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その動物らしい動き、本能的行動を目覚めさせる…相手の気持ちになって考える旭山動物園の行動展示【アニマルワールドカップ2021】

「動物の本当の姿を知ろう~旭山動物園の行動展示とは~」(アニマルワールドカップ2021)
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  • 旭山動物園の坂東元園長

北海道旭山市の山の傾斜地にその地を構える日本最北の動物園、「旭山動物園」。その坂東元園長が、「Animal World Cup 2021(アニマルワールドカップ2021)」に登場し、「動物の本当の姿を知ろう~旭山動物園の行動展示とは~」と題して動物の生態や同園の取り組みを紹介した。

坂東園長は冒頭、行動展示の第一人者として、日本のペット種1位の犬について「犬も人と一緒に暮らす地域動物の一つ。犬種によって、物や人、生き物に対する反応が違う」と語った。

「そんな犬を、犬という大きな枠でとらえてしまうと、見えるものもなかなか見えなくなってくる。その犬種らしさ、その犬の個性をどう見つけてあげるかが大事」と伝え、“その動物が本来持っているもの”を尊重する心構えを教えてくれた。

「本能的な行動を呼び覚ます」

続いて坂東園長は、旭山動物園の行動展示がわかる例として、カバやキリンの飼育について紹介。「動物園にいる動物たちは、野生動物だけど、基本的に園内では何もしなくていい。食料も時間通りに誰かが与えてくれる。本来その動物が持つ野生の本能を出さなくても、生きていける」とし、旭山動物園にいるカバやキリンの飼育ポイントについて話した。

「カバはもともと夜に行動する動物。日中は水中にまったりと浸かって、夕方から陸に上がって草を食んだりする。だから動物園でも日中は水中でぼーっとしてることが多い。

でも、アフリカなどに生息する野生のカバは、水中で交尾し、出産し、授乳する。水中では眠ってるだけじゃなくて、“カバの営み”がある。だから旭山動物園でも、傾斜のある地形を利用して、アフリカの川や沼のように深い部分(水深3m)を作ってあげて、水の中での営み方、本能的な行動を呼び覚ますことを心がけている」

「動物の表情も違ってくる」

カバの放飼場は屋外と屋内にあり、屋内には深さ約3mのプールが備わる。水中でのカバの動きをあらゆる角度から観察できる施設だ。坂東園長の案内で、水深部分がみえる地下階のガラスケースからカバの動きをみると、その動きに衝撃を覚える。なんと、体重の重いカバが水底を軽々と走っている。走っているときの関節の動きもよくわかる。

「こうして水の深い部分を作ってあげると、カバの野生的・本能的な部分が目覚めて、水中を走り回る楽しさをカバも観覧者も体感する。本能的な姿を見せることも、行動展示の一つ。さらに人と接するようになると、その動物の表情も違ってくる」という。

「自分ってこんな動きができるんだ」と気付く

さらに驚くのは、呼吸のために水面へ顔を出して、再び水底に降りてくるときだ。カバが人の気配を感じてしきりに追いかけてきて、いったん水中に顔を出して呼吸をし、すーっと自重に任せて再び水底に降りてくる。その降り方もカバそれぞれが体得したスタイルで降りてくるという。

坂東園長は最後に、こう教えてくれた。

「野生に近い環境を作ってあげると、その動物が『自分ってこんなことができるんだ』『自分ってこんな動きができるんだ』と気付く。野生での本能が目覚めるように、本当に気持ちよさそうに行動する」

《大野雅人》

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