動物のリアルを伝えるWebメディア

デンマーク政府、養殖ミンクの全頭殺処分を一時撤回

イメージ
  • イメージ

REANINALでは先週、デンマーク政府が同国内で毛皮用に養殖されているミンクを全頭殺処分する指示を出したことを報じた(関連記事)。

イタチ科の動物は新型コロナウイルスに感染することが分かっており、これまでにオランダ、スウェーデンやアメリカなど世界6ヵ国での集団感染が確認されている。デンマークではミンクの体内で変異した新型コロナウイルスが発見され、人への感染や現在開発が行われているワクチンの有効性を阻害するリスクが考えられるとして決定に至ったとされている。

これに対し、同ウイルスに感染していない個体も含めた約1500万頭を全頭殺処分する法的根拠が無いとして、野党が反発。イギリスBBCが報じたところによると、現地時間11月10日にメッテ・フレデリクセン首相が国会で「(全頭殺処分の強制には)新しい法律が必要だった」と謝罪し、指示を撤回したとのことだ。

世界最大の毛皮製品用ミンク生産国であるデンマークでは、直接雇用だけで5500人(CNN報道より)を超えるとされており、業界からの反発もあったものと考えられる。全頭殺処分は強制でなく「推奨(recommend)」に改められ、政府はこれから新しい法律の成立を目指す。アメリカCNNによると、法案が議会を通過するには通常30日を要するそうだ。

デンマークの政府内や学者の間では、依然、安全性確保のためミンクの殺処分を推奨する声もあるようだ。公衆衛生の観点からは、リスクを排除する意見も理解できる。一方、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、ウイルスの変異が免疫や(開発中の)ワクチンの効果に影響を与える可能性は認めながらも、「不明なことが非常に多く、変異とその影響についてはさらなる科学的研究と分析が必要」としている。

なおBBCによると、イギリスでは毛皮を目的とした動物の養殖は法律で禁止されているそうだ。デンマークと並んでミンクの養殖が盛んなオランダも、2024年までにミンクの養殖を禁止する計画だったが、これを2021年に前倒ししたとのこと。また、フランスも2025年までに禁止する方針を発表している。

《石川徹》

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top