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アメリカで大流行したウサギの感染症が収束へ

今回のパンデミックは、2020年3月にニューメキシコ州で始まったとされている
  • 今回のパンデミックは、2020年3月にニューメキシコ州で始まったとされている
  • 野生のジャックラビット
  • 兎出血病(RHD)ウイルスはペットのウサギも感染する
  • ウサギの飼い主は、動物園等で他のウサギと触れ合った後で手洗いに努めたい
  • RHDはアメリカ南西部に広く流行したと言われている

アメリカ西部を中心とした地域で、昨年春より流行していた死亡率の高いウサギの感染症。一時は全米に広がるパンデミック(大流行)も心配されたが、収束の兆しが見えたようだ。

感染力と死亡率の高いウサギの感染症・RHD

「兎出血病(RHD)」ウイルスは、2020年3月に南西部のニューメキシコ州で見つかった野ウサギの死骸から検出されたのが今回のパンデミックの始まりとされている。その後、この病気は隣接するコロラド州、アリゾナ州、テキサス州およびメキシコにも拡大。カリフォルニア州でも見つかり、アメリカ獣医師会は全米に拡大する恐れがあると発表していた。

大流行は収束に向かう

「西部のウサギは致死性の高いウイルス感染症の大流行で数を減らしたが、現在、個体数が急速に回復している模様」と7月8日にアメリカ獣医師会が発表した。アメリカ農務省・動植物検疫局(APHIS)によると、RHDから生き残った個体や感染を免れたウサギが速いペースで繁殖しているという。その結果、ウサギを捕食する肉食動物を含め、食物連鎖への大きな影響も見られなかったと報告している。

この病気を引き起こすウイルスは感染力が非常に高いとともに、死亡率も50%から90%とされている。感染した場合は無症状で突然死する場合もあるそうだが、発熱や内臓からの出血、肝臓の壊死など重篤な症状を引き起こすとも言われている。ウイルスが人間の衣服や靴などに付着して持ち込まれると、家庭で飼育されているペットのウサギにも感染リスクがあると注意が呼びかけられていた。

限定的な感染からパンデミックへ

このウイルスは2018年2月以降、カナダのブリティッシュ・コロンビア州やアメリカのオハイオ州、ワシントン州、ニューヨーク市などで限定的に確認されていた。2020年3月のニューメキシコ州以降、少なくとも11の州で確認され、ペットのウサギや野生の「ジャックウサギ(jackrabbit)」など多数が死亡した。

野生のジャックラビット野生のジャックラビット

アリゾナ州では昨年春以降、州全域で感染が確認されていた。一部の地域では、「至る所でウサギが死んでいる」という報告もあったそうだ。

今年に入って沈静化の様相

今年はウイルスによる死亡報告が減少しており、感染率低下の兆候と期待されている。ニューメキシコ州では、春に野ウサギが死んでいるという報告が数件あっただけで、州内における個体数もパンデミック以前のレベルにほぼ回復しているという。

RHDはアメリカ南西部に広く流行したと言われているRHDはアメリカ南西部に広く流行したと言われている

アメリカ以外でも発生しているRHD

日本では、一部でRHDによるウサギの死亡が報告されている。昨年は7件の飼育施設で合計43羽が感染した。今年は5月までで1件・1羽の報告に留まっており、流行の兆しは見られない。

ウサギの飼い主は、動物園等で他のウサギと触れ合った後で手洗いに努めたいウサギの飼い主は、動物園等で他のウサギと触れ合った後で手洗いに努めたい

念のためにウサギの飼い主は、動物園などでペット以外のウサギと触れ合った後は手洗いなどで感染予防に努めるのが安心だろう。なお、人間を含むウサギ以外の動物はこのウイルスに感染しないとされている。

《石川徹》

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