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NHK出版、『ヒトの社会の起源は動物たちが知っている 「利他心」の進化論』を刊行

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NHK出版、『ヒトの社会の起源は動物たちが知っている 「利他心」の進化論』を刊行
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NHK出版は、『ヒトの社会の起源は動物たちが知っている 「利他心」の進化論』を7月30日に刊行した。

私たちにはなぜ、仲間を作り、分業し、社会を形成する知性が発達してきたのか。現在、私たちが当たり前のように営んでいる高度な社会は、生物の長い進化の過程において「利他主義」と「協力」をベースに生まれたものだが、現在の社会が形成されるまでの間に何が起きていたのか。

その謎を解く鍵は、ムクドリやオオカミ、アリ、クモなどの、人類よりはるか昔から存在している他の生き物の生態や、進化の過程が握っている。同書は、そう確信する著者、エドワード・ウィルソンの思想をコンパクトに凝縮した1冊。

同書の原題は「Genesis」で、聖書の最初の書「創世記」と同タイトルが付けられている。聖書は、この世界とそこに暮らす私たち人類を含めた生物がどのようにして生まれたのかを説明する、世界各地の神話や伝説を物語っている。

一方、同書では、遺伝学的・生物学的視点から、この地球上に生命が誕生し、長い歳月をかけてより複雑な生物へと進化し、やがて社会や言語が発生するまでの進化の歩みを、6つの段階に分けて迫っている。

その中で著者が特に重視するのが、第5段階の「社会の発生」だという。アリや人など、集団の中に不妊の階級を持つことを特徴とする真社会性を備えた生物種が、その高度で複雑な社会によって、生態系における圧倒的な優位性を獲得した背景を読み解いていく。

さらに、社会性を持つ生物が多く存在する一方で、真社会性を持つ種がほとんど存在してこなかったのはなぜか、生物が社会を作る条件としての利他主義や分業といった行動は、どのような要因によって生まれるのか、などの疑問にも答えていく。

同社は、長い歳月をかけて人類が培ってきた「社会」や「利他」について根源的に捉え直す同書は、現在のコロナ禍によって変容しつつある社会や、人との関わり方に多くのヒントを与えてくれるかもしれないとしている。

《鈴木まゆこ》

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