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ニホンザルの画像認識率80%を達成…高専生が取り組む、AIを用いた獣害対策システムの開発

国際高専2年生がAIを用いた獣害対策システムの開発に取り組む
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国際高等専門学校では、2年生3名が授業の一環で、AIを使ったサル認識システムの開発に取り組んでおり、12月6日に石川県森林公園内にある森林動物園で行った実証実験では、ニホンザルの画像認識率が最大80%にまで到達した。

国際高専では今後も学生による研究プロジェクトを継続的に進め、将来的には、24時間無人でサルを監視し、農作物被害を未然に防ぐシステムの実現を目指しているという。

全国的には、AIでツキノワグマを検出し、獣害対策に活かす研究については報告されているが、ニホンザルに関する研究は行われていない。一方、ニホンザルに関しては、過疎化に伴う休耕田の増加で野生動物の生育域が人家近くまで拡大しており、国際高専白山麓キャンパスが立地する石川県白山市でも山間部で被害が見られ、年々行動域が北(平野部)へと拡大。2017年度の被害額は270万円に上っているという。

国際高専では、地域の問題発見と解決策の創出をプロトタイプを作りながら考えていく「エンジニアリングデザイン」という授業が教育の中心軸として行われており、2年後学期の「エンジニアリングデザインIIB」で、畠中義基さん、杉晃太朗さん、佐藤俊太朗さんの3人は、白山麓におけるサル被害対策をテーマに取り組んだ。

キャンパスがある白山市瀬戸地域ではサルによる被害が多数確認され、電気柵等の獣害対策が行われているが、電気柵に触れずに農地に侵入してしまう器用なサルも現れており、そのため常に農地の監視を行う必要があった。また高齢者が多い地域では、電気柵の設置自体に多大な労力がかかり、こうした面での改善も求められているそうだ。

学生たちはコロナ禍でフィールドワークが制限されていたため、最初はインターネット上にあるサルの画像をAIに学習させていたとのこと。しかしこれでは様々な姿勢、角度からの学習が不十分だったため、11月7日にニホンザル園がある森林動物園でAI学習用のサル画像を様々な角度から収集したのだそう。この時点ではまだ20%から30%程度の認識率だったが、収集した画像約7000枚をAIに新たに学習させることで、12月6日の実験では、65%から80%の認識率を達成することに成功したという。

今後は自然環境の中で動き回るサルの認識率を高めるため、白山麓の畑にいるサルをビデオカメラで撮影し、学習素材をさらに増やすことで適用範囲の拡大を目指している。

さらに2021年度から社会実装を進め、サルが畑に侵入した際は所有者のスマートフォンに知らせるシステムの構築を目指すという。また2022年度以降は、監視範囲の広域化を進めるとともに、ロボットやドローンなどを使った威嚇排除技術も構築。2024年度には隣接農地での実運用を進める考えだとしている。

《鈴木まゆこ》

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