盲導犬の育成などを行う日本盲導犬協会が11月25日、オンラインで「全国一斉盲導犬教室」を開催した。同協会は視覚障害者が自分らしく生きられる社会作りを目指し、「目の見えない人、目の見えにくい人」に対するリハビリテーションに取り組んでいる。さらに盲導犬だけでなく視覚障害全般に関して、社会の理解を促進するための様々な活動を継続的に行っている。
将来に向けた小学生への理解促進
近年、特に力を入れているのが教育分野だという。主に小学校を対象とした講義や実演を行い、将来を担う子どもたちに盲導犬や視覚障害者について理解してもらう機会を設けている。「全国一斉盲導犬教室」は、“10年後の未来を創る”ことを目指して今年の6月に始まり、今回で3回目の開催となった。オンライン会議システムによって多数の参加が可能で、この日も北は福島から南は宮崎まで13都府県から上限いっぱいの20校が参加した。
盲導犬のデモンストレーション
午前11時から1時間にわたって行われた授業は、ハンドラーとゴールデン・レトリーバー「ドナ」によるデモンストレーションで始まった。盲導犬の仕事や訓練の様子が、静岡県富士宮市にある日本盲導犬総合センター(愛称:富士ハーネス)から生中継された。曲がり角と段差、障害物を盲導犬がどう教えるのか。ユーザーは、どのようにして盲導犬と目的地に向かうのかが良く理解できた。
盲導犬がそうした動作を覚えるプロセスも、一般が想像する「訓練」とは少し違うようだ。犬にも得意・不得意や好き嫌いがあるため、1頭1頭の個性に合わせた訓練方法で教えることの大切さが説明された。ドナはホースを短く切ったおもちゃがお気に入りとのことで、楽しそうにハンドラーの指示を学習する姿が印象的だった。

視覚障害について知るきっかけも
続いて、盲導犬ユーザーである同協会の押野まゆさんとパートナーの「バロン」から、目の見えない人・目の見えにくい人の生活が紹介された。押野さんは、スマートフォンやパソコンの画面上に表示された文字を音声で読み上げるソフトや、点字入力の電子手帳などを仕事や日常生活で活用しているそうだ。その他、ユニバーサルデザインが施されたゲームや点字が書かれたトランプ、スマートフォンのカメラと連動して写真に撮ったものを音声で教えるアプリなど、普段触れることの少ない世界を垣間見る機会は参加した小学生にとって貴重なものだっただろう。
押野さんとバロンは、遊びも仕事も常に一緒だそうだ。押野さんが事務所で仕事している間、バロンは足元でのんびりと過ごす。「ちょっとやんちゃで甘えん坊」ということで、休憩時間は他の職員に遊んでもらうこともあるという。

犬はそっとしておき、人には一声
授業では、盲導犬に出会った場合の対応についてのアドバイスもあった。犬に対しては声を掛けない、触らない、食べ物をあげない、顔目を見詰めないという4つを守ってほしいとの要望だった。盲導犬が不意な動きをしてしまい、ユーザーが困ったり危険な目に遭ったりするかもしれないからだ。
一方、視覚障害者に対しては一声かけることが大切だという。例えば犬は信号を見分けることができないため、ユーザーは周囲の音を聞いて判断し交差点を渡っている。盲導犬を連れている人や白杖を持った人を見た時は、「盲導犬を連れた方」とか「白い杖を持った方」など、分かりやすく声を掛けてサポートするのが良いそうだ。声を掛けるのが「ちょっと恥ずかしい時は、"おはようございます" など、簡単な挨拶から初めてみてください」とのワンポイントアドバイスもあった。
第5回以降の参加校を募集中
オンラインによる「全国一斉盲導犬教室」は、今年度中にあと3回開催が予定されている。そのうち、2022年1月26日に行われる第5回と、2月2日の第6回については参加校を募集中だ(申し込み締切りは12月24日18時)。盲導犬や視覚障害だけでなく、人間と動物の共生についても考える良いきっかけになるのではないだろうか。
また、富士山のふもとで「富士ハーネス」とも呼ばれている日本盲導犬総合センターは、予約なしで見学ができる。クルマが必要だが、富士山へのドライブの際に立ち寄ってみるのも良いだろう。