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【猫がなりやすい病気】肥満細胞腫編…皮膚型は皮膚腫瘍で最多、シャム猫は特に注意

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どんな病気?

この病気は、人ではほとんどない病気なので聞きなじみがないだろう。肥満細胞という白血球の一種の細胞が腫瘍化する疾患で、タイプとしては皮膚型と内蔵型が存在し、それぞれの発生頻度はほぼ同程度だ。皮膚型は猫の皮膚腫瘍で最も多い。

内蔵型はさらに脾臓に発生する脾臓型と消化管に発生する消化管型がある。消化管型肥満細胞腫は小腸に好発しリンパ腫、腺癌についで3番目に多い。原因ははっきり分かっておらず、発症の平均年齢は10歳で性差はなく、好発種は皮膚型ではシャム猫と言われている。

皮膚型肥満細胞腫の症状としては、0.5-3センチの円形で無毛の腫瘤ができたと病院に来院するケースが多い。小さいものは見つけるのが困難で検診時に偶発的に見つかることもある。好発部は頭部、頸部であるがリンパ節や脾臓への転移がないかは要チェックが必要である。

内蔵型肥満細胞腫は広範囲な播種や転移が多く、転移する臓器としては肝臓、腹腔内リンパ節、骨髄、肺、腸管の順に多い。症状としては、食欲不振、体重減少、嘔吐、血便、発熱、呼吸困難(貧血や腹水により1/3の症例で見られる)がある。脾臓型の場合は検診時に脾臓の腫れが認められて発見されることもある。

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診断は針吸引生検による細胞診で行われ、特徴的な腫瘍細胞が取れる。この時、腫瘍細胞に含まれるヒスタミン、ヘパリンといった生理活性物質により腫瘍周囲の浮腫や紅斑、ヒスタミンの血管拡張作用による血圧低下や嘔吐中枢への刺激による嘔吐が起こることがあるので、事前に抗ヒスタミン薬を投与する方が良い。診断されたら、猫は犬と違い明確なグレード分類はされていないが、病期の分類を行うため所属リンパ節の針吸引生検、血液中に肥満細胞が出現するような肥満細胞血症になっていないかをバフィーコートで確認すること、腹部エコー検査での転移がないかの評価が必要になる。

かかってしまったら?

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皮膚型でも内蔵型でも第一選択は外科手術であり、転移の有無や飼い主の希望により術後の化学療法や放射線治療が行われる。

皮膚型は比較的緩やかな経過をたどるものが多いので、外科手術単独で良好な予後が得られる。ただし、内蔵の肥満細胞腫の転移である可能性もあるため、脾臓や小腸の異常がないかを腹部のエコー検査で確認した上で転移が見られた場合は、トセラニブ(パラディア)、イマチニブ(グリベック)といった分子標的薬や放射線治療の適用となる。

消化管型は領域リンパ節や肝臓への転移が多く、広範囲切除でも予後不良が多い。脾臓型は脾臓摘出が行われるが、これは転移があっても手術で延命効果が期待できるので、骨髄や末梢血中への腫瘍細胞の出現があっても行うべきである。予後不良因子として、食欲不振や体重減少が挙げられるので術後に内科療法を行わないにしても、定期的な通院で一般状態の把握と肥満細胞血症になっていないかの確認が必要になってくる。

内科療法としてはどの型においても分子標的薬であるトセラニブ、イマチニブが使われる。トセラニブは本来は犬の肥満細胞腫で使われる薬だが、猫では副作用は軽度(消化器症状、肝障害、好中球減少症、血小板減少症)で有効性があることが分かって使われるようになってきた。経口で投薬できるからだ。頻度としては1日1回から2日に1回なので、ご飯に混ぜて薬を食べられる子であれば無理なく投薬できる。

また、肥満細胞から出されるヒスタミンという生理活性物質による胃十二指腸潰瘍や低血圧ショックが見られることがあるので、ヒスタミン受容体拮抗薬や胃粘膜保護薬の服用が適応となることもある。

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予防法は?

原因がはっきり分かっていないので予防は難しいが、皮膚型の好発種がシャムなので特に皮膚のできものがないかは日常的によく見て注意してほしい。転移前に外科手術を行うことが長期予後につながるので、少なくとも1年に1回の定期的な検診を行っていただきたい。

《M.M》

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