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【“命の商品化”を考える vol.15】犬猫以外の動物への配慮が追加に…新・動物愛護法

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  • 新たな省令案のポイントとして、犬猫以外の動物への配慮が追加
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「“命の商品化”を考える」シリーズのvol.13で紹介したように、10月7日に開かれた「中央環境審議会動物愛護部会」(以下、愛護部会)において「適正な飼養管理基準の具体化」に関する環境省・省令案に対する答申があった。

これは、繁殖業者やペットショップなど、犬や猫を取り扱う事業者などに遵守義務が課せられる枠組みを具体的に定めるもので、一般に「数値規制」と呼ばれることが多い。

委員に対して環境省が諮った基準案の内容は、基本的には8月の「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」(以下、検討会)で発表されたものに準じている。ただし、検討会での提案からさらに前進が見られたポイントもある。犬猫以外の動物と遺伝的疾患に対する配慮の必要性である。この2点について、2回に分けて紹介する。

犬猫以外の「愛護動物」に対する配慮が追加

環境省は、この「第3次答申」用に省令案の概要をまとめ、「新たな省令案のポイント」と題した資料をまず示した。「省令の対象範囲」には、これまで同様に犬猫を取り扱う第一種(繁殖、競りあっせん、販売などの事業者)および第二種動物取扱業者(保護団体などのNPOなども含む組織)が明記されている。今回新しいのは、3つ目の対象として犬猫以外の動物も対象範囲に追加されたことだ。

「犬猫以外の哺乳類、鳥類及び爬虫類に係る基準についても、今後検討を進める」とされ、現在、犬と猫に関して議論されているような具体的な基準を、そのほかの生き物についても検討していく方向性が打ち出された。スケジュールや手続きなどを含め詳細は未定であり、小さな一歩だろう。とはいえ、これまでの議論がほぼ犬猫に限られていたことを考えると重要な前進とも言える。

「動物の愛護及び管理に関する法律(以下、愛護法)」では、第44条で「愛護動物」を定義している。そこには犬猫だけでなく牛、馬、豚、めん羊、山羊、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひるのほか、「人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの」とある。犬猫と同じ愛護動物とされながらも、これまで蚊帳の外に置かれていた動物たちに目が向けられたことは評価したい。

家畜や実験動物に関する検討も期待

今後は、畜産農業や試験研究用動物などに関する検討が行われていくかどうかも注目だ。家畜や実験用動物についても、愛護法の観点から改善すべきことが無いのか、改めて検証する必要があるのではないだろうか。2005年の愛護法改正では、実験動物に関する前進があった。

愛護法の第41条には、「動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等」を規定する条項が設けられており、苦痛の軽減(Refinement)、代替法の活用(Replacement)、使用数の減少(Reduction)の頭文字をとった「3R」の原則に基づいた対応が求められている。つまり動物を用いて何らかの実験を行う場合、生体を使う以外の選択肢を検討し、できるだけ少ない数で行うと共に可能な限り苦痛を与えない配慮をすべきという考えである。

動物愛護の観点からは環境省に期待

家畜や実験動物に関する法整備には、農林水産省や文部科学省など複数の省庁にまたがった調整が必要になるだろう。さらに、ステークホルダー(利害関係者)も多岐にわたるため、複雑な議論は避けられないだろう。もちろん、関連の様々な産業界や教育現場などのニーズを尊重することは必要だろう。また、食や医療など、これらの分野から我々が多くの恩恵を受けていることも忘れてはならない。一方で、「愛護」の観点からは、動物たちと人間の福祉が最大限にバランスさせられる社会に向けて、環境省の活躍に期待したい。

次回は、もう1つ新たに追加されたポイントである遺伝的疾患に関する配慮について紹介する。「日本は世界でも突出して犬の遺伝性疾患が多い国」とも言われる状況の改善に向けても、愛護法が果たすべき役割は大きい。

《石川徹》

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