日本野鳥の会は、近年減少が示唆されているツバメの現状を明らかにするため、2013年から同会ホームページ上に「ツバメの子育て状況調査」を設置し、昨年2020年までの8年間に寄せられた、のべ5351人からの1万586巣の観察情報を分析、ツバメの子育ての現状について発表した。
データによると、1つの巣から雛が巣立つ平均数(8年間の全国平均)は約4羽。ただし、市街地では3.8羽、それ以外では4.2羽と、都市化した場所は子育てに適さない可能性があることがわかった。
子育ての失敗の要因の多くは、カラスやヘビの捕食、巣の落下など自然の中で起こる出来事だが、1割弱が人による巣の撤去であることが報告されている。
また、過疎化により人口が減少した地域では、人がいないことによって、ツバメの卵や雛が捕食される危険性が高くなり、ツバメの営巣が減っている可能性があることもわかった。
古くからツバメは農作物の害虫を食べる益鳥として、また、巣をかけた家には幸福を招く鳥として親しまれてきた。しかし、近年の開発やライフスタイルの変化などとともにツバメが子育てできる環境が減り、都市部での巣立ち雛の減少と、過疎地域での営巣の減少が進んでいることが明らかになった。
同会は、引き続き、市民参加によるツバメの全国調査を実施しモニタリングをするとともに、ツバメを観察する際の注意点、ポイント等をまとめたパンフレット「ようこそツバメ」の配布や、観察会などを通じて、ツバメを温かく見守ってくれる人々を増やし、人と自然の共存の象徴であるツバメが、いつまでも日本で子育てできるような社会を目指していくとしている。