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愛犬家同士が助け合う「迷子犬の掲示板」…ネットを活用し、早く無事に帰れるよう手助け

幹部スタッフのクーさん(中央)、モコさん(向かって左)とラテさん
  • 幹部スタッフのクーさん(中央)、モコさん(向かって左)とラテさん
  • 「愛犬家同士の助け合い」が基本理念
  • 最近はYouTubeにも進出
  • この「ふたり」から始まった全国9万1000人の愛犬家ネットワーク
  • 認知向上用のカードやバッジ類は全てメンバーの企画・製作
  • スタッフのユニフォーム
  • リーフレットも自作
  • Tシャツは名前入り

近年、多くの愛犬家がインスタグラムやツイッターなどを活用している。SNSを通じて知り合った飼い主が交流を深め、友人関係を築いたりオフ会などのイベントに発展したりすることも少なくない。

マスコミ報道などではネガティブな面が強調されやすいSNSだが、一方で大きな役割も果たしている。

愛犬家同士の助け合いで迷子犬を保護

ここ数年、SNSなどで赤いハートのアイコンを目にするようになった。「迷子犬の掲示板」は、大切な家族の一員が迷子になってしまった時、インターネットを活用した「愛犬家同士の助け合い」で解決につなげようという活動である。

幹部スタッフのクーさん(中央)、モコさん(向かって左)とラテさん

また、「供血犬」のお願いに関する情報も掲載している。人間のような血液バンクがない動物の場合、輸血用血液の入手が困難なケースが多いからだ。

「愛犬家同士の助け合い」が基本理念

4種類のデジタルプラットフォームを活用

迷子犬の掲示板は、全国にいる34名(2020年10月現在)のボランティアスタッフが分業体制で運営している。インスタグラムの場合、11の地方版(北海道、東北、北関東、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄)と全国版合わせて12のアカウントを管理。フェイスブックでは、インスタグラムの11地方に千葉県と神奈川県を加えた13のエリアをカバーしている。その他にブログの「アメブロ」も活用しており、ツイッターを合わせると4種類のデジタルプラットフォームを駆使する充実の体制を敷いている。

最近はYouTubeにも進出

一個人のアイディアから始まり、10万人に迫るネットワークに成長

迷子犬の掲示板で代表を務めるのは、都内在住の木崎亜紀さん。2頭のトイプードルと暮らしている木崎さんも、元々は愛犬の写真をインスタグラムに投稿して楽しんでいた一飼い主だったという。「(タイムラインに時々)流れてくる迷子犬に関する情報が他人事には思えず、せっかくのSNSをもっとうまく活用できないかな?」と思ったのがきっかけだそうだ。

この「ふたり」から始まった全国91000人の愛犬家ネットワーク

そんな思いから2015年10月に木崎さんが一人で立ち上げたこの掲示板だが、わずか5年で急成長。2020年10月現在、インスタグラムには約7万、ツイッターには約1万4000のフォロワーがおり、他のプラットフォームを合わせると合計9万2000人の愛犬家ネットワークに成長している。そこで取り扱う迷子犬や供血犬募集の情報は月間450件に及ぶという。

情報のスピードと安心感

こうした広範囲なネットワークに加え、情報発信および更新のスピードもこの掲示板の特徴と言える。筆者も知人の愛犬が迷子になった時に利用した経験があるが、こちらの依頼前に、飼い主の投稿を見た掲示板の担当者から飼い主側にコンタクトがあったそうだ。保護された愛犬に再会した際も、飼い主本人が「見つかりました!」と投稿した直後に掲示板のアカウントにリポストされていた。「心配かけたので、取り急ぎ報告」と知人からダイレクトメッセージ(DM)が届いたのはその少し後で、そのスピードには驚かされた。

飼い主の投稿後、即座にリポストするスピードに驚き

このように情報の鮮度、つまり信頼性確保には力を入れており、掲載されている情報は常に未解決の案件だそうだ。木崎さんによると、「今も探しているのか、既に解決したのか分からない古い情報があると皆さん真剣に見てくださいません。掲示版への掲載は長くて3ヶ月。それ以上になったものは、飼い主さんに確認して必要であれば再度投稿していただくようにしています」とのことだ。

また、企業などが運営している迷子犬サイトでは、個人情報をインプットすることが拡散の条件になっているケースもある。迷子犬の掲示板は個人情報が不要なため、安心して使用できる良さもある。

愛犬家として寄り添うことが解決にもつながる

現在扱う月間約450件のうち、飼い主などからDMで受ける掲載依頼は100件ほどだそうだ。その他は、「巡回担当」スタッフがSNSを検索し、投稿者への確認を行った上で、「リポスト担当」が掲示板への投稿を行う体制を敷いている。

非常に手間のかかるプロセスだと思うが、こうしたサポートを大切にしているそうだ。

「飼い主さんは、『迷子にしちゃった!』とパニックになります。それが普通です。同じ愛犬家として、よく分かります。そんな時に、落ち着いてお手伝いし、飼い主さんの気持ちに寄り添ってアドバイスするのが私たちの役目だと思っていますし、解決のためにも重要なんです」(木崎さん)

SNSでおなじみの赤いハートマーク

依頼者からの報告によって、明らかにこの掲示板を通じて解決に至ったと判明している案件だけでもこれまでに約270件あるそうだ。多くの場合、飼い主はこの掲示板以外にも様々な手段で愛犬を探すため、成果を正確に測ることは難しいだろう。とはいえ、何らかの形で迷子犬の掲示板が貢献した数は、270頭を優に超えていると考えられる。さらに、数字に現れない間接的な貢献も含めれば、その存在が大きなものであるのは間違いないだろう。

2つの大切なこと…「走る赤ちゃん」を迷子にさせない、愛犬家同士が助け合う

この活動を通じて木崎さんが感じるのは、「もしも」を念頭に置いた日常の管理と助け合いの大切さだそうだ。

「"迷子犬の掲示版"を運営してはいますが、まずは、迷子にしないことが一番ですよね。『うちは大丈夫』というのは無いんです。どんなにしつけができていても、例えば突然の大きな音に驚いてパニックになり、迷子になることもあり得ます。『走る赤ちゃん』だと思って、常にもしもの対策をしておくのが一番大切だということを、私たちを含め、飼い主は意識して欲しいと思います」

「不幸にして迷子になってしまった時には、私たちもお手伝いします。『明日は我が身』と思って親身にサポートする『愛犬家同士の助け合い』が飼い主さんの力にもなると思います。そんな愛犬家同士の助け合いが、この掲示板の基本なんです」

今後に向けて

迷子にしないための啓蒙活動に加えて、災害対策など飼い主と愛犬に有益な幅広い情報を継続的に発信する活動にも力を入れたいとのこと。

また、1人でも多くの人に知られることが早期の発見にもつながるため、認知向上を図る活動にも継続的に取り組んでいる。その一環として、告知用リーフレットやカード、缶バッジなどをスタッフが協力して製作し、直接交渉して賛同を得られた「協力店」を通じた配布を行っているそうだ。

認知向上用のカードやバッジ類は全てメンバーの企画・製作

全員完全無償のボランティアだそうだが、そうした製作物は迷子札、ラインスタンプ、ロゴ入りユニフォームやTシャツなど「応援グッズ」の売上や、寄付で賄われているという。

スタッフのユニフォーム

“普通の愛犬家”が無理なく活動してきたのが継続の鍵

「普通の愛犬家が力を合わせて運営している」と木崎さんが話す迷子犬の掲示板は、「できる人が、できる範囲で、できる事をやる」無理のないスタイルで続けてきたそうだ。運営やグッズなどに関するアイディアは、気軽にラインで意見交換を行う。イラストを描ける人がポスターをデザインしたり、経理の経験がある人が帳簿をつけたり、それぞれの得意分野を生かしながら拡充を続けてきた。

できるだけ早く家族のもとに帰したいという思い

5年で10万人近くのネットワークにまで拡大した迷子犬の掲示板。スタッフが力を合わせて運営しているとはいえ苦労も多いだろう。これまで続けてきた理由を、木崎さんは以下のように語った。

リーフレットも自作

「迷子になったワンちゃんが、『1分1秒でも早く無事に飼い主さんのもとに帰れるよう、愛犬家同士で助け合いたい』というシンプルな思いです。地域や各SNS間など、横の連携や情報発信のスピード、アクセスのしやすさなど、他にないシステムができたので(愛犬が迷子になってしまった飼い主さんから)求められる存在になりました。その期待には応えたいです。『無事に帰ってきました!』という報告が一番の原動力です。でも、将来は国や自治体がやってくれればいいんですけどね(笑)」

その表情からは、純粋に犬たちの幸せを願う愛犬家としての思いが感じられた。また、迷子犬が減ることで各自治体の「愛護センター」に収容される頭数の減少にもつながるはずだ。迷子犬の掲示板は、殺処分ゼロに向けた取り組みへの貢献にもつながっていく活動と言えるだろう。

Tシャツは名前入り

「迷子犬の掲示板」利用方法

「走る赤ちゃん」は手元から離さないことが大切だが、もし何らかのアクシデントで迷子になった場合に備え、「迷子犬の掲示板」の利用方法を以下にまとめる。

1.依頼方法

・ツイッター @maigo_dog_
自身のツイッターアカウントに投稿する際に@maigo_dog_をタグ付けしてリツイートを依頼

・インスタグラム @maigo_dog(全国版のアカウント)
自身のインスタグラムアカウントに投稿後、インスタグラムのDMでリポストを依頼(アカウントが「非公開」設定の場合は「公開」に設定を変更 。その後、掲示板スタッフが全国版と該当する地方版の両方に掲載

・アメブロ @maigo-dog-maigo
自身のブログを更新後、DMで「リブログ」を依頼

・フェイスブック
13のグループのうち、居住地域のグループに参加申請。承認後、自身による投稿を行う(北海道、東北、北関東、関東、神奈川、千葉、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州、沖縄)

2. 必要な情報
・目的:愛犬を探している/迷子犬を保護して飼い主を探している
・名前:探している愛犬の名前(保護している場合は首輪などで判明すれば)
・性別
・犬種と色
・迷子になった(保護した)場所
・迷子になった(保護した)日時
・特徴
・届け出た警察署や保健所の連絡先

注意1:飼い主本人あるいは本人に直接依頼された代理人の方の投稿のみ
注意2:状況に進展があった場合、迷子犬の掲示板まで速やかに連絡を入れる

万が一飼い主に事故があった時のための緊急連絡カード

《石川徹》

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