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ウサギの感染症、アメリカ全土に広がる危険性あり

ウサギ(イメージ)
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アメリカ西部および南西部で流行している死亡率の高いウサギの感染症が、北米全土に広がる恐れがあるとアメリカ獣医師会が発表した。

感染力と死亡率の高さが特徴

REANIMALで5月に報じたように(関連記事)、アメリカの一部で「兎出血病(RHD)」(日本では今年7月1日の家畜伝染病予防法改正により「兎ウイルス性出血病」から名称変更)の流行が報告されている。感染力が非常に高いこのウサギの伝染病は、元気消失、食欲減退、発熱や神経症状、鼻出血などの症状をみせ、多くが数日で死亡する。

アメリカの西部に拡大

過去のアメリカでは、ペットとして飼われていたウサギの散発的な流行に限定されていたが、今年の3月にニューメキシコ州の野生環境で確認された。そのほかコロラド州、アリゾナ州、テキサス州、カリフォルニア州およびメキシコでも見つかり、各自治体や合衆国農務省などが連携して調査を進めていた。その後、テキサス州やユタ州にも拡大し、ペットおよび野生のウサギが死亡している。アメリカ農務省によると、この病気の致死率は50%から90%と非常に高い。

来年には全米への拡大も

アメリカ農務省動植物検疫局(APHIS)によると、RHDはまず、2018年2月にカナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバー島の野ウサギから発見された。その後、アメリカ・オハイオ州のペット、ワシントン州ではペットと野生両方のウサギの感染が確認された。これらの地域はすべて、北米大陸の西側に位置している。マサチューセッツ州タフツ大学・獣医学部教授のジェニファー・グラハム博士は、ウイルスが野生のウサギに広まれば急速な拡大は避けられないとし、「来年には、この病気が全米に広がっていると獣医疫学の専門家は考えている」と語っている。

未承認ワクチンの使用が可能に

この病気は、感染したウサギの分泌物・排せつ物などへの接触によって、口や鼻、目などからウイルスが侵入する。また、飼料や飼育施設内のわら(寝床)、ウサギを捕食する動物やハエ、人間の服や靴などが媒介する場合もあるそうで、感染力が非常に高い。またウイルスは氷点下や高温下でも死なず、感染力に大きな季節的変化はないとされている。

アメリカには現在ワクチンがないが、合衆国農務省はRHD流行が確認されている州で国内未承認の欧州製ワクチン(欧州では承認済)2種類を緊急措置として使用することを認めた。

日本での感染例

なお、日本では1998年にウサギの届出伝染病に指定されている。農林水産省のデータによれば、昨年1年間に茨城県の1施設で2羽、愛媛県の1施設で10羽(奄美新聞は11羽としている)がRHDで死亡している。今年に入ってからは、千葉県内の施設で4月に23羽、5月に3羽が死亡。6月には福島、茨城、栃木それぞれ1軒ずつの施設で合計10羽のウサギがRHDで死亡しており、同月までの累計で36羽と前年同期の10羽を上回っている。

また、農林水産省のデータにはないが、奄美新聞(8月8日付け)によると7月には岩手県の動物園で死亡したウサギのうち5羽がRHDによるものと判明したそうだ。このデータを見る限り、日本では今のところアメリカのような自然界を含む大流行は起きていないと考えられる。一部の動物園など限られた施設内で集団感染が発生したために、死亡数が増加していると考えられる。

日本での流行は認められず

人間やその他の家畜はこのウイルスに感染しないとされており、あまり心配する必要はなさそうだ。ただし展示施設などではウサギと触れ合うことができるケースが多いため、念のためウサギの飼い主はペットへの感染予防に注意するのが安心と言える。

《石川徹》

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