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保護猫、あの日の約束…里親になる決意と猫との生活

同居開始1日目
  • 同居開始1日目
  • 初めて会った日
  • 絶対に懐くもんか、の姿勢
  • こちらを見ていないようで、しっかり見ているツンデレ猫
  • 心を開いてきた猫
  • 甘えたい気分MAXの猫
  • かぎしっぽ

猫はペットショップから飼うもの、と思っていた私が、偶然のご縁で保護猫の里親となりました。「あれ?なんか昨日よりも可愛いね?」、日々更新されていく可愛さにデレデレすると同時に、飼ってみて初めて“保護猫にしかない魅力”を知りました。これから猫をお迎えしたい方へ、我が家の体験談をお話しします。

“銀色の毛並み”の猫との出会い

「猫を飼おうかな」。シーンと静まり返るひとり暮らしの部屋で、さみしさを感じたことが始まりでした。飼うなら「グレーの毛並み」で「しましま模様」の猫がいい。あちこちのペットショップを訪ねたものの、思った以上に、タイプの子には出会えませんでした。

そんなある日、たまたま通りかかった公園で、ボランティア団体が何匹かの猫を連れて里親募集イベントを開いていました。そうか保護猫という選択肢もあった、とケージを覗いたとき、そこにようやく理想の猫が!人生初の一目惚れです。グレーというよりも「銀色の毛並み」の猫。この子がいい。こうして、念願の“同居人”をお迎えしました。

初めて会った日初めて会った日

里親になるための「2つの約束」

初めて出会ったとき、猫は生後6か月。私の家に来たときは生後8か月でした。この2か月の間にボランティア団体の方と、猫と暮らすための準備を進めました。譲渡条件は2つ、「去勢・避妊手術を受けること」と「飼育する家のチェック」でした。

雌猫だったので、まずは避妊手術。繁殖を望まない場合は避妊手術を受けたほうがいいこと、そのことで予防できる病気がたくさんあること、万が一脱走しても妊娠するリスクがないこと…など、知識としては知っていました。しかし、いざ手術となると費用はどのくらいか、術後の猫がどのような状態になるのか、意外と知らないことが多くて戸惑いました。そんな時、ボランティア団体の方と術後の経過を共有させていただくことで不安が軽くなったのを覚えています。ちなみに手術費用ですが、一般的な相場が2~3万円のところ、ボランティア団体の紹介で1万円で手術を受けることができました。

また、譲渡日前にボランティア団体の方が家に来て、猫にとって危険なものがないかのチェックがありました。感電事故を防ぐためにコンセントの導線に気を付ける、誤飲の可能性があるモノを放置しない、と万全の態勢で臨んだつもりでしたが、ボランティア団体の方は花瓶を指して一言、「花束のカスミソウ、危ないです」と。驚きました。猫が食べてしまうと中毒症状を起こしてしまうリスクがあるそうです。はじめは「譲渡条件」と聞いて正直身構えていましたが、保護猫ならではのこの手厚いバックアップによって疑問や不安を解消することができました。

迎えた日、私の決意

いよいよ猫をお迎えする日。その日は前日からドキドキしてあまり眠れませんでした。当日ボランティア団体の方に連れてこられた銀色の猫。真っ赤な可愛い首輪をつけていました。「ごはんはこのくらい食べるよ」「おもちゃはこういうのが好きだよ」、一通りの“引き継ぎ”を終えると、ボランティア団体の方が最後に一言、「必ずしあわせにしてね。万が一飼えなくなったら、いつでも私たちに返してね」と。衝撃でした。てっきり、「必ず一生面倒みてね」と念を押されると思っていたからです。

ボランティア団体の方々は、猫を譲渡すればするほど「諸事情で飼えなくなった」里親もたくさん目にしてきたんだと思います。団体によって指針はそれぞれでしょうが、「猫のしあわせのためなら、もう一度でも何度でも引き取る」という強い想いを受けて改めて、私は命を預かる覚悟ができました。覚悟だとか決意だとか、文字にすると少し大げさに見えますが、ペットショップからお迎えしようと里親としてお迎えしようと、生き物を飼うためには必要な心構えだと思います。

こちらを見ていないようで、しっかり見ているツンデレ猫こちらを見ていないようで、しっかり見ているツンデレ猫

そして見事に尻に敷かれ、振り回される

猫が来て最初の1か月は、なかなか大変でした。きょろきょろしながら部屋を歩き回る姿がたまらなく可愛い一方で、環境が変わったストレスで攻撃してくることもしょっちゅうで。噛まれた腕から派手に出血した日はショックが大きすぎて思わず涙が出ました。あんなに感動したはずの「何度でも引き取るから」の言葉さえ、あれは「懐かなかったら返してね」の意味だったのでは、とひねくれて解釈しそうになることもありました。

ところが、毎日ごはんをあげているうちに、猫は膝の上に乗ってくるようになりました。臭いトイレを掃除しているうちに、私の布団に入って眠るようになりました。嫌がられながらも爪を切ると、部屋の隅に逃げて威嚇します…が、チャオチュール(猫たちに絶大な人気を誇るおやつ)を見せると、駆け寄ってきて甘えるようになりました。

里親になって初めて気付いたことですが、ペットショップから猫を飼っていたとしても、必ずしもお利口さんとは限りません。もしかしたら保護猫よりも暴れたかもしれません。そうすると、猫飼い初心者でどう向き合えばいいのか分からない私は、もしかしたらひとりで暮らしていた頃よりもさらに孤独を感じたかもしれないという気もしました。“必ずしあわせにしてね”…私以外の人までもが、猫のしあわせを祈っている。あの言葉は今でも私の宝物です。

猫、もうすぐ4歳になります。仕事から帰ってきたときに「おかえり!」と駆け寄ってきてくれる存在が欲しくて迎えたはずの猫。しかし夏はクーラーの前から動かず、冬は暖房の前を譲らず。忙しい出勤前は「撫でて!」とせがんできたくせに…。そんなツンデレに振り回される日々が、いま本当に幸せです。

心を開いてきた猫心を開いてきた猫

こさい たろ:フォトグラファー
2年前に、猫と一緒にお嫁入りしました。現在、夫と猫と娘(0才)の3人&1匹でなかよく暮らしています。

猫:名前はシェリル。
ラテン語で「愛しい人」「大切な人」の意味。(英語の「Dear」の語源という説も)。銀色の毛並みで“かぎしっぽ”。L字に曲がった尻尾でたくさんのしあわせを招いています。

《こさいたろ》

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