュニケーションの大切さ

----:どうして日本には出してくれないんでしょうか? 「犬を食べる」と言うのは誤解ですが…。

重廣:はっきりとは分かりませんが、きちんと可愛がる確信がないと譲らないのだと思います。ウィートンは、ヨーロッパやアメリカ(のブリーダー)も「日本には出さない」という感じだそうです。

----:そうしたイメージは変わらないのでしょうか?

重廣:あまり興味はなかったのですが、事情があってライリーをドッグショーに出したことがあります。「インターナショナルビューティー」が獲れたので、ニュージーランドに報告したら態度がガラッと変わりました。「ショーでタイトルを獲らせるくらい大切にしている飼い主だ」ということで、急に対応が良くなりました(笑)

「インターナショナルビューティー」を受賞したライリーくん「インターナショナルビューティー」を受賞したライリーくん

----:意固地に感じますが、犬を大切にしているのですね。

重廣:ニュージーランドやオーストラリアのブリーダーは、交配のためにアメリカとは交流があるようです。オス犬をアメリカから入れたり、ハワイに子犬を出したりしています。とはいえ、「ウィートンは、ハワイやアメリカに行くことも珍しいんだ」と言われたこともあります。それだけ大切にしているのでしょう。

----:なるほど。では最後に、苦労の末に家族として迎えたライリーくんに一言お願いします。

重廣:「よく、うちにきてくれたね」という気持ちです。子どもが生まれると言いますよね。「よく私たちのところに生まれてきてくれたね」って。それと同じです。今は、いつでも近くにいて特に意識はしないけど、かけがえのない「空気のような存在」という感じです。



ライリーくんを迎えた後も納得できなかった重廣さんは、ウィートンを日本に譲りたくない理由を聞くためにオーストラリアまで出かけました。日本から数ヶ月かけてアポイントを取ろうとしたそうですが反応はなく、思い切って現地に飛びました。1週間かけてたくさんの犬舎をまわり、やっと最終日にブリーダーとの面会ができたそうです。

サラちゃんとの間に可愛いパピーが生まれる日が待ち遠しいサラちゃんとの間に可愛いパピーが生まれる日が待ち遠しい

ニュージーランドやオーストラリアのブリーダーの間では、日本は犬に対する「モラルが低い」という印象があるようです。重廣さんの熱心な活動にも関わらず、現在はニュージーランドからも繁殖のための輸入は難しいそう。誤解の解消も含め、私たち動物メディアも犬の適正飼養について、きちんとコミュニケーションしていく責任を感じました。

苦労の末に巡り合った重廣さんとライリーくん苦労の末に巡り合った重廣さんとライリーくん

重廣剛さん:
以前はシェルティー、スピッツ、ドーベルマンと暮らした経験をもつ愛犬家。ライリーくんと去年迎えたウィートンのサラちゃん、奥さま、4人の息子さんと広島県に暮らす。「ハードルは高いですが…」と言うが、“広島のウィートンは質が高い”と海外からも認められるような犬たちを育てたいと夢を語る。愛犬とドライブを楽しむクルマ好きで、今後は一緒に温泉宿に泊まってみたいという。

《石川徹》

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