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アクア・トト ぎふ、「エンリッチメント大賞」技術賞を受賞

アクア・トト ぎふ、「エンリッチメント大賞」技術賞を受賞
  • アクア・トト ぎふ、「エンリッチメント大賞」技術賞を受賞

世界淡水魚園水族館「アクア・トト ぎふ」(岐阜県各務原市)は、環境エンリッチメントに取り組む動物園や水族館を表彰する「エンリッチメント大賞 2020」において、技術賞を受賞した。

エンリッチメント大賞は、動物園・水族館に対する社会的な意識を高め、環境エンリッチメント(飼育動物たちの生活環境を豊かにする様々な工夫・試み)を推進するため、市民 ZOO ネットワークにより創設された。今年度は21件の取り組みに対して全国から28通の応募があり、審査の結果、大賞1件、その他各賞4件が選ばれた。

同館は、流水産卵性の小型サンショウウオの飼育環境整備に挑戦し、その結果として繁殖に成功した点が評価された。

これらの種は、野生での知見も乏しく、飼育下での繁殖がきわめて困難だとされてきた。そこで、同館では野外での産卵環境を参考に、日長や水温のコントロールのもと、地下伏流水を再現し、暗幕で遮光した繁殖場所を用意するなどのエンリッチメントを行った。

2009年に取り組みを始め、2011年に初繁殖し、以後、毎年継続して繁殖。繁殖に適した水温や特徴的な繁殖行動、産卵数、幼生の成長過程といった学術的に貴重なデータも得られ、論文などの成果が上げられている点も評価されている。また、展示のための個体を飼育下繁殖により維持することができ、野外から採取し続ける必要がなくなったという意義もある。

両生類のエンリッチメントは、行動の変化を定量化しにくいため評価が難しいとされている。この取り組みでは、飼育担当者が日常的に野外環境でのフィールドワークにも取り組んでおり、その知見を活かしつつ、個体に環境の選択肢を与える様々な試行錯誤を重ねてきたという。その結果、繁殖を引き出す環境の再現という成果に至った。

同館は、高い飼育技術が両生類の福祉に貢献したといえるとしている。

《鈴木まゆこ》

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