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【動物に会える映画 vol.6】運命のいたずら!? 動物たちを身近に感じる映画 3選

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『ウルフウォーカー』
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  • 『メン・イン・キャット』
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昔から、世界各地に動物の化身が登場する物語があります。それは動物を擬人化することで、自然界の流儀や掟、知恵を伝えてくれたり、野生との共存を訴えていたり。サステイナブルな将来を目指すための英知に溢れています。今回は、アイルランドから届いた神話にまつわる新作映画を含む、不思議な縁で結ばれた動物と人間の物語を3本ご紹介します。

『ウルフウォーカー』

『ウルフウォーカー』

(c)WolfWalkers 2020

最初にご紹介するのは、10月30日公開の新作『ウルフウォーカー』。アイルランドで中世から密かに伝えられてきたオオカミの伝説に着想を得た物語です。

森林開発の邪魔をするオオカミを退治するため、とある町にやってきたハンターとその娘が、不思議な少女と出会ったことで、大切なことに気づかされるという美しいストーリーです。少女の正体は、オオカミと人間、どちらの魂も持ち、傷を癒す力を持ったヒーラー。オオカミたちを率いて、森を守っているのです。ところがここに登場する人々は自分たちの目的のために、自然を破壊することを躊躇すらしません。この作品には、人間たちが自然に対して行ってきた過ち、また現在も進行中の間違いの数々を悔いる気持ちが込められているのでしょうか。人間対自然という構図のむなしさが、ハンターの娘の変化=“人間も自然の一部であるという事実を思い出させる出来事”によってくり返し強調されていくのです。

古代ケルト人たちは、オオカミに強い畏怖の念を抱き、共存していたと聞きます。ところが、1786年を最後にアイルランドのオオカミたちは姿を消したとか。もっと人間が謙虚に自然と接していたら彼らは今もアイルランドの森を颯爽と走り回っていたことでしょう。ラストでは、人間とオオカミとの究極の「共存」を描きつつ、私たちが唯一変えることのできる未来へと続く優しい余韻を残してくれています。

製作したのは、カートゥーン・サルーン。長編作品すべてがアカデミー賞にノミネートされている注目のアニメーション・スタジオです。この作品は、ケルト伝説に着想を得た『ブレンダンとケルズの秘密』『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』に続く三部作の最終章。最新技術を取り入れつつも、絵本のような温かみのある手書きのアニメーションで神秘的な世界へと引き込んでくれる一作です。

『メン・イン・キャット』

『メン・イン・キャット』

(C)2016 - EUROPACORP - All rights reserved

2作目は、コミカルな中にも心温まるメッセージが込められたファミリームービー『メン・イン・キャット』です。主人公は仕事人間の実業家トム。日頃、家族に寂しい思いをさせている彼は、罪ほろぼしの印として、娘の誕生日に一匹の猫を怪しいペットショップから譲り受けます。ところがその帰り道、部下と口論になり建設中のビルから転落し意識不明の重体に。目覚めてみると、トムは自分が娘にプレゼントする猫と身体が入れ替わってしまっていることに気がつきます。なすすべもなく猫のトムは家族に迎え入れられるのですが…。

動物嫌いの男が猫になるという荒唐無稽な物語ですが、トムの奮闘や“猫あるある”エピソードに大笑い。大物俳優たちが真面目な顔でコミカルな演技を披露しているのも見所の一つですが、やはり動物好きには“猫が考えていそうなこと”が言語化されているところも魅力的。モノ言いたげにじっとこちらを伺っていたり、何かを企んでいる様子を見せたり、実際にいたずらをしたりと、猫たちの行動の裏にはこんな本音が潜んでいるのかもと妙に納得してしまいました。中身はおじさんなのですが。

さらに、自分がすぐ側にいるとも知らず、家族たちが見せるトムへの本音が、家庭を顧みなかった彼を改心させるきっかけになるという展開も、お約束ながらハートウォーミング。原題は「Nine Lives.(猫に九生あり)」。何度も輪廻転生を繰り返していそうなミステリアスな猫(中身はおじさん)と出会ってみてください。

『鉄ワン・アンダードッグ』

『鉄ワン・アンダードッグ』

(c) 2020 Disney

最後は、アメコミ・ヒーローのワンコ版ともいえる『鉄ワン・アンダードッグ』です。爆弾をハムと間違えるほどのダメダメ警察犬ビーグルのシューシャインが、マッドサイエンティストの実験薬をうっかり浴びてしまったことから超能力犬に生まれ変わってしまうお話。

まさに正当派アメコミ・ストーリーですが、彼が得たのが空中を自在(?)に飛び回り、弾丸のように走るというスーパーパワーだけでなく、人の言葉をしゃべる能力だったというのがワンコ映画ならではの独自設定。自虐的にもほどがある“アンダードッグ(負け犬)”というニックネームで大暴れし、赤いセーター&青いマント姿で市民を危機から救ってくれるのです。でも、常にどこかずっこけている様子は、どこまで行ってもダメワンコ。クールに決めようとしても、決めきれず、自ら騒動すら引き起こしてしまうあたりが、彼の欠点にして、愛すべき特徴。こういう犬、いますよね。そして、そんな子ほど可愛かったりして。こういうところが、犬好きのかゆいところに手が届いていて憎いのです。

家族で笑顔になれる作品ですが、犬好きとしては一つ注文が。犬映画には、マスティフやボクサー、シェパードやドーベルマンといった強面犬が、敵役として登場しがちなのですが、彼らには何の罪もありません。そろそろ”悪役“”意地悪役“という定位置から解放してあげてほしいものです。

人と動物との垣根を跳び越える者たちのストーリーを観ていると、互いにとても身近な存在なのだと感じられます。もっと上手く私たちが共存していくためのヒントを、この3作から見つけてみてはいかがですか?

■『ウルフウォーカー』
配給:チャイルド・フィルム
公開表記:10/30(金)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
(c)WolfWalkers 2020 

■『メン・イン・キャット』
ブルーレイ&DVD発売中
ブルーレイ:¥4,700(本体)+税
DVD:¥3,800(本体)+税
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:ポニーキャニオン
(C)2016 - EUROPACORP - All rights reserved

■『鉄ワン・アンダードッグ』
ディズニープラスで配信中
(c) 2020 Disney

《牧口じゅん》

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